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第十一章:滅亡公国
165.氷雪都市の白狼騎士団
しおりを挟む「ふわあ~! アック様、アック様! 雪の中に街がありますよ~!!」
騎士に囲まれながら案内されたのは、氷雪都市ヒューノストの街だった。
この街はおれの故郷の手前に位置する都市。
厳しい気候の中にありながらも、地盤がしっかりしている街だ。
特にリーダーは存在しないが、騎士団が街を守っているおかげで特に問題の起きない所でもある。
都市といっても街の構造は単純だ。
雪山ごとにトンネルがあり、その合間に街や家々が建ち並んでいるだけの規模。
ヒューノストは十字路しか無い街なので、迷う心配は無い街だ。
街の入り口に着くと、騎士団の一人がルティに目を付けおれたちを止めようとしている。
「イスティ。すまないが、炎に守られているドワーフ娘を何とかしてもらえないか?」
「……何か問題でも?」
「君も知っての通り、この街はとても暖かい。雪に囲まれていようとも、住民が寒さで凍えることなどあり得ないことだ。しかし、その炎は強い魔法。ここで強い魔法は控えてもらいたい」
「それなら、防寒着を用意してもらえるか?」
「もちろんすぐに手配しよう。ふ、強い魔法の怖さについて、君なら理解してもらえるはずだ!」
「……さぁな」
魔石が導いた属性テレポート魔法。
その魔法でここに来たから仕方ないが、本当なら真っ先に故郷にたどり着きたかった。
騎士団が強気な態度を取っているのも、故郷で起こったことを知っているからやりづらい。
そんなおれが今では、全属性魔法を使えているのも皮肉なことだが。
「あえぇ? ほ、炎魔法のご加護はおしまいですか!?」
「まぁ、待て」
「ウニャ? シーニャにも何かあるのだ?」
「そのままじゃ寒いだろ? だから、シーニャにもルティと同じものを着てもらう」
「ウゥゥ~……」
お揃いの防寒着を着ることには、シーニャはかなり不満そうだ。
不満そうではあるが、騎士団から渡された防寒着を二人に手渡した。
用意してくれたのは、モフモフな防寒着で狼の耳のような飾りがついている。
これをルティとシーニャに着てもらう。そしてこの時点で、炎魔法は解除することになった。
「狼になっちゃいましたよ~! ガウウ~」
「シーニャは、虎なのだ! 狼なんかじゃないのだ!!」
「ひえええ!? お、怒っちゃ駄目ですよぉぉぉ」
全く、何をやっているんだか。
「ではこちらへ。宿を用意しています。もうすぐ日が暮れることもあって、住民は家にこもっています。イスティにとっては好都合だったのでは?」
「別に気にならないな」
「ふっ……そうでしょうね。さぁ、お仲間たちもこちらへどうぞ!」
いちいち気に障ることを並べて来るが、おれは気にしていない。
気にしたところで、戻りはしないのだから。
「アックさま。お聞きしても?」
「何だ、ミルシェ」
「ここの騎士団とはお知り合いなのです? 何故アックさまのことを、イスティと?」
「……この先におれの故郷がある。それを知っている連中だからだ。もちろん、全員じゃないけどな」
「特に親し気で偉そうにしている騎士がいますけれど、ムカつきませんか?」
「あぁ、あいつは――」
ミルシェにだけは先に明かしておくか。
現地に行けば嫌でも目にすることになるが……。
ウワサをすれば、奴の方から近付き声をかけて来た。
キザな金髪の髪を隠すことなく見せ、面倒くさそうな片手剣をぶら下げている。
「イスティ。こちらの女性は? 獣人やドワーフ娘とは違うようだが……?」
「フフフッ。あなたこそ無礼極まりないお方ですわね。あたくしは、アック・イスティさまのお目付け役、ミルシェ・オリカですわ。あたしたちが慕うこの方の何を知っているのか、隠しても無駄ですわ!」
「これは失礼した。我はヒューノスト白狼騎士団が一人、ルーヴ・イスティと申します。以後お見知りおきを」
「――イスティ? え?」
「……この男はおれの身内だった男だ。それだけだ」
「そ、そうでしたのね。これは失礼しましたわ」
「何だ、紹介してくれないのか? イスティ」
紹介するまでもなく、今となっては関係の無いただの騎士。
そう思うしか無かったが、ミルシェには話すしか無さそうだ。
「お兄様……ということで合っておりますかしら?」
「ミルシェさんの言葉通りで合っているな! しかし、そうでないとも言える。その辺のことは、そこのアック・イスティにでも聞いてくれまいか? 我は警備に行かねばならない。ではまたな、イスティ」
余計なことをベラベラと言う男だ。
だから嫌だったわけだが。
「えっ?」
「ミルシェにだけ先に話しておく。あの男はかつての身内だった者に過ぎない。それも故郷にいた頃までのな」
「アックさま、もしかして故郷は今……?」
「あぁ、滅亡している。この都市の先の方にある公国だ。親は既にいないが、奴とおれだけが生き残っただけの話だ」
「め、滅亡……そ、そんなことが」
「そういう意味で、国づくりしやすい場所ってわけだ」
「そ、そうですわね」
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