上 下
153 / 577
第十章:力を求めて

153.ギルドクエスト:追放連合の復讐戦を受けてみた

しおりを挟む

「イスティさま、どうするなの?」
「まずはギルドに行く。得体の知れない連中でもギルドのクエストという名分を立てとけば、ラクルの連中にも迷惑をかけずに済むだろうしな」
「わらわたちも戦うなの!」
「……フィーサはともかく、アレで戦えるか?」
「そ、それは~」

 ルティと始めとして、シーニャ、ミルシェは食べすぎで横になっている。
 訪問者が来たことには気付いたらしいが、苦しくて起き上がれなかったらしい。

「フィーサとおれだけで十分だ。彼女たちはここでゆっくりしててもらう。おれを名指しで来ているわけだしな!」
「そ、そういうことなら、わらわも頑張るなの!」

 ルティとシーニャはまだ本調子じゃないだろうし、ミルシェは戦うタイプでは無くなった。
 そうなれば、ここで待っててもらった方が都合がいい。

 ギルドに行く前に、三人に声をかけることにした。

「ウ、ウニャ……」
「シーニャ、大丈夫だ。ここで留守番しててくれ」
「アック様~たっぷり食べてごめんなさいです……お気を付けてぇぇ~」
「効果を期待してるぞ」
「はいい~」
「……あたしとしたことが、申し訳ございません」
「ミルシェは戻って来たばかり。今は、休んでていいぞ」
「――かしこまりましたわ」

 大した連中では無いだろうが、今一度ここの防御強化をしておくことにする。
 そのままおれとフィーサは、ラクル倉庫街のギルドに足を向けた。

 ◇

 鞘に収めたフィーサとともに、ギルドに来た。
 相変わらずの寂れっぷり……ではなく、交易が盛んになったせいか人の出入りが激しい。

 さらには釣りギルドも出来たことで、昔のような光景では無くなってるようだ。
 これには、何となくの違和感を覚えてしまう。

 自分が働いていた時は確かに寂れた町だったが、独特の雰囲気があって好きだった。
 それが今では誰でも行き交う町となっているのは、何か気に入らない。

「倉庫番のアックだ……」「あいつが手配書の――」などなど、勝手に有名になっているようだ。
 気にすることなく依頼リストを眺めていると、確かに特殊なクエストが追加されている。

 相変わらず倉庫に関する依頼ばかりの中に、≪追放連合の復讐者募集中≫というリストがあった。
 依頼者の名前を見ると、そこにはヘルガ・コティラと書かれている。

 どこかで聞いたような、そうでないような……。
 この名前の奴が、倉庫に来た者に違いなさそうだ。

 復讐戦の日時は夕方としか書かれておらず、戦闘場所も外としか書かれていない。
 どうやらギルドクエストしたことで、手続きを面倒にさせたようだ。
 
 募集中ということは、おれと戦う奴を募っているということになる。
 それも追放連合とか、よほどラクルから追い出したい連中同士が多いらしい。

 ラクルという町はおれにとって故郷でも何でも無く、単に拠点にしているだけだ。
 しかし使い勝手がいい町だけに、二度目の追放は勘弁して欲しい所ではある。

「イスティさま、戦いはいつなの?」
「今が昼だから、あと数時間後といったところだな」
「すぐじゃないなの?」
「ギルドを通せと言ったからな。そもそもまだ募集中だし、挑発して来た割には集まってないかもな」
「それでも、イスティさまなら何人来ても無駄無駄なの!」
「……追放はともかく、戦いたいなら戦わせてやるつもりだ」

 ――と、フィーサと会話しているだけで注目を集めていたので、ギルドを出ることにする。 
 ギルドには依頼した連中の姿は無く、突っかかって来る奴らしき者の姿は無いようだ。

「さて、と。フィーサ、釣りギルドを見に行ってもいいか?」
「時間が余っているなら、それもいいかもなの」
「じゃあ行こう」

 フィーサと船乗り場に向かうことにした。

 それにしても、誰かに復讐されるような覚えがあまりない。
 そう思いつつ、ラクルを拠点とすることにこだわりが無いのも事実。

 面倒な連中が出て来たのをいい方向に考えれば、いよいよ国に帰る時が来たのかもしれない。
 そうすればここの連中に迷惑をかけることもなくなるが、その時が来たらルティに謝らねば。

「イスティさま、あそこに人だかり!」
「……ん?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーのララクは、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! ララクは、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。

克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

処理中です...