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第十一章:滅亡公国

178.共存共栄の誓約

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 人間を嫌っていたサンフィアだったが、力を見せただけで態度を軟化させてくれた。
 獣人の子たちを封じていたフィーサたちは手を止め、おれの所に駆け寄って来る。

 ルティとシーニャは、幻影の影響からか寝起きのような状態になったままだ。

「気にするな。我の幻影には後遺症など残らぬ。アレらは幻影に力を放っていた。疲れが出たのだろう」

 ――などと、サンフィアが穏やかな表情で言うので、二人は少し休ませることにした。

「……それで、アックさま。エルフとどうされるおつもりが? 獣人の子も決して少なくありませんわよ?」
「もちろん、連れて行く。サンフィアは戦力になるし、後々の国づくりには必要だからな」
「ええ!? で、ですけれど……」
「それにミルシェにとってもいい話だろ?」
「モ、モフモフのことを言っているなら、口外して欲しくありませんわね」
「分かってる」

 水棲怪物だった時の彼女は、胴まわりに狼を従えていた。
 しかし人間に成り代わったミルシェは力を失い、狼を従わせることが出来ない。

 そこに来て、獣人の子たちとの出会い。
 癒しも必要だろう。

「イスティ、話はまとまったか?」

 フィーサにも話をと思っていたら、腕組みをしたサンフィアが後ろに立っていた。

「何だ、急かす話か? サンフィア」
「我のことはフィアと呼ぶがいい! イスティならば夫たるに相応しい相手だからな!」
「――今なんと?」
「フィアと呼べ」
「いや、その後の……」
「我の夫に、だ!」

 聞き間違いじゃなかった。
 急展開すぎるぞ。サンフィア以外にもエルフがいて、若い男も見えているのに。

『『『はっはあああああ!?』』』

 これにはミルシェはもちろん、他の獣人たちも驚きの声を上げた。

「フィアさま、今の本当なのにゃ?」
「おい、フィア! 俺との約束は!?」

 ――途端におれたちの回りに、人だかりが出来た。
 ルティたちが寝惚けているのが幸いか。

「不思議なことはなかろう。キサマたちにも分かったはずだ。イスティの強さの程をな!」
「一応聞くけど、フィアは人間にして何歳に?」
「……何だ、キサマも細かいことを気にする奴か? 我は確か20を越えている。エルフでは若い方だぞ」

 年齢はいいとして、こんな簡単に決めていいのか。
 
「し、しかし、他のエルフとの約束があるんじゃ?」
「我はキサマがいいと決めたのだ! つべこべ言わず、誓約を結ぶぞ!」
「誓約?」
「そうだ。イスティ。キサマ、我の傍に来い!」

 よく分からないまま、サンフィアの傍に寄ることにした。
 すると、サンフィアは少し屈んでおれにひざまずく。

「……ん?」
「我、サンフィア・エイシェンは、アック・イスティの生涯の妻として生きることを誓う」
「……むぅ」
「イスティ、我に触れろ!」
「あ、あぁ」

 言われた通り、サンフィアの肩に触れようとした。
 
「違う! 我の耳だ!」
「こ、こうか」
「よ、よし、いいぞ……」

 ぬぅ、これは何かイケないことをしている気が。
 ミルシェたちを見ると、何やら怒りを我慢しているようだ。

「イスティ、次はキサマだ! そのまま動くな!」
「……う? んむっ!? んむむむ――!?」
「――ハァッ、フフ……これで成った」
「誓約ってつまり?」
「契りだ」
「そ、そうか。と、とにかく、イデアベルクの為によろしく頼む」
「当然だ! イスティの為にも共存共栄を誓うぞ!」

 パーティーに加わる訳ではなく、イデアベルクの住人ということになるが、ルティやシーニャと揉めそうだ。
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