54 / 577
第四章:謎追いの旅へ
54.ギルドの行方と真実 後編
しおりを挟む「イスティさま……妾は?」
「フィーサは――」
いや、その前にどういうテストになるんだ。
単純な魔法攻撃だとしても、外に出ないと被害が出そうだが……。
『その方、名は?』
「アック・イスティ。実力の見せ方は?」
『ではアック。目の前に見えている巨木を燃やしてみるがいい!』
「……巨木を? しかしその木はどう見ても、レザンスのシンボル。後悔することになるかと」
『なに、当たらぬから心配無用。たとえ当たったとて、傷の1つもつけられないだろう』
どういうことだ。
おれを見くびっているのか、それとも。
老齢の魔術師のひとりが巨木のすぐ傍に立ち、他のふたりは少し離れて見ている。
どうやら相当な自信家のようだ。
ここはひとまず、
『――エクスプロジオン!』
手加減無用なら、これで。
爆発魔法は火力が強く、おれの魔力を存分に消耗して形となる。
しかも今回は動かない標的。
それをめがけて放つだけでいい。
そう思いながら両手を広げ、巨木に向けて発動させた。
しかし巨木の手前で威力が落ち、そのまま爆発魔法が消えてしまう。
そこに立つ魔術師は、一歩も動いていない。
『……どうした? それがアックの今の実力か? こちらは立っているだけだぞ?』
確かにそうだ。
巨木はもちろんのこと、老齢魔術師も身動きすら見せていない。
何かをしたとは思えないが、
「イスティさま。妾を使ってなの! 妾を引き抜いたら、すぐに炎をエンチャントしてくれればいいの」
鞘に収まっているフィーサが、背中越しから囁いて来た。
両手剣の彼女には魔法効果を付与出来るが、今までそれを試したことは無い。
強い気配に気付いたフィーサのことだ。
おれが気付かない異変に気付いているはず。
「フィーサブロスにファイアボールを付与!」
フィーサの剣全体に炎がほとばしる。
そんな彼女を握りしめながら、おれは巨木に向かって一直線に斬りかかった。
燃え盛る炎は巨木ではなく、辺りの空間を巻き込んで轟音と共に崩し出す。
え、これは……。
建ち並ぶ家々は焼け崩れた姿を晒し、足元からは焦げついた土の地面がむき出しになって現れた。
そして老齢魔術師は、ひとりだけになっている。
『見事! 我の幻影魔法をいとも容易く破るとは……』
幻影魔法ってことは、見えている場所全てが幻なのか。
しかし巨木だけは、少し焦げたように見えている。
「どういうことだ? 幻に見せて攻撃をけしかけさせたとでもいうのか?」
「無礼をお詫びする。我はレザンス・リブレイ。再建魔法ギルドのマスターである」
「へ? リブレイ……? レザンスって――」
「バヴァルは我の弟子であり、ここを焼け尽くした魔女でもある。先程まで見えていた家々は、全てバヴァルによって焼かれてしまった。巨木も焦げがついてしまったが……」
「つまり、ここが魔法ギルドの中心地だったと?」
「そういうことだ。手前の港など、魔法の気配すら無い。ここが魔法国と知る者は、もはやいないだろう」
真実は魔法に聞け……か。
正確にはフィーサの魔法剣で答えが出たけど。
「バヴァルは叛逆を?」
「才能があり後継者育成をしていたが、弟子が手にした神殿の書物を手に入れてから、おかしくなっていった。その結果が、このざまだ」
「しかし、それだけでここを燃やすなんて……」
「神殿の書物、つまり魔導書にはスキルを覚醒させることが書かれていた。力を持たせれば危険だと判断し、我は書物を人知れぬ港の小屋に隠した」
「隠した……?」
「そのことに怒り、ここを燃やされたというわけだ」
もしやおれが見せられたあの魔導書がそうだったのか。
ギルドだと思っていた場所が小屋で、その小屋に転送して来られた。
「バヴァル自身の覚醒は?」
「書物を見つけ出された時に触れていたが、覚醒はしなかったようだ。弟子を覚醒させようと企んでいたが、弟子には逃げられ年月だけが過ぎ去った」
「じゃあおれが……」
「最後の弟子アック。覚醒をしたのだろう?」
「まぁ……」
「それが何かまでは問わぬ。だが、バヴァルの教えを引き継いだ弟子がここに来たのは、何かの凶兆。何か良くないことが起きるかもしれぬ」
「しかしおれは――」
「悪いことを企む者ではないと知った。その宝剣は、そういう者に扱えるモノではないからな」
よく分からないが、フィーサのおかげか。
ギルドもろとも町を燃やすなんて、とんでもない魔女だった。
「それでおれはどうすれば?」
「逃げた弟子が生きていれば、良からぬことをするはずだ。バヴァルの意志を遂げるか、あるいは……」
「レザンス再建の邪魔を?」
「……ともかく、バヴァルの弟子だった女を探し、阻めてもらいたい」
「関わってしまった以上、努力しますよ」
「うむ……全て片付けたならば、アックはレザンスのギルドマスターとなれ!」
「え、おれが!?」
「それまで再建しながら待っているぞ」
全くそんなつもりは無いのに、ギルドマスターって……。
自由気ままに生きるはずが何故こんなことに。
「イスティさま。ギルドマスターになるのなの?」
「どうだろうね……ところで、シーニャは?」
「知らないなの。じっとしていることがない虎娘のことだから、港に行ったかもなの」
「参ったな」
「ドワーフ小娘の所に行っているかもなの。イスティさま、行くなの!」
「それしかないか」
バヴァルに囁かれてついて行ったばかりに、こんなことになるとは。
こうなれば、逃げた弟子を探すしかないのか。
0
お気に入りに追加
567
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」
Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。
しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。
彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。
それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。
無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。
【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。
一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。
なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。
これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる