237 / 577
第十四章:鳴動の大陸
237.ドワーフ幻獣戦 ④
しおりを挟む「アック様、どうされるんですか? それと、シーニャはどこに?」
「まぁ待て。それと、シーニャはきっと無事だ。ここにはいないけどな」
霊獣シリュールに守られているし、少なくともここより安全なはずだ。
「それじゃあ、フィーサは?」
「見ての通りだ。ぐっすりと――うっ!?」
鞘に収まっているフィーサを確かめようとすると、そこに彼女の姿は無い。
真っ暗闇の中、どこへ行ったかと見回していると、その姿はルティの真後ろにいるように見えた。
しかも人化して、久しぶりにお姉さんな姿になっている。
初めて見た時よりも艶っぽいが気のせいか。
「――全く、騒がしくて仕方が無いなぁ」
「えっ……? わわわっ!? い、いつの間に~!」
「イスティさまはともかく、どうしてあなたがここにいるの?」
「それはアック様が~……」
ルティはおれを見つめて来るが、全ておれのせいだから何も言えない。
フィーサが目覚めたなら、さっさとここから脱出しなければ。
「そ、それはそうと、フィーサ。ここから抜け出そうとしているんだが――」
「……ここは異空間?」
「ああ。ドワーフが召喚した、幻獣フォルネウスの腹の中だ」
「フォルネウス……七十二の一つの魔神、ね……ふぅん」
「はぇぇぇ? 魔神!? え、私たち魔神さんに食べられちゃったんですかっ!?」
魔神と聞いただけで驚いたルティは、見える範囲でバタバタと走り回って慌てている。
フィーサが知る魔神ということは、脱出が可能か。
「それでフィーサ。魔神相手ではあるが、爆発魔法で脱することは可能か?」
「イスティさまはソロモン王のことは知ってる?」
「大昔の旧約聖書の悪魔ということくらいしか知らないな。そうすると、フォルネウスってのはソロモン王の?」
「うん、そうだよ。でも幻獣として召喚してるから、大昔の魔神そのものじゃないと思うけどね」
「そうだろうな。末裔とはいえ未熟な召喚だ。コイツもその程度なんだろうな」
その程度な奴に呑み込まれたわけだが。
「……それじゃあ、イスティさま。爆発魔法じゃなくて、闇魔法でフォルネウスを懐柔しちゃおっか」
「おれたちを呑み込んでいるのに、従えられるっていうのか?」
「イスティさまも言った通り、魔神だけど未熟な幻獣だよ。だからこのコよりも強い闇魔法を展開すれば、従って外に出してくれると思うんだ!」
「魔神よりも強い闇魔法か……」
「大丈夫だよ。イスティさまはヘリアディオスで闇神さまを降したでしょ? 光以外なら、どんな相手でも何とか出来ると思うの! だからイスティさまは自信を持って唱えてね」
そう言われればそうだ。
神族国家ヘリアディオスでは光神リアディオだけはどうにも出来なかったが、それ以外の属性はほぼ極めたようなものだった。
「……分かった。それを唱えれば、ここは崩れてフォルネウスそのものも従えられるんだな?」
「うん!」
「よし! ルティシア! フィーサにくっつけ。すぐに出られるぞ!」
「はぇっ? よ、よく分からないですけど、そうしますです~!!」
悪魔を絶望させる魔法で、フォルネウスを懐柔してみるか。
唱えてみるしか無さそうだ。
「魔神フォルネウス!! 絶望を味わい、おれに屈することを誓え! 『ダーク・デスペリア』」
◇◇
「アックがやられるはずが無いのだ! オマエ、あまりいい気になるななのだ!!」
シーニャは霊獣シリュールの水の膜に覆われ、守られている。
しかし主人の姿が同一の場所から消え失せてしばらく経つと、徐々にその効果は薄まりやがて消えてしまう。
そのことを知るドワーフたちが、ただひたすら時間の経過を待ってシーニャを囲んでいた。
「小さき人間に従う虎人族! フォルネウスはボクからすでに放たれたぞ!」
「ウゥ? ドワーフ関係無いのだ?」
「こうなるともうボクの意思に関係無く、人間を呑み込んだままだ。お前ももうすぐ幻獣に喰われるんだぞ!」
「ウウウニャ……」
ドワーフ相手だけなら、シーニャだけでも苦戦することなく倒せる。
しかしアックを呑み込んだ幻獣をどうすればいいのか、シーニャは悩むしかなかった。
「よぉし、そろそろ虎人族もボクが――えぇっ!?」
「ウ、ウニャッ!?」
0
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~
ゆさま
ファンタジー
新作ゲームアプリをテストプレイしてみたら、突然ゲームの世界に転送されてしまった。チートも無くゲームの攻略をゆるく進めるつもりだったが、出会った二人の美少女にグイグイ迫られて…
たまに見直して修正したり、挿絵を追加しています。
なろう、カクヨムにも投稿しています。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
追放の破戒僧は女難から逃げられない
はにわ
ファンタジー
世界最大の力を持つドレーク帝国。
その帝国にある冒険者パーティー中でも、破竹の快進撃を続け、今や魔王を倒すことに最も期待が寄せられると言われる勇者パーティー『光の戦士達』。
そこに属する神官シュウは、ある日リーダーであり勇者として認定されているライルによって、パーティーからの追放を言い渡される。
神官として、そして勇者パーティーとしてそぐわぬ素行不良、近年顕著になっていく実力不足、そしてそんなシュウの存在がパーティーの不和の原因になっているというのが理由だが、実のところは勇者ライルがパーティー内で自分以外の男性であるシュウを追い払い、ハーレム状態にしたいというのもあった。
同じパーティーメンバーである婚約内定者のレーナも既にライルに取られており、誰一人として擁護してくれず失意のままにシュウはパーティーを去る。
シュウは教団に戻り、再び神官として生きて行こうとするが、そこでもシュウはパーティー追放の失態を詰られ、追い出されてしまう。
彼の年齢は20代後半。普通の仕事になら就けるだろうが、一般的には冒険者としては下り坂に入り始める頃で伸びしろは期待できない。
またも冒険者になるか?それとも・・・
拠り所が無く、愕然とするシュウはだったが、ここで一つのことに気が付いた。
「・・・あれ?これで私はもう自由の身ということでは!?」
いい感じにプラス思考のシュウは、あらゆる柵から解き放たれ、自由の身になった事に気付いた。
そして以前から憧れていた田舎で今までの柵が一切ない状態でスローライフをしようと考えたのである。
しかし、そんなシュウの思惑を、彼を見ていた女達が許すことはなかった。
※カクヨムでも掲載しています。
※R18は保険です。多分
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる