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第十六章:エンシェント・エリア

318.魔剣と神剣 前編

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 サンフィアの精霊試し撃ちを間近で眺めていた。
 どうやら呪文を唱えることで、精霊を具現化する力のようだ。

 威力の程は中々なもので、あなどれないものを感じた。
 ミルシェたちが近くにいたら、精霊にあてられていたのは間違いない。

「……ふん、これで満足か?」
「おっ! アーチ状の門のようなものが見えるな。ルティが言ってたとおりだ」
「貴様にも精霊の力があると聞いている。だが、我とは使い勝手が違うのだろう? せいぜい我の足を引っ張らないようにすることだな! フフフッ!」

 そう言うと、ルティたちを待たずにさっさと進んでしまった。
 今までにない程の自信をつけたようだ。精霊の力を得たことで、違う世界が見えるようになったのだろう。

 塞がれていた岩壁を剥がしただけに過ぎないが、使いこなすまでは時間がかかりそうな気もする。
 何にしても、初めて使った精霊の力がよほど嬉しかったはず。

「アック、アックー! もう中に進んでも大丈夫なのだ?」
「ああ、問題無いぞ!」
「ウニャッ!」

 勝手に進んでしまったサンフィアは城のどこかで会えるとして、今はルティに道案内をしてもらうことにする。

「おおぉー! 誰がどう見たって入口ですっ! アック様、どうです? 本当でしたでしょう?」
「本当だったな」
「えっへん!!」

 嘘を言ったでも無いことが証明されたのか、ルティが胸を張って歩き出した。
 穴を開けたのはサンフィアだが、それは良しとしておく。

「フフフッ、さすがはアックさまですわね」
「……うん? 何でおれが?」
「あのエルフにせよ、ルティにしても、おだてて調子に乗らせたではありませんか。アックさまだからこその特性だと言っても過言ではありませんわ」
「特性って言われてもな」
「その調子で、小娘たちの力を引き出してくださいませ」

 やはりと言うべきか、ミルシェの言葉の方が俄然やる気が起きる。
 イデアベルクから連れて来たのは間違いでは無かった。

「アック、行かないのだ?」
「すぐに行くよ。フィーサたちが寂しがっているだろうしな」
「ウニャ、シーニャも楽しみなのだ」

 ルティの案内で、おれたちは城の倉庫らしき部屋に入った。
 遺跡からの入口とは別に、城への入口が奥の方に見えているのが分かる。

「それにしても、自然に崩落したとは思えない感じがしますわね」
「……焼け付いた臭いが漂っているのだ」
「遺跡から来られる場所にあるということは、ザームの連中か魔導士が来ていてもおかしくはない。そうなると、ここで何かと戦ったかもしれないな」

 周りを見ると、ここにはかつて使われていたであろう調度品の数々が、所々で転がっていた。
 原型を留めていないが、石鉢や木鉢が多く見られる。

 ここでは植物か何かを育てていたのだろうか。

「……確かに、微かですけど魔力を感じますわね。それに廃城にしても、そこまで古臭さは感じられない気もしますわ」
「その辺りは、ここにたどり着いたルティが詳しいはず」

 ルティは奥の方に見える扉の前で、おれたちを待っている。
 サンフィアが勝手に進んで行ったせいか、落ち着いた自分をアピールしているようだ。

「さぁさぁ、どんどん行きますよー!」
「待った。ルティは先にここに来ていたんだよな? 敵か何かと戦ったか?」
「はぇ? 敵は全くいなかったですよ? ここは地下なんですけど、上の階には大きくて広いお部屋がいくつもありましてー! きっとそこにフィーサやアヴィオルがいると思いますです」

 敵がいないというのは妙な話だ。
 それなら、倉庫の魔力はどこから来たというのか。

 それに戦った跡が残されている。
 そうなると、フィーサたちによる戦闘でそうなったとしか考えられない。
 
「ウニャニャ!? ア、アック……アックの剣が震えているのだ!」
「――ん? 剣が何だって?」
「本当ですわね……あたしの目にも、その剣が動いているように見えますわ」
「ミルシェにもそう見えているのか。どれどれ……」

 魔剣ルストには専用の鞘が無い。
 しかしいつも手に持っている訳にもいかないので、腰袋の並びにぶら下げるようにしていた。

 多少の不安定さはあるが、万が一落としてもすぐに分かるし、目につく。
 ――のだが、彼女たちが言うような震えは起きていない。

「動いているのだ! 本当なのだ!!」
「んんん?」

 おれからは何ともなっていないようだ。
 そうかといって、シーニャたちが嘘を言っているでも無さそうだが。

「アック様~! フィーサとアヴィたちが近くにいるみたいですよ~!」

 シーニャとミルシェが首を傾げている中、扉付近からルティの声が聞こえて来た。
 フィーサたちとの再会が近いらしい。

「案外早くに再会出来そうだな。分かった! すぐそっちに行く!」

 魔剣の異変は、おれからは見えていない。
 一体どういうことなのか、とにかくフィーサたちと再会してから調べるしか無さそうだ。
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