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第十三章:新たな地

216.末裔の町・グライスエンド 外門攻防戦①

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 吸収するとか聞こえたが、それもフィーサのスキルの一つだろうか。
 首傾けのシーニャを見る限り、初めて見る動きのようだ。

 フィーサの斬撃ですでに赤竜は瀕死状態に陥っているので、おれたちも竜の近くに近づいた。
 息も絶え絶えなようで、いつ絶命してもおかしくない。

 そんな状態の竜に対し鋭い刃に変形させているフィーサの腕が、容赦なく竜に突き刺さる。
 そしてそのまま竜の全身が、跡形も無く消えてしまった。

「お、おい……フィーサ」
「……終えた。全てわたしの中に吸収したよ、イスティさま」

 いつもの彼女らしからぬ冷酷な表情が垣間見えたが、その表情はすぐに消え失せていた。
 人化状態だからでは無さそうだが、フィーサ単独での強さの一端を見た気がする。

 道を塞いでいた竜の姿は消失、存在そのものがフィーサに取り込まれたようだ。
 その光景にはさすがに、ルティ、シーニャも言葉を失っている。

 吸収したことでフィーサの潜在的な強さがどう変化したのかは、現時点で見ることが出来ない。
 それが見えていないということは、まだ彼女を使いこなせていないということなのだろう。

「まぁ、何だ。これで、あの頑丈そうな門に近づくことが出来るわけだな!」
「ウニャッ! 町に行くのだ」
「そ、そうですよ~!」
「ふわぁぁ……イスティさま。わたし、剣に戻るね」
「また眠るのか?」
「ううん、眠いけど起きてるよ」
「分かった。その時になったら、使用するからな」

 温泉の効果なのか、元から容赦のない面があったのかは分からないが、フィーサは大切に扱うことにしよう。

 ◇◇

 迷うことのない一本道。
 町に近づく前に赤い竜が立ち塞がっていたが、神剣フィーサの攻撃で難なく過ごせた。

 数メートル先に見えるのは、何の変哲もなさそうな鉄製の門だ。
 見張りもいなく、魔法による防御壁も感じられない。

 赤竜が町への侵入を長らく阻んでいたと思われるが、果たして素直に町へ入ることが出来るかどうか。
 
「アック様、アック様! もう大丈夫じゃないでしょうか~?」
「ここから見た感じはそうだろうが、ルティは何も感じないのか?」
「んんん~……風は感じませんよ~」
「……それだけじゃないんだが」
「ウゥゥ……!! ドワーフはアテにならないのだ。アック、何かがたくさん出て来るのだ!」
「――! 複数の魔術師だな」
「え~!? どうして町へ入れてくれないんですかぁ~!」

 ルティは残念そうにうなだれているが、シーニャはすでに戦闘態勢だ。
 鉄製の外門には、四、五人の魔術師らしき人間が立っている。

 全員が灰色のローブをまとっていて、フードで顔を隠しているせいで表情はうかがい知れない。
 性別も不明だが、どうやらこちらに対し明らかな敵意を向けて来ているようだ。

「――ウウウウ!」
「あれは何だ? 魔術……いや、テイムか?」
「け、獣を何匹もですか!? ズルい、ズルすぎますよ~!」
「待て、テイムじゃない」

 数メートル程度ではあるが、奴らは妙な手の動きをしているように見える。
 その動きの後に、何も無い所から獣人らしきモノを呼び出しているようだ。

「……イスティさま」
「ん?」
「あれらはテイムなんかじゃないなの。魔法攻撃は感じられないから、まずはシーニャを戦わせてみるのが一番だと思うなの!」
「シーニャを?」
「獣人相手なら、それが最適なの」

 フィーサの口ぶりでは奴らが何をしているのか分かっていそうだが、ここは様子を見てから動くことにする。

「よし、シーニャ。心の無い獣人を軽く捻ってやれ!」
「ウウニャ!!」
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