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第二章:魔石の秘密

29.Aランク剣士たちの挑発

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 ルティを後ろに下がらせたとはいえ、複数を相手にするのは初めてだ。
 それも剣の相手となると、今の時点ではかなり不利といえる。

『ああ~ん!? お前か? 随分……』

 男たちの1人、リーダー格の男がおれの来ている装備を見つめている。
 ルティが作ると言っていた両脚は、まだ間に合っていない。

 それもあって、まともな部分は上半身だけだ。
 もちろん強さの基準は装備などではなく……。

 リーダー格ではない別の男たちが、笑いをこらえきれずにおれの前までやって来た。
 そして、

「ぶあっはははは!! おい、見ろよ? コイツ、知識も何も持ってねえぜ?」
「おいおい、本当かよ? 炎属性の防具にミスリルの剣って……随分な趣味してやがる」

 数台の馬車の内、降りて来たのは車輪を大破された馬車。
 それに乗っていた、言葉も品も悪い3人の男たちだ。

 全員が剣を所持しているということは、強さは別として剣士か。

「……何かおれの装備に問題でも?」
「問題ぃ? まさかと思うが、アグエスタの剣闘場に参加するってのは、お前か? 冗談だよなぁ?」
「さぁな。おれだったら問題があるのか?」
「大有りだろ、そりゃあよぉ……! お前、見たところ、ジョブなしの荷物持ちだろ? なぁ?」
「……残念ながら、荷物持ちではないな」
「へぇ、そうかよ。どうでもいいが、高そうな装備を上だけ着ていたって無駄だぜ、そりゃあ」

 こいつらの相手をする方が無駄だな。
 剣はともかく、拳で吹き飛ばしてやろうか。

『貴様たち!! いい加減にしとけ! そんなジョブなしのガキを笑ったところで、無意味だ! 問題は、馬車の車輪だ。そこのドワーフの娘を連れて来い!! 街で締め上げるぞ!』

 やはりこの大男がリーダー格か。
 他の男らに比べると、体格に差があって分かりやすい。

 鋼鉄製の防具一式と、黒鉄……いや、ただのアイアンソード鉄の剣だな。

 身長差もあるし、リーチもおれより上といったところだ。
 一見すると話の分かる奴に思えたが、ルティを捕らえる発言は許せない。

 部下なのか、2人の男たちがおれを押し退け、ルティの所に向かおうとする。

『悪いが、それは認めてない』

「「邪魔すんな、ガキ!!」」

 ルティはすでにかなり後方、アグエスタの門の付近にまで下がっている。
 こいつらはそのまま街に入るつもりだろう。

 重いままの剣で出来るかどうか……そう思っていたら。

「イスティさま、今回だけだよ?」
「――え?」

 今まで黙っていたフィーサの声が、耳元で聞こえる。
 同時に、おれの体が操られたかのように動き出した。

「何だぁ? Aランクの俺たちとやり合うってのか?」
「そんなミスリルの剣ごときで、何が出来るってんだ?」

 重かった剣はすでに無く、嘘のように体も剣も身軽になった。
 おれだけでは相手の懐にまで入る速さは無い。

 それだけに、フィーサの動きは男らの肝を冷やす。
 なめ切った2人の剣が振り下ろされる前に、おれの剣先が奴らの頬をかすっていた。 

 おれだけでは、男たちの頬に切り傷すらもつけられなかっただろう。

「……な、馬鹿な!」
「ど素人じゃねえのかよ!?」

 ど素人以下だけど。
 間違いなく、フィーサにとってお遊び的動きだった。

 男たちはAランクと言っていたが、あの勇者たちよりは劣るということか。
 しかし剣となると、いまのおれはランクすらつかない。

 こればかりは実戦あるのみだ。
 そして、

『貴様! 見せかけの剣士もどきかと思っていたが、どこの国の奴だ?』
 大柄の男が近づきながら、声をかけて来た。

 この時点で、2人の男らは馬車のある位置にまで下がっている。
 それほどの人間なのか。

「どこの国でもない。強いて言えば、大陸の裏側だ」
「……なるほどな。名は? そのミスリルは、ただの剣では無いな?」
「アック・イスティ。この剣は、宝剣だ」
「宝剣……ふん、そうか」
「あんたはどこの誰だ?」
「俺はアグエスタ騎士団、副団長であるキニエス・ベッツだ。ランクはSに近いAといったところだ。貴様の強さはあんなもんじゃないだろう? その答えは、剣闘場で聞く。ドワーフの娘には教育しとけ!!」

 大柄の男と、2人の男たち、それに馬車の列。
 大破した車輪の馬車だけを残して、アグエスタに入って行く。

 騎士団の副団長……。
 ということは、団長は酒場にいたあの男だろうか。

 またしてもベッツという名が出て来た。
 どこかでこの名を聞いているが、どこだったか。

「イスティさま、どうだった?」
「フィーサのおかげというか、あれでどれくらいの強さ?」
「分かんない。だけど、妾なら負けないの。でも……イスティさまの強さでは勝てないかも」
「だ、だよねえ」

 フィーサに操られっぱなしだと厳しいだろうな。
 剣闘場の戦いがいつなのかによるが。

『アック様~!!』

 ん? ルティの声か。
 アグエスタ付近に下がっていたはずだが、案外近くにいたようだ。

「ルティ! 大丈夫だった?」
「はいっ! アック様こそ、ご無事でしたか?」
「まぁ、おれは……というか、『様』じゃなくても」
「いいえ! わたし、これからずっとアック様ってお呼びします! ずっとお傍にいたのに、他人行儀だなぁと思っていたので、もっとずっと近くに感じていたいです。いいですか?」
「それは構わないけど、おれはそのままでもいいのかな?」
「はいですっ! たまにルティシアもドキドキですけど、ルティって呼ばれたいです~!」

 ルティの気持ちにも変化が出たのか。
 フィーサの無言にも恐れを感じるが、まずは宿に戻ることにする。
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