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第五章:魔石の導き
60.意思持つ魔石?
しおりを挟むいつものように、腰袋から魔石を数個取り出す。
魔石は石板ほど大きくはないので、片手の手の平だけでシャッフル出来る。
ガチャをする時、特別な儀式や形式は必要ない。
やることといえば、自分が望んでいるアイテムや装備を思い浮かべるだけ。
レア確定スキルが覚醒してからするようになった。
今までのガチャでは、いちいち何かを望んだことは無い。
「ウニャ……アックが欲しいもの、石がくれる?」
「うん? そうとも限らないな。シーニャの装束も思い浮かべたわけじゃない。その仕組みはおれにも分かってないよ」
「でもすごいのだ! アック、すごい!」
おれがすごいのか、魔石がすごいのか……それは間違いなく魔石だろう。
意図しないモノを出してくれている気がするが、何とも言えない。
ともかく、地面に魔石を投げた。
「んっ……?」
【Uレア 宝珠セット】【Uレア 精霊獣の欠片】
【SSSレア アイスシールド 氷耐性 Lv200】
【SSSレア ライトニングハーネス 麻痺付加 Lv.500】
【SSSレア ドレイングローブ 触れた者の生命力を奪う Lv.--】
【EXレア ミスリルブーツ 水耐性:氷耐性 Lv.900】
「イスティさま、すごいなの!! たくさん出たなの~! しかも妾に似た物まで出ているなの」
「最近はこんなに出てなかったな。装備は何というか、まとまりが無さすぎるのが気になるが……すごいといえばすごいな」
「アックが望んだものなのだ?」
「いや、全く……でもないか」
「どっちなのだ?」
「スキュラが水魔法を得意としていることは分かっているから、何かの耐性があればいいかくらいは思ったな。見事に希望から外されているけど……」
EXレアは初めてだ。フィーサ用でも無さそうだが……。
「ピカピカな石がいっぱいなのだ! これは何に使うのだ?」
「ど、どうだろうな……」
正直言って、宝珠が何故出たのか全く不明だ。
精霊獣の欠片というのは、恐らく過去に出した欠片と使い方は同じなはず。
「イスティさま。妾が思うに、魔石の意思が生じさせたからだと思うの。魔石はイスティさまや、小娘と同じように成長途中で、覚醒も果たしているはずなの」
「魔石の意思? 魔石がおれの願いをくんで考えたとでも?」
「それはよく分からないなの……でも、そんな気がする」
「はは、石が意思表示とか、シャレのようだな」
「違うもん!!」
「ごめんごめん、でもそうかもしれないな」
宝珠はスキュラにとって最高の贈り物だ。
おれが思っていなくても魔石が先を読んでいるとしたら、どこかで役に立つ。
それにしても見事にばらけた装備だな。
スキュラ、もしくは正体不明の魔物にとって不利な耐性装備だとすれば、魔石のおかげになりそうではある。
「ハヒ~……アック様、まだ行かないのですか?」
「ルティか。いや、今から行く。きちんと説明してくれた?」
「はい、それはもう! あの見習い騎士さんは決して強くなさそうなのですが、とっても物覚えが良くて素直なのです。品もあって、きっとどこかの王族なのではないでしょうか?」
「王族じゃなくて、王国から来ているんならそうかもしれないな」
そういえばラクルに取り残されたと言っていたが、どういう経由で来られたんだ。
レザンスからだとしても、おかしな話ではある。
悪い奴では無いのは違いないが……。
一応確認しておくか。
「ルティはここで待っててくれ。リエンスと話をして来るから」
「えっ? こ、ここで待っていていいんですか? で、でもでも……」
「少しだけだから、そこに立っているだけでいい」
「は、はいっっ!!」
◇
おれやフィーサがいる所から、少し離れた場所に彼がいた。
何があるか分からない以上、離れてくれた方が安心ではある。
ルティに無理やり持たされた斧を、素直に手にしているようだ。
「リエンス。大丈夫か?」
「あ、アックさん! 僕の為に申し訳ありません。まさかこんな海の底にまで足を踏み入れることになるなんて、生まれて初めてです」
「冒険の旅は今まで?」
「はい、ありません。僕は王女の傍に仕え、守ることが仕事の毎日でした。戦いなど、とても……」
「王女の傍にいて危険は無かったと?」
「もちろんです! 王女様がとてもお強かったものですから、僕がいなくても……」
王女が最強な王国の見習い騎士か。
お目付け役にしても、リエンスは実力が無い。
王女というよりは王国の命令によるものかも。
「王女の名前を聞いてもいいかな?」
「あ、そうでした。シーフェル王国第二王女、エドラ・シーフェル様の――」
「――エドラ? エドラ・シーフェル?」
「ええ。ご存じなのですか?」
なるほど、そうか。
聖女エドラは王国の王女だった。
勇者グルートにそそのかされて、聖女として国を抜け出したか。
グルートの兄と言っていた騎士の国も気になる所だ。
「……いや」
「気性の荒い王女様ではありましたが、知性に溢れ、振る舞いはとてもお綺麗で……」
「なるほど、惚れているわけか」
「そ、そういうんじゃないんです! ですが、強くあられても僕は傍でお守りしたい。そう思っていたのです」
「見つかるといいですね、シーフェル王女」
「はい! 僕の予感が正しければ、きっとこの奥に迷い込まれているはずなんです」
この奥には神殿しかない。
そうなるとスキュラと一緒にいるのは、魔石に封じたはずのエドラになる。
魔石に封じたグルートとテミドは、すでに消えた。
じゃあやはり、バヴァルの弟子は――。
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