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第二章:魔石の秘密
24.宝珠貴婦人と貴族酒場へ
しおりを挟む疲れ果てながら宿に戻ると、スキュラが起きていた。
ルティは何か安心したのか、すぐに横になってしまう。
剣闘場で稼ぐことや転送士のことを話したら、
「そういうことでしたら、まずは手持ちの稼ぎを得るために、あたしをお使いくださいませ」
「え、でもスキュラのその姿では……」
「ご心配には及びません。アックさまから頂いた宝珠には、わずかながら魔力を込められます。貴族程度でしたら、宝珠の魔力に惑わされ、宝石を持つあたしを貴婦人として見るに違いありませんわ!」
「貴婦人として貴族の酒場に潜入するってこと? いくらキミでも危険なんじゃ……」
「ですから、お願いしますわ。お傍にいて頂けたら、後で好きなだけ触角に触れて頂いても……」
「――え……い、いやいや。とにかく、おれがスキュラの護衛役として同行するってことかな?」
一瞬迷いそうになった。
獣耳のように見える触角だが、スキュラの体に直に触れるようなものだ。
何だかそれは、非常によろしくない気がする。
「それでは、あたしは人間の姿になりますわね。ご覧になりますか?」
「へ、部屋を出ているから! 外で待ってるよ」
色々興味はあるが、そこは知らないでおく方がいい。
それにしても、ルティからしょっちゅう貰う回復ドリンク。
基礎体力も上がっているし、拳の力はルティに迫っている気がする。
ルティは何でも拳でやりたがっているが、間違いなく支援系。
転送士とかは魔力っぽいので、そこは補えないがかなり強くなった。
剣を握っての実践こそ無いが、拳闘の方でもいけるんじゃないか。
「お待たせしましたわ、だんな様」
「だ、だん……!?」
「深い意味でもありませんわ。アックさまは、宝石をいつでもどこでもお出しになる商人。そういう意味でのだんな様ですよ? お得意様のあたしと、貴族酒場に……何もおかしくなんてありませんわね」
「そ、そうか」
どういうことか怖くて聞けないが、スキュラの格好はどこぞの貴婦人に見える。
あからさまに宝珠をちりばめて、夜でも光で目立つ。
「そういえば、スキュラって人間でいうと何歳くらいに?」
「……くだらないことですわね。数字よりも、どれだけの人間が魅了されるか……それに尽きるはずですわ」
「ご、ごめん」
「アックさまにはお教えしても構いませんけれど、あたしの触手に触れられます?」
スキュラの下半身は、タコとイカといった足になっていて、触手がある。
今は人間の足に変わっているが、やはりどこか危険な感じがあるのでやめておこう。
「……そ、そのうちね」
「いいですわ。それでは、人間ごときが富でわめく酒場に向かいますわね。護衛役、お願いしますわだんな様」
「ああ、分かった」
そうは言いつつも、おれだけがみすぼらしい格好のままだ。
ガチャで出すことも出来ないことも無い。
だがレア確定ガチャで出る服を着るには、相応のレベルが必要な気がする。
それは強さというより、人間性だ。
とにかく今は、貴婦人スキュラの護衛としてついて行くしかない。
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