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第十一章:滅亡公国
173.イデアベルク公国 魔導ゲート掃討戦
しおりを挟む「ぬぁっ……! とりゃぁぁぁ!! わわっとぉ……!?」
気合いと驚きが入り混じったルティの掛け声とともに、公国へ向けた戦闘が開始された。
トンネルを抜けるまでは、ルーヴ率いる白狼騎士団が道案内をしていた。
しかしゲートから出て来た魔物群により、中断を余儀なくされる。
騎士団に向かって行く魔物までは面倒を見切れず、こちらはこちらで大量の魔物が押し寄せたからだ。
『なに、心配するな! この程度の魔物ならば騎士団で何とか出来る! 故郷を頼むぞ!!』
――などとルーヴに頼まれてしまったので、ルティとシーニャを筆頭に前へ進みだす。
フィーサはおれの手元にあり、ミルシェは事前にかけた防御魔法のリキャストに気を配っている。
公国に向かうには、魔導ゲートを突破しなければならない。
侵入者を防ぐゲートではあるが、ゲートを制御する魔力が未だに流れているようだ。
魔導ゲートの高さは、ぎりぎりよじ登れるくらい。
魔物の群れが押し寄せて来ている以上、そんな真似をする余裕は無さそうだ。
様子を見るに、公国内には多数の反乱魔導兵が残っているとみていい。
しかしゲートの向こう側から来るのは、魔物ばかり。
正直どれくらいの魔物が棲んでいるかは、国内に入ってみないと分からない。
閉じられたゲートをルティが拳で破壊しつつ、襲って来る魔物はシーニャが倒している。
低レベルのゴブリンと狼、それに少数の巨人族が群れで襲って来ているが……。
『グルルァァ――!?』
『ギィエェェェ!?』
今の時点ではレベルの低い魔物が多数で、シーニャは退屈そうだ。
「ウニャ~……弱い、弱すぎるのだ~!」
「とぉぉぉぉぉ!! じゃあじゃあ、私と代わろうか?」
「嫌なのだ!! シーニャ、ドワーフじゃないのだ! ゲートを破壊出来るような力なんて無いのだ」
「そ、そっか~……それなら壊して壊しまくって、シーニャの為に魔物を呼び寄せますよ~! ふおぉぉぉぉぉぉ!!」
何だかんだで連携が取れているらしい。
ルティの破壊力でゲートを破壊し、魔物が押し寄せる前にシーニャが倒す。
案外いいコンビなのかもしれない。
「イスティさまは、前に出て戦わないなの?」
「……ん? あぁ、この辺は身軽さに長けている二人に任せる」
「ウフフッ、これだから小娘は」
「小娘じゃないもん!! わらわは、イスティさまと一緒に戦いたいなの!」
「その意気を買って、小娘に優しく教えて差し上げますわ。アックさまは、確かに驚異的なお強さですわ。ですけれど、たかが魔物相手に張り切ったところで、何かが変わるわけではありませんのよ?」
「むむむぅ……」
「アックさまはあたしたちと違って、人間ですわ。強くとも、体力までは永遠のお強さではありませんわ。そうですわよね?」
「ま、まぁな」
実はルティの特製ミルクを飲んでいるから、多分体力の心配は無い……とは言えないな。
おれはともかく、ルティたちを前面で戦わせているのも、ミルシェの指示によるものだ。
これは以前彼女と話し合った、役割分担が生きている。
全ての敵を殲滅するのは簡単かもしれないが、シーニャたちが先陣を切る方が正しい。
「それじゃあ、イスティさま!」
「うん?」
「わらわの体内に残っている魔法属性を使って、斬りまくって欲しいなの!」
「そういや、魔導士の時に使わなかったな」
「はいなの! エンチャント攻撃で魔導兵を破壊しまくるなの!!」
「あぁ、それもいいな」
フィーサのエンチャント攻撃で魔導士を倒す予定だったが、結局使わずじまい。
それがまさか体内に属性が残っていたとは。
『ひえええ!? ワ、ワイバーンが沢山飛んできました~!! ア、アックさまっ! どうしましょう!?』
魔導ゲートの上空は、雪模様の空が見えている。
トンネルじゃない分、明るさはあるが飛行タイプの魔物にとっては狙い放題。
さすがに空からの魔物だと、ルティたちでは不利か。
状況を見るに、ここまでいくつかの魔導ゲートを突破して来ている。
その数は数えていないが、魔物のタイプが変わったところを見れば、もうすぐのようだ。
『よし! 交代だ、ルティ、シーニャ!!』
『は、はいっっ!』
『ウニャッ!』
ワイバーン相手であれば、風魔法が最適だろう。
こういう時、癪ではあるが、風の神の魔法を使うのが良さそうだ。
『……ふぅっ――、アエルブラスト!』
ラファーガは幻影を作り出していたが、それを省き純粋な突風攻撃にした。
ワイバーンの群れは強烈な突風に対応出来ずに、次々と地面に叩きつけられている。
『おおー! さすがアック様ですっ!!』
『ウニャウ!!』
ワイバーンの群れが序盤の山場だったようで、周辺は静まり返った。
これであらかたの魔物は掃討出来たようだ。
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