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第十二章:認められし者

187.凌駕の絶対者 後編

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 幼い頃の記憶はほとんど覚えていない。
 覚えているのは今では【レア確定】となったガチャスキルを、貴族の大人たちの為に使っていたくらいだ。

 その頃は金に糸目を付けない連中から、遊び半分で繰り返しガチャをさせられていた。
 サンフィアが着ているローブは、その頃に出したものということになる。

「フ、やはり覚えてないのだな。我はキサマの親……公爵家の者から、処分品を預かった。フフ、調子に乗った幼子おさなごが出したアイテムらしいが、処分に困っていたようだ」
「それがおれか」
「あぁ、そうだ」

 全く記憶に無いが、親が処分に困って捨てようとしていたのをサンフィアが預かっていたようだ。
 魔力を有していても、魔法を放つことの出来ない貴族にとっては処分品扱いだったらしい。

「ア、アックさま……は、貴族でしたの?」
「イスティさまがわたしを引き当てたのって、やっぱりそうだったんだよ~!」
「まぁ、滅んだとはいえ公国の生まれだからな。元は貴族ってことになるな」
「や、やはり、あたしのご主人様で間違いでは無かったのね」
「そんなことより、フィアの事情は分かった。魔導兵を一掃に向かうってことでいいんだな?」
「無論だ!」

 真紅のローブのバフ効果が魔導兵の欲するものなら、好都合。
 研究施設か魔導兵の施設かは不明だが、目の前に見えている以上突入するだけだ。
 
「イスティさま、人化を解くね~」
「ああ、頼む」
「我はキサマの傍を離れぬぞ!」
「……ついて来るだけでいいが、大人しくしていろよ?」
「む、むぅ……それこそ我が夫!」
「アックさま、虎娘とルティを待たずに突入しますの?」
「彼女らは、今頃大量の魔物と戦っているだろうから問題無い。ミルシェはここに残るか?」
「冗談じゃありませんわ! あたしも行きますわよ!」

 フィーサを手にしたおれは、施設とされる建物の中に突入を開始した。

 外観はこけだらけの廃墟だったが、やけに重々しい扉がそこかしこに存在していて、明らかに頑丈そうな内部だということが分かる。

 内部に入ると、機械音が通路中に響く。
 先へ進むにつれて、恐ろしく頑丈な大扉おおどがおれたちの行く手を阻む。

「む! これでは中に進めないのではないのか?」
「ウフフッ、アックさまなら問題ありませんわ」
「……フィーサ、斬るぞ!」
「はいなの!」

 神剣フィーサブロスを手に、尖鋭の円弧を描き眼前の大扉に斬りかかる。
 大扉が鉄なのか、アダマンタイトかどうかは不明だったが、フィーサにかかれば何も問題は無かった。

「これがあの幼子……イスティなのだな! 凌駕の絶対者の手は、すでに煩わしさを感じさせないということか!」
「よく分かりませんけれど、それこそがアックさまですもの!」

 大扉を斬り崩し中に進むと、ゴーレムから魔導兵へと変わる工場らしき部屋があった。
 動力源となる魔力の流れが、部屋中の管を伝って次々と注がれている。

 魔力そのものは溜めておくことが出来ないはずだが、弱い個体と強い個体とで、魔力の供給を交互に繰り返しているようだ。

「……無駄に魔力をもてあそばせすぎたツケか。尽きる前に強い魔導兵に供給とは、ゴーレムにしては上出来なことだな」
「イスティさま。エンチャント攻撃で破壊するなの?」
「そうだな。雷属性を付与して、目に見える範囲の人形を停止させるぞ!」

 大量に並ぶ魔導兵は、おれの存在に気付き始めている。
 その前に、部屋中に敷き詰められた魔力管とそこにつながる魔導兵を斬る方が、遥かに速いはずだ。

 魔導兵よりも先に、おれは突進剣技で直線状に並ぶ魔導兵を一閃する。
 
 習得済みのソードスキルを使っての攻撃だが、エンチャント攻撃を含めたことで上位ソードスキルと化したらしい。

「剣が光ったが、あれは何だったのか……」
「あれこそ、アックさまの一閃によるものですわ。目を射るように瞬間的に強く光ったのが、何よりの証」
「……女。イスティのあれは、あれで軽い攻撃なのか?」
「ええ、そうですわ」
「……そうか、そうなのだな!」

 後方に控えるサンフィアとミルシェの驚きをよそに、魔力供給を受けていた魔導兵は全て停止。
 ただの機械人形と化したゴーレムは、自然と崩れていく。

 そして、

『イスティさまっ! 外から強反応があるなの!! 外にいるなの!』
『……だろうな、外に出るぞフィーサ!』
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