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第十一章:滅亡公国
161.達成と決意となぐさめ?
しおりを挟む「はい、討伐完了ですね。お疲れ様でした、アックさん」
「ハァ、どうも。じゃあこれを冒険者たちに使ってくれれば……」
「受理しました。どのみち、水が引けないことには依頼も限られますので」
ラクルのギルドでクエスト報酬を貰えた。
おれは復讐される側ではあったが、依頼者のヘルガの謝罪があったので受け取ることが出来た。
魔導士を押し流し生命反応が消失したことで、短剣使いのヘルガは意識を取り戻す。
正常に目覚めたヘルガは、人が変わったように穏やかな態度になっていた。
「何て言っていいか……悪かったな、アック・イスティ」
「いや……」
「あたしはここに飛ばされてから、真面目に働いていたんだ。それが気づいたら、復讐ってやつに囚われてさ。冒険者集めて、あんたを殺そうとしてた」
「黒衣の男のことは覚えていないのか?」
「港で荷揚げしてた時に見かけただけだね。まさかそこから付け込まれていたとは、あたしも弱いな」
「そうか。これからどうする?」
「変わらないな。ヴィレムの奴はザームに行っちまったし、あたしはここに残るさ」
「……ザーム共和国か」
狼姿だったとはいえ、おれにやられたヘルガ・コティラは戦うことをやめた。
飛ばされた場所がラクルだったことで、住み付くことにして改心したのだとか。
ヘルガも被害者だった。
それが分かったので、ギルド報酬のほとんどは寄せ集め冒険者にあげることにした。
残った金はルティに渡したが。
◇◇
「アック様本当に本当に、ごめんなさいです……効果効能どころではなく~……ふぎぃぃ」
倉庫に戻ると、泣きじゃくるルティがおれを出迎えてくれた。
ラクル一帯を水浸しにし、ルティたちの幻影魔法を解いた。
その時ミルシェから大体は聞かされていたが、ルティに怒りはわいてこなかった。
彼女には、湖村でのことで相当無理させている。
そんな経緯があるだけに、おれが取った行為はなぐさめである。
「すまなかったな、ルティシア」
「ふわぁっ!? あ、あのあのあの……こ、これはどういう……」
「見ての通り、抱きしめだ。ついでになでなでしているぞ」
「はへぇぇ……!! ア、アック様の温もりが」
なぐさめつつ、ルティにとって残念な知らせもしなければならない。
それは、半永久的に倉庫を借りてくれたことについてだ。
「ルティシア、え、え~とだな……」
「ぜひぜひ、熱い空気を私に送り込んで頂けましたら!」
やはりそうなるか。
抱きしめて頭をポンポンすれば、求めるのはお決まりだ。しかしルティしかいなかった入り口には、いつの間にかシーニャや人化フィーサもスタンバイ状態。
さすがに全員を抱きしめるのは厳しい。
フィーサに関しては違うだろと言いたいが、期待の眼差しが鋭すぎる。
「ルティシア・テクス。おれの話を聞いてくれ」
「は、はいっっ! な、何ですか?」
「申し訳なく思うが、ここを引き払ってラクルを出ることにした。せっかく借りてくれたのにごめんな!」
「ええぇぇっ!? ま、また追い出されちゃったんですかっ?」
「そうじゃないぞ……。そうじゃなくて、自分たちの――」
「分かりましたっ! いいえ、アック様のお心は私が一番分かっていますから! すぐに支度をしますね」
「お、おぅ……」
面倒事や厄介ごとを引き起こす確率が高いが、ルティのいい所はこういうところにある。
さっきまでの流されそうな雰囲気はどこへ行ったのやら。
バタバタと慌ただしく動き出すルティを見て、シーニャたちも何かを感じたようだ。
「ウニャ? アック、どこか行くのだ?」
「おれたちの国に行くぞ、シーニャ。ラクルを出るってことだけどな……」
「シーニャ、アックについて行くだけなのだ! ウニャッ!」
シーニャは特に持って行くものが無いらしく、おれの傍にくっつき始めた。
虎耳を嬉しそうに立たせていて、構いたくなる。
次はフィーサに……と思ったら、どこかにいなくなっていた。
「あれっ? フィーサはどこへ行った?」
「上の部屋に上がって行ったのだ。化け物人間の所に決まっているのだ」
「化け物って……」
「そうじゃないのだ?」
「その内慣れるよ。シーニャも二階に行くかい?」
「ウニャッ? 上から来るのだ」
トコトコとついて来るシーニャと一緒に上の階に上がろうとすると、上から二人が降りて来る姿が見える。どうやらすでに察していたようだ。
「アックさま、あたしたちは自分の物がありませんわ。ですので、すぐにでも出発出来ますわよ?」
「イスティさま、わたしも行けるよ~!」
「気付いていたか。それなら、ルティの手伝いをしてからだな。外の水のこともあるし、挨拶もしておきたい」
「かしこまりましたわ」
魔導士といった面倒な存在は消えたが、こことは別の所に身を置く方がいいだろう。
おれの予感が正しければ、属性テレポート魔法であの国にたどり着ける気がする。
故郷には出来れば行きたくは無かったが、仕方がない。
あの国からなら、きっともっと動きやすくなるはず……。
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