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第四章:謎追いの旅へ

46.町を守る娘との戦い ルティ編

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「怖いのだ怖いのだ……」
「ひゃぅぅ……わらわは怖くなんて……ひゃうひゃう」

 フィーサは当初、剣の姿でおれが背負いこむ鞘に収まる予定でいた。
 それなのにシーニャの怖がりがフィーサにも伝わって、人化から剣に変われなかった。

 フィーサの目論見が外れたことも関係している。
 デーモン族は竜と違って、人に翼を生やしたような獣人タイプ。

 剣であればフィーサも一緒に、デーモンの背中に掴まることが可能だった。
 ところが悪魔の王とされるキングは、少女姿のフィーサを拒んだ。

 その結果、彼女たちはデーモンの中でも格下の群れに乗っている。

 そんなことがありながらも、空を飛ぶデーモンのおかげですぐに地上が見えて来た。
 シーニャたちを運ぶデーモンとは、格の違いのせいか一定以上の距離が離れてしまう。

『主。ニンゲン、オソウノカ?』

「へ?」

 おれを乗せたキングと脇を固める側近が、雲の下から見えた小さな町を指している。
 多分あれがルティたちがいるルタットだと思われるのだが、

『メイレイ?』

 ……うっ? 魔法の発動の気配が。
 これはまずい。

『しない! おれを降ろし、即座に帰還せよ』
『ワカッタ』

 今回呼ばれたのが人間の町を襲うと思ったようで、側近のデーモンは攻撃態勢になっている。
 しかしルティたちと合流する町なので、すぐに停止を命じて事なきを得た。

 デーモンキングと側近は素直に命令に従い、遠くの空に帰って行く。
 フィーサとシーニャを乗せたデーモンの群れは、まだ来る気配がないようだ。

 外で待っても仕方がない。
 おれだけでもルタットの町に入って、ルティたちを探すことにする。

 ルタットに入った。
 思った以上に小さな町だが、町の中を流れる水路と水車は安心するものがある。

 のどかな町を見渡していたのだが、

『ギャー!? あ、悪魔……』
『お、襲われるぞ!! に、逃げろー』
『た、助けてー!!』

 ――と、何やら町の人たちが騒いでいる。
 見た感じほとんど男ばかりで、女性の姿は見えない。

 もしかしておれの命令に背いて、デーモンたちが町の中に入ってしまったのか。
 そう思っていたのに、

『そこの真っ黒い魔物さん!!』

 ……む? この声は……。
 そう思いながらも町の外に目をやっていたら、

『あなたですよ! あ、悪魔さん!! ここは人間の住む町ルタットなんですよ? 襲っちゃ駄目なんです! それ以上入るつもりなら、本気出します!!』

 何やら戦いたくて仕方が無さそうだ。
 まずはおれの声を聞かせて、落ち着かせよう。

 ルティほど声を張れないので、少しだけ足を進ませようとした時だった。

『てぇぇぇぇい!!!』

 メイドエプロンなルティの姿はすでに無く、頭上から拳を振り下ろそうと上の方に跳んでいた。
 あれ、いつの間にこんな跳躍が?

 彼女とは一度戦ったことがあるらしい。
 それも寝不足で覚えていないが。

 そんなルティの一撃は、確かに体が覚えているようだ。
 かなりの衝撃と重みが、おれの全身を突いていた。

『むぅぅぅ~!? 効いてない!? こんなことじゃ、あの方が来るまで守れないじゃないですか!』

 あの方……それはきっと、おれのことである。
 すでに町に到着しているし目の前にいるんだが、話しかけられる状況にない。

 おれも特化スキルを得たことだし、ルティの強さを確かめてみるか。
 ルティの一撃は、デーモン装備のダメージ吸収効果が働いて、痛みは感じられなかった。

 デーモンと勘違いされている今なら、ルティと真っ向から戦えるいい機会かもしれない。
 野次馬も無く、スキュラの姿も無いのでここは戦ってみることにした。

 気合いを入れるのと、ルティに気付かれないように声を張り上げる。

『ウオオオオオオ……!!』
 なるべく低い声にしたつもりが、魔物に近い叫び声になってしまった。

『あ、悪魔の雄たけびというやつですか!? まだまだお仲間さんが来るんですね? でもそうはさせませんよ!!』

 そうじゃないんだが……。
 そんなルティに対し、おれは突進する。

 恐らく防御を取るよりも反撃カウンターをして来るはず。
 そう思ったので、直前で彼女の背後を取ることにした。

『ヌオオオオオオ!!』
『いいでしょう、受けて立ちます!』

 予想どおり、正面からの攻撃に備えつつ片手の拳を腰の位置に下げて、身構えている。
 そこから素早く身をかわし、ルティの背後に回ることが出来た。

『――ああぁっ!?』
『……許せ』

 ルティの背中ががら空きだ。
 さすがの彼女でもダメージを負いかねないが、やや力を抜いた重い一撃を繰り出す。

『キャアァァッッ!?』

 不意打ちという形になってしまったが、ルティの背後から攻撃を喰らわせた。
 背中からの攻撃を受けたルティは、かなり吹っ飛んだ。

 やりすぎたか?
 手加減をしたとはいえ、起き上がれないダメージを負わせたと思っていたが、
 
『はぎゃぅっ!? あれれ、水が~?』

 大したダメージを受けていないどころか、水の膜のようなものが彼女を守っていた。
 手ごたえを感じていたんだが、甘すぎたか?

『……フゥ。何をしているかと思えば悪魔と戦っているなんて、全くあなたって人は』
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