上 下
15 / 577
第一章:生まれつきのスキル

15.Sランクパーティー、消滅する。

しおりを挟む

 自分が魔獣変化スキルを使っていたらどうなっていたのか。
 そう考えてしまうが、それより今は、限定召喚をする。

 レアガチャで出した書をさらに魔石で。
 それが条件なのかと疑いたくなるが、とにかく魔石を包んだままで地面にほうった。

「……? うん?」

 グルートオークが気付いていない状態でガチャをしてみたが、特に何も起きない。
 バヴァルの方を見ても、首を傾げたままだ。

『ギョアアォオオゴオオッ……!! アックウゥゥ……!』
 おれの名前を叫んだ? まさか理性を取り戻したか。

 図体を大きくしたグルートオークは、見た目も動きもオークのように無駄な動きをしていた。
 だが、おれの名前を叫び出してからは、目つきが違う。

 おれに気付いたようだ。
 限定召喚ガチャが何も起こらないままで気付かれるとは。

『ちっぽけな雑魚めぇぇぇ……!! ぐぅぅぉぉおおおお』
 これはまずい……。

 隠れるところはいつぞやのワイバーンよりはあるが、横穴のような場所は探していられない。
 こうなれば召喚に頼らずに、魔法を撃つか。

 フィーサはルティたちのところにいて剣は振れない。
 となると、覚えたての強力魔法で倒すか?

『でぇいやああああ!!』
『――ゴガァッ!?』

 やけに甲高い声が響いてきたと思ったら、ルティだった。
 予想どおり、拳一つでグルートオークを殴りつけている。

 しかし、
『むむぅぅ? アックさん、感触は確かなんですけど、倒れてくれません~!』

 ルティの殴り攻撃は、グルートオークの動きを止めるくらい激しかった。
 それなのに倒れる気配は無い。

 勇者だった時の強さと防御が付与されているとすれば、通常攻撃だけでは不十分か。
 
『うるさい雑魚が! 邪魔をするなっ!!』
『わわっ――!』

 言葉はすっかり人間に戻っている。
 グルートのデカい手で、ルティは払いのけられて壁に衝突してしまった。

 それでも彼女らしく、
『びっくりしました~! わたしは何ともありませんので、アックさんお願いします~』

 どれだけ頑丈なんだあの
 お願いされてもな。

 バヴァルと同時に魔法攻撃でも放つか?
 そう思っていたが、おれから離れてルティたちの辺りで防御魔法をかけている。

 その辺は手厳しい師匠のようだ。

『ガーハハハハ!! 踏みつぶしてやる! アック、死ねぇぇぇぇ……!!』

 力がついたおかげで、グルートの踏み付けの足を押さえつけることは出来ている。
 長く持つか、それだけが心配だ。

 そう思っていたら――

『アック、貴様まさか……』
『……ん?』
『くそぉっ!! 知らない間に何か呼んでいやがったな!?』

 グルートのデカい足を押さえているのでよく見えない。
 しかし薄暗い壁から見える影を見れば、その姿はドラゴンのようにも見える。

 それも3体ほどいるようだ。
 まさか、限定召喚の奴なのか。

なれが盗み、滅されの存在か』
『盗んだだぁ? 使えもしないゴミスキルが盗んだうちに入るのか、そこの雑魚に聞いてみたらどうだ、化け物め』

 グルートのデカい足が離れたところで、3体の竜が顔をのぞかせた。
 おれの命令でも待っているのか、ジッと待っているようだ。

 その瞬間、手の平に浮かんだのは
 【ファフニール】【ジルニトラ】【バクナウ】
 という竜の名だった。

 おれ自身でグルートたちを……そう思っていたら、竜に宿ったような感覚を覚えた。
 そして、

『勇者グルート、聖女エドラ、賢者テミド……お前たちの存在を、灰と化す……』
『ハハハッ、何を言うかと思えば、たかが竜数匹程度の力を借りた荷物持ちが、僕を消す? すでに瀕死で役立たずのエドラとテミドなら簡単だろうが……無駄口の前に、死ねっっ!!』

 自分でも不思議な感じだった。
 3体の竜のどれでもないが、確かに竜としてグルートが見えている。

 おれは襲い掛かって来るグルートに向けて、口を大きく開く。
 そして喉の奥……いや、体の奥底から燃え盛る炎を吐き出した。

『――や、やめっっ! 嫌だぁぁぁぁっっっ!! うあ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ……』

 こうなるとたとえ図体を大きくしたオークでも、爆炎をまともに受けた以上どうにもならない。
 みるみるうちに、グルートオークはその姿を保てず、そのまま炎に巻かれた。

 そして瀕死となっていたはずのエドラ、テミドは隙を見て逃げ出そうとしていたが……、

『ひ、ひぃっっ!? わ、わたくしを助けて頂ければこの身はあなた様の――』
『か、勘弁してくださいぃぃ……!! お、俺はグルートに言われただけで、俺は何も――』

 何やら命乞いをしながらも、どうにか助かろうとしているようだ。
 こいつらをグルートの傍に行かせてやることにする。

「「やめて、殺さないでくださ――あっあぁぁぁぁ」」

 2体の竜の突風により、エドラとテミドもグルート同様に、炎の中心に吹き飛んだ。

 ◇

 気付くと3体の竜はすでになく、おれは未だ消えることのない炎の柱の前で、立っていた。
 ルティ、バヴァルたちがおれの元に駆け寄って来る。
 
「盗みへの罰を科した……そういうことでしょうね」
「あの竜たちの?」
「ええ。そしてその答えは、もうすぐアックさまの手元に届きます」
「え、答え?」

 しばらく炎を眺めていたが、ようやく全てを焼き尽くしたようだ。
 灰と化せば、嫌な姿も見ることは無いだろう。

 そう思っていたが、

「アック様、彼らは全て1枚の魔石と化しました。どうされますか?」
「……魔石!?」

 Sランクパーティーである彼らは消滅した。
 しかし意外な形となって、俺の元に届く。

 魔石となれば使い道はありそうだが……どうするべきか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーのララクは、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! ララクは、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。

克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

処理中です...