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第十四章:鳴動の大陸

234.ドワーフ幻獣戦 ①

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 五人パーティーの小人族は、外見を見る限りではドワーフのように見える。
 そのせいか、思わずルティを見てしまう。

「な、なんでしょう?」
「……気にするな」
「えぇ~?」

 ルティの場合は、人とドワーフとの間に生まれたハーフドワーフで、色濃い赤毛の少女。
 しかしルティは魔法が使えない。

 それなのに、目の前に並んでいる小人族の子らは、おれに対しどうみても召喚のようなものを唱え出している。

 ルティの行動に慣れすぎたが、ドワーフはやはり万能な種族。
 そうなるとこの子達は、魔力に長けたドワーフか。
 
「喰らえ! 幻獣ケルピーだ!」
「――むっ!?」

 五人の内、恐らく一番魔力が高いとされる一人が、唱え終えていた召喚を自分の前に顕現させている。

 他の四人は息を切らせながらも、次に備えて魔力回復を図っているようだ。

「ふふん、どうだ、幻獣ケルピーだぞ!」
「……水棲馬って奴か?」

 馬にも竜にも見えるが、見る限り水属性の獣。

 このドワーフたちも召喚の末裔だとすれば、び出す幻獣も大したことはないと思われる。

「や、やれっ!」
「ヒィィィィン!!」

 馬のいななきに似た声を発した幻獣は、予想通り水属性である水泡すいほうを放つ。
 眼前には高い山があるわけでもないが、激しい水の流れが怒濤のごとく迫り来る。

「あああっ!? アック様っっ!」
「アック、アック!」

 ルティとシーニャは慌てふためいている。
 だが、

「……何で、何で!?」
「うん、心地いい流れだ」

 驚きの声を挙げたのは、ドワーフの一人だった。
 激しい水の攻撃をまともに受けたおれだったが、むしろ回復に似た心地を受けた。

「悪いな、おれは水の守護をこの身に宿わせている。たとえ幻獣の力であっても、水属性は通用しない」

 もちろん同属性であっても、相手の力が上回っていれば勝負の行方は分からない。

 しかし幻獣ケルピーとされるものも、未熟な末裔が喚びだしたせいなのか、まるで脅威を感じなかった。

「な、なんだと~!?」
「他の属性の幻獣を、試してみてはどうだ?」
「後悔させてやるぞ~!」

 そう言いながらも、幻獣ケルピーを顕現させたドワーフは後ろへ引っ込んだ。
 
 個人契約によるものなのか、今度は別のドワーフがおれの前に立ちはだかる。
 一人一人の名を聞いたわけではないが、どうやら次は別の属性の幻獣を喚ぶようだ。

「次は何だ? だがどんな属性だろうと、おれには効かないけどな」
「い、いい気になるな! み、見てろ!」

 召喚の幻獣、果たしてどの程度まで強さが変わるのか、期待するしかなさそうだ。
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