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第八章:因果の国
93.砦の秘密
しおりを挟む「こ、これは――!? やっぱりそうなのか」
「デミリス、何のこと?」
「ここに来るまでにかなりの冒険者と出会ったんだ。目的地は砦だったんだろうけど、そうじゃなかったんだよ」
「先が暗くてよく見えないけど、レイウルムにつながっているってこと?」
「多分、共和国の狙いは地下都市なんだ」
「そんな……! あのっ、アックさん!」
不安そうな表情のアクセリナがおれを見つめる。
予想出来るが、地下洞を通って助けに行きたいのだろう。
だが、
「……この先に複数の強い気配があります。地下都市へは地上から戻るべきです。それと、まだ未開通な感じなので心配は不要かと」
「そ、そうなのですか? そんなことまで分かるなんて……」
「その強い気配とオレとでは厳しいのですか?」
「多勢に無勢というやつです」
「く、くそ……」
◇
おれとルティは、シーニャたちと再会を果たす。
同行して来たアクセリナの依頼も達成した。
しかし砦から出て来た冒険者と交戦したのが、どうにも気になった。
ルティとシーニャのやる気に関係なく、デミリスたちとおれたちは砦内部に入ることにした。
砦の中はもぬけの殻。
外にあれだけかき集めた冒険者の姿も、全く見当たらない。
「だぁれもいないですね~? どこに隠れちゃったんでしょう?」
「ウニャ……さっきはたくさんいたのだ!」
「妾も見ていたなの。妾たちと一緒に、ここで冒険者たちが戸惑っていたなの」
シーニャたちとデミリスは砦の中にいた。
そこからおれの気配で外に出て来たわけだが、大した時間じゃない。
広間のような空間からどこへ消えるというのか。
こういう時こそ、スキャンを活かすべきだな。
おれは神経を集中させ、砦内部と周辺をスキャンし始めた。
いくつか強い気配を感じる。
だが気配は、砦の真下にあるようだ。
そうなると一見行き止まりに見える壁から、地下へ続く道があるということになる。
「アック様~? 難しい顔をしてどうしたんですか~? もしも~し?」
「ウニャ? アック、どうしたのだ?」
「こういうアック様は、わたしが一番よく知っているんです! アック様が難しい顔をしている時は、お腹が空いている時なんですよ!」
「シーニャもお腹が空いているのだ。ドワーフ、何か作れるのだ?」
「よぉし、それなら――」
ふむ、キニエス・ベッツなる名前が見えるな。
確かアグエスタで戦った奴だったか。
Aランク程度の強さだから、デミリスなら勝てそうだ。
いや、それでも名前の見えない奴が複数いるということは、油断出来ないか。
地下洞の先にいる気配の方が、もっとやばそうだが……。
その先は行き止まりだな。
いずれにしても、地下洞はまだ未開通。
途中まで行って、引き返すので十分だろう。
「――んっ? おい、ルティ……何の真似だ?」
「さささ、どうぞどうぞ! 特製の焦げ焦げパンですっ!」
「んごがっ!? よ、よせ、口に突っ込むな!」
「ふっふっふ~分かっていますよ? アック様は、焦げたパンがお好みってことを~」
おれがいつそんなことを教えたんだ。
しかし、何とも嬉しそうにパンを突っ込んで来るものだな。
【ルティ特製焦げ焦げパン 黒い気配を探れる】
ちゃっかり効果がついているとか。
ありがたいような、そうでないような。
「あ、あの、アックさん」
「ここはオレが言うよ。すみません、オレたちの頼みを聞いてくれないでしょうか?」
「……んぐ、何です?」
「何か嫌な感じがあるんです。もし、砦内部に隠し道があってそこからレイウルムに行けるとしたら、そうしたら、相当数の冒険者が行くことになるんじゃないかと思うんです……」
「確かに」
「それだけは阻止したいんです」
スキャンで探った感じでは、確かに隠し通路というか地下洞がある。
連れて行くことは出来るが……。
「ここには地下洞があると思います。そこにこれから行きますが、途中で引き返します。それでも良ければ」
「そ、それでいいです。どこまで行けるか分からなくても、レイウルムに行けそうなら……」
「私も微力ながら、弟と共に」
アクセリナとデミリスは不安そうだ。
しかし地下洞の存在に気付いた以上、行くしかない。
途中で戻るにしても、キニエス・ベッツと遭遇する可能性がある。
そいつよりも問題は、その先の気配に奴らが気付いているかどうかだ。
地下に眠る魔物だったら、厄介すぎる。
とにかく地下洞の存在に気づいてしまったことだ、進むしかないな。
「お味はどうですか~アック様?」
「あ~……うん」
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