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第六章:新たな地へ

66.緊急脱出!

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「王女さん、悪いがリエンスを連れて脱出してくれないか?」
「……そうしますわ。あの娘の力に手加減なんて無いでしょうし、早急に致しますわね」
「え? アックさんは?」
「もうすぐここは崩壊する。おれは平気だが、あんたは王女を守りたいんだろ? それなら、外に出てラクルにでも行って待っててくれないか?」
「だ、大丈夫なんですか? 崩壊……って、何か魔物がうめいているようですけど」
「問題ない。さぁ、早く行って!」
「フフッ、では後ほどお会いしましょうね、あなたさま」

 スキュラだった彼女の思惑通り、まんまと王女に成り代わった。
 もちろんそうでなければ、シーフェル王女はずっと行方知れずのままだっただろう。

 本物のシーフェルはスキュラの姿のまま、見るも無残な姿に果てている。
 おれにとって、エドラも復讐の対象ではあった。

 しかし今回に関しては、バヴァルが思い描いていたことの阻止だ。
 さらに弟子であるエドラの愚行を止めること。

 レザンスからの頼みでもあっただけに、成果は大きいものになった。

『アック様~! 力が溜まりました!! それではっ、ドカンとやっちゃいます!』
『よし、思いきりやれ、ルティ!』
『フオオオオオオ……!』

 どれだけの気合なんだか。
 ともかく、これでSランクパーティーの連中を一掃することになるな。

 拳に力を溜めまくったルティは、壁に向かって重い一撃を与えた。
 壁に亀裂が入って行く。

『アック様、アック様っっ!! し、失礼します~! むぎゅ~……』

 崩壊すると思っていたら、その前にルティはおれに抱きついて来た。
 気付けば、ルティの他にフィーサとシーニャもおれにしがみついている。

「……これは、何の真似だ?」
「イスティさま、テレポートしてなのっ! 早く早くなのっっ!!」
「アック、すぐ危険、危険なのだ」
「アック様、さぁさぁさぁ!! ビュンと飛んじゃってくださいっ!」
「何を急いで――っ!?」

 何か辺りの様子がおかしい。
 空間ごと歪んでいくように見える。

 元々大した神殿では無く、ダンジョンになっていた場所は洞門だった。
 それに一撃を与えて、崩壊どころか場所そのものを破壊とかじゃないよな。

 もはや考える余裕は無さそうなので、すぐにテレポートを発動させた。
 行先はもちろん、ラクルである。

 ◇

「あ、あの……」
「何かしら? リエンス」
「王国へはお戻りになられるのですよね?」
「ええ、そのつもりですわ」
「……冒険者のアックさんとお知り合いのようでしたが、王国に留まって頂けるんですよね?」
「それは分からないことですわね。王国に戻ったとて、第二王女なのでしょう? 自由を奪われるのは明らかなのだけれど、あなたはそれをお望みかしら?」
「ぼ、僕は……」

 シーフェル王女の体を得たスキュラは、王女の記憶や思い出を得ている。
 魔法スキルに関しては、そのほとんどを向こう側に奪わせた。

 その代償に、聖女となる前の記憶を全て奪うことに成功。
 王女として王国に行くのも、アックにとっていい方向に進ませるためでもあった。

「あなたのことは、帰ってから決めさせて頂くとしますわ」
「は。申し訳ございません」

 ◇

 ラクルに着いた。
 しかし、

「ウニャ~何だか体がだるいのだ~……」
「え? わたしは何とも無いですよ? 大丈夫ですか、シーニャ」
わらわも変なの。うぅ……どうしてなの~?」
「ええ? フィーサも?」
「うるさい、小娘……あぁうぅ~」

 獣人と人化した宝剣が、異変を感じている。
 ルティは元から頑丈なので不思議はない。

 どうやら転送テレポートは、負担があるようだ。
 使ったおれも、かなりの魔力を消耗している。

 こんなことでは、とても商売に使えそうにない。
 何かもっとお金になりそうなジョブを覚えるか。
 
「そういや、ルティ」
「はいっ! 何でしょうか?」
「あの場所に何が起きたんだ?」
「アック様のおっしゃられたとおり、粉砕をしましたっ! 木っ端微塵というやつなのです!」
「そ、そうだったな……ははは……」
「アック様でも出来ると思いますよ? それをわたしにお任せ下さるなんて、わたしは愛されているのですねぇ」

 確かにおれの拳でも出来ただろうが、躊躇ためらいが生じた恐れがあった。
 それがルティであれば、容赦なくやってくれるという思いが強かったのは確かだ。

 そういう意味では、ルティに任せて正解だった。

「そうだな、ルティの言う通りだ」
「は、はうっ!? ほ、本当ですかっっ!?」
「――ん?」
「思いきり行っちゃっていいんですよね?」
「よく分からないが、いいと思うぞ」
「で、では――」

 何が思いきりなのかそう思っていたが、次に目覚めるのは船室のベッドである。
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