10 / 577
第一章:生まれつきのスキル
10.魔法国と魔導書の変化
しおりを挟む
「そうそう、こんな感じで手の平に魔力を集中させて……」
「こ、こうですか?」
「うん、筋がいいね! あんた。これなら今すぐにも魔導書を読むことが出来そうだ」
◇◇
ラクルの港から船に乗ったおれたちは、1日ほどの航海でたどり着く、魔法国レザンスにやって来た。
ついて早々、
『それは宝剣フィーサブロス……!? あんた、何者だい? どこから……いや、まずはギルドに来てもらおうかな」
特定のジョブを持たないおれは宝剣フィーサを背負い、水棲怪物であるスキュラを連れ歩いていたことで、いかにもな魔法士に声をかけられてしまう。
ルティは大きい樽を背負って歩いていたせいか、仲間では無く行商人として、別の意味で人だかりが出来ていた。
「ひぃぃええ~!? どうすればいいんですか~?」
「ギルドに行って来るから、そこで待ってて」
「分かりました~あぁぁぁ~これは売り物じゃありませぇん」
赤髪でドワーフな彼女はとても目立つのか、割と注目を集める傾向にある。
だがおれは、ルティ本人からはドワーフだということを聞いてはいない。
それをわざわざ聞くまでも無ければ言うほどでもないと、おれも彼女も思っている。
珍しい種族でもないが、女の子のドワーフで親しげだからだろう。
「ここが入り口だよ。さぁ、入って」
言われるがままに、魔法ギルドの部屋に入る。
魔法のことは当初、スキュラに教わろうとしていた。
しかし彼女の使用属性は、やはり水属性ばかり。
しかも教え方が分からないと言われてしまったので、今に至る。
「あたしだけなら使えるんですけれど、アックさまにお教え出来るようなスキルは、無かったですわ」
「そ、そんな……それは困ったな」
意気込んで教えようとしてくれた気持ちは嬉しかったが、言葉だけでは伝えられないのは厄介だった。
そんなわけで、結局スキュラもルティと同様に待機させた。
宝剣フィーサは、ずっと剣の姿のまま眠っている。
彼女曰くその時が来たら眠れなくなるから、今のうちにたくさん眠っておきたいらしい。
あながち間違いじゃなさそうだったので、フィーサを鞘から出すことは控えている。
『宝剣使いの……お名前は?』
『アック・イスティ。別に宝剣使いでは無くて……魔法を覚えたい』
『アックさん。まずはレザンスの魔法ギルドへようこそ! 私はギルドマスターのバヴァル・リブレイだよ』
『あ、どうも』
ギルドマスターと名乗っているが、部屋には他に誰もいない。
魔法の国ということは、魔法士向けの依頼がありそうなものだが……。
バヴァルと名乗った老齢な女性は、腰を低くしておれに対している。
ラクルに似て冒険者しかギルドを訪れないのかと思うくらい、部屋の中は寂れた状態だ。
『ところで、宝剣を手にしているということは、魔法剣を習得したいお考えですな?』
今のを聞く限り、どうやらフィーサは相当な剣らしい。
宝剣というだけでも目立つが、これまで長い間に英雄が手にしていたこともあるとしたら、確かに持っているだけで目を引く。
それだけに宝剣持ちというだけで、自然と魔法を覚えることになりそうだ。
魔法剣となると、元々のフィーサの強さに加えて属性を付与することになる。
そうなれば、何が来ても負けないだろうな。
「……む? アックさんには、すでに魔力が備わっておりますね」
「あぁ、それは前々から言われてますが」
「これまで魔法をその身に受けたことが?」
「一応、ありますね」
正確には、状態異常魔法で死にかけただけなんだが。
ついでに睡眠耐性も。
「それならば、当ギルドの魔導書に触れるだけで、適正の魔法スキルが覚醒するかと」
「魔導書? 適正の……?」
「アックさんは、まだこれといって決まった属性はお持ちでは無いでしょう?」
「そうですが……」
「どれ、手の平に魔力を集中させてごらんなされ」
「ぬぅぅ……!」
「ふむ、筋がいい。これなら問題なさそうだね」
強いて言えば魔石ガチャでレア確定だけど。
しかしガチャをしない時は、攻撃魔法の類は打てないし使うことも出来ない。
どうせなら自分の意思で魔法を打ちたいものだ。
どんな強力なものでも歓迎するし、とんでもない化け物クラスでも出たら嬉しい。
「こんな手の平で?」
「それを魔導書は判断するのです。あなたにとって、相応しい魔法スキルを導き出す……それが当ギルドの魔導書なのですよ」
「触れるだけでいいなら、ぜひ!」
「ではお待ちを」
そういうとバヴァルは、奥にある書庫から埃だらけの魔導書を持ってきた。
いや、絶対今まで使ったことないだろ。
「けほっ……では、表紙に手を」
「あ、あぁ、まぁ……ゴホッゴホッ」
これはひどい。
それでも触れるだけならと思い、古びた魔導書に触れてみた。
触れた途端、一瞬だったが熱のようなものを感じてしまう。
これはガチャ直後の魔石に似ている。
『――むっ!? 表紙の絵が……変化し始めた』
『えっ? 変化?』
魔導書の表紙の絵は、何かの英雄が描かれている。
しかも大勢の英雄が、どこかに向かって総攻撃をしているような感じだ。
「ふむ……適正が下されました。アックさん。あなたの魔法スキルは限定召喚、そして全属性、全精霊のスキルが覚醒しましたな。召喚に関して言えば、何かの触媒でもって強化されますでしょうな」
「召喚!? それに全属性に全精霊……? というか、限定召喚とは?」
「魔石をご存じかな?」
「ま、まぁ」
「アックさんが召喚をするには、魔石が必要となるのですよ。そして魔石を介した召喚は、何らかの力を限定的に現わすことでしょうな」
「……魔石」
「いずれにしても、全てにおける適正がなされた。アックさんには、ぜひとも宝剣に魔法を付与して欲しいものですな」
こんな簡単に……と言ってはいけないが、全属性が使えるなんて幸運すぎる。
召喚は外で試すしか無いが、依頼でも受けてやってみるか。
「こ、こうですか?」
「うん、筋がいいね! あんた。これなら今すぐにも魔導書を読むことが出来そうだ」
◇◇
ラクルの港から船に乗ったおれたちは、1日ほどの航海でたどり着く、魔法国レザンスにやって来た。
ついて早々、
『それは宝剣フィーサブロス……!? あんた、何者だい? どこから……いや、まずはギルドに来てもらおうかな」
特定のジョブを持たないおれは宝剣フィーサを背負い、水棲怪物であるスキュラを連れ歩いていたことで、いかにもな魔法士に声をかけられてしまう。
ルティは大きい樽を背負って歩いていたせいか、仲間では無く行商人として、別の意味で人だかりが出来ていた。
「ひぃぃええ~!? どうすればいいんですか~?」
「ギルドに行って来るから、そこで待ってて」
「分かりました~あぁぁぁ~これは売り物じゃありませぇん」
赤髪でドワーフな彼女はとても目立つのか、割と注目を集める傾向にある。
だがおれは、ルティ本人からはドワーフだということを聞いてはいない。
それをわざわざ聞くまでも無ければ言うほどでもないと、おれも彼女も思っている。
珍しい種族でもないが、女の子のドワーフで親しげだからだろう。
「ここが入り口だよ。さぁ、入って」
言われるがままに、魔法ギルドの部屋に入る。
魔法のことは当初、スキュラに教わろうとしていた。
しかし彼女の使用属性は、やはり水属性ばかり。
しかも教え方が分からないと言われてしまったので、今に至る。
「あたしだけなら使えるんですけれど、アックさまにお教え出来るようなスキルは、無かったですわ」
「そ、そんな……それは困ったな」
意気込んで教えようとしてくれた気持ちは嬉しかったが、言葉だけでは伝えられないのは厄介だった。
そんなわけで、結局スキュラもルティと同様に待機させた。
宝剣フィーサは、ずっと剣の姿のまま眠っている。
彼女曰くその時が来たら眠れなくなるから、今のうちにたくさん眠っておきたいらしい。
あながち間違いじゃなさそうだったので、フィーサを鞘から出すことは控えている。
『宝剣使いの……お名前は?』
『アック・イスティ。別に宝剣使いでは無くて……魔法を覚えたい』
『アックさん。まずはレザンスの魔法ギルドへようこそ! 私はギルドマスターのバヴァル・リブレイだよ』
『あ、どうも』
ギルドマスターと名乗っているが、部屋には他に誰もいない。
魔法の国ということは、魔法士向けの依頼がありそうなものだが……。
バヴァルと名乗った老齢な女性は、腰を低くしておれに対している。
ラクルに似て冒険者しかギルドを訪れないのかと思うくらい、部屋の中は寂れた状態だ。
『ところで、宝剣を手にしているということは、魔法剣を習得したいお考えですな?』
今のを聞く限り、どうやらフィーサは相当な剣らしい。
宝剣というだけでも目立つが、これまで長い間に英雄が手にしていたこともあるとしたら、確かに持っているだけで目を引く。
それだけに宝剣持ちというだけで、自然と魔法を覚えることになりそうだ。
魔法剣となると、元々のフィーサの強さに加えて属性を付与することになる。
そうなれば、何が来ても負けないだろうな。
「……む? アックさんには、すでに魔力が備わっておりますね」
「あぁ、それは前々から言われてますが」
「これまで魔法をその身に受けたことが?」
「一応、ありますね」
正確には、状態異常魔法で死にかけただけなんだが。
ついでに睡眠耐性も。
「それならば、当ギルドの魔導書に触れるだけで、適正の魔法スキルが覚醒するかと」
「魔導書? 適正の……?」
「アックさんは、まだこれといって決まった属性はお持ちでは無いでしょう?」
「そうですが……」
「どれ、手の平に魔力を集中させてごらんなされ」
「ぬぅぅ……!」
「ふむ、筋がいい。これなら問題なさそうだね」
強いて言えば魔石ガチャでレア確定だけど。
しかしガチャをしない時は、攻撃魔法の類は打てないし使うことも出来ない。
どうせなら自分の意思で魔法を打ちたいものだ。
どんな強力なものでも歓迎するし、とんでもない化け物クラスでも出たら嬉しい。
「こんな手の平で?」
「それを魔導書は判断するのです。あなたにとって、相応しい魔法スキルを導き出す……それが当ギルドの魔導書なのですよ」
「触れるだけでいいなら、ぜひ!」
「ではお待ちを」
そういうとバヴァルは、奥にある書庫から埃だらけの魔導書を持ってきた。
いや、絶対今まで使ったことないだろ。
「けほっ……では、表紙に手を」
「あ、あぁ、まぁ……ゴホッゴホッ」
これはひどい。
それでも触れるだけならと思い、古びた魔導書に触れてみた。
触れた途端、一瞬だったが熱のようなものを感じてしまう。
これはガチャ直後の魔石に似ている。
『――むっ!? 表紙の絵が……変化し始めた』
『えっ? 変化?』
魔導書の表紙の絵は、何かの英雄が描かれている。
しかも大勢の英雄が、どこかに向かって総攻撃をしているような感じだ。
「ふむ……適正が下されました。アックさん。あなたの魔法スキルは限定召喚、そして全属性、全精霊のスキルが覚醒しましたな。召喚に関して言えば、何かの触媒でもって強化されますでしょうな」
「召喚!? それに全属性に全精霊……? というか、限定召喚とは?」
「魔石をご存じかな?」
「ま、まぁ」
「アックさんが召喚をするには、魔石が必要となるのですよ。そして魔石を介した召喚は、何らかの力を限定的に現わすことでしょうな」
「……魔石」
「いずれにしても、全てにおける適正がなされた。アックさんには、ぜひとも宝剣に魔法を付与して欲しいものですな」
こんな簡単に……と言ってはいけないが、全属性が使えるなんて幸運すぎる。
召喚は外で試すしか無いが、依頼でも受けてやってみるか。
0
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~
ゆさま
ファンタジー
新作ゲームアプリをテストプレイしてみたら、突然ゲームの世界に転送されてしまった。チートも無くゲームの攻略をゆるく進めるつもりだったが、出会った二人の美少女にグイグイ迫られて…
たまに見直して修正したり、挿絵を追加しています。
なろう、カクヨムにも投稿しています。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
追放の破戒僧は女難から逃げられない
はにわ
ファンタジー
世界最大の力を持つドレーク帝国。
その帝国にある冒険者パーティー中でも、破竹の快進撃を続け、今や魔王を倒すことに最も期待が寄せられると言われる勇者パーティー『光の戦士達』。
そこに属する神官シュウは、ある日リーダーであり勇者として認定されているライルによって、パーティーからの追放を言い渡される。
神官として、そして勇者パーティーとしてそぐわぬ素行不良、近年顕著になっていく実力不足、そしてそんなシュウの存在がパーティーの不和の原因になっているというのが理由だが、実のところは勇者ライルがパーティー内で自分以外の男性であるシュウを追い払い、ハーレム状態にしたいというのもあった。
同じパーティーメンバーである婚約内定者のレーナも既にライルに取られており、誰一人として擁護してくれず失意のままにシュウはパーティーを去る。
シュウは教団に戻り、再び神官として生きて行こうとするが、そこでもシュウはパーティー追放の失態を詰られ、追い出されてしまう。
彼の年齢は20代後半。普通の仕事になら就けるだろうが、一般的には冒険者としては下り坂に入り始める頃で伸びしろは期待できない。
またも冒険者になるか?それとも・・・
拠り所が無く、愕然とするシュウはだったが、ここで一つのことに気が付いた。
「・・・あれ?これで私はもう自由の身ということでは!?」
いい感じにプラス思考のシュウは、あらゆる柵から解き放たれ、自由の身になった事に気付いた。
そして以前から憧れていた田舎で今までの柵が一切ない状態でスローライフをしようと考えたのである。
しかし、そんなシュウの思惑を、彼を見ていた女達が許すことはなかった。
※カクヨムでも掲載しています。
※R18は保険です。多分
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる