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第一章:生まれつきのスキル

6.魔石と導き

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 海底に何かがあると言っているようなものだが、どうやら侵入して来た者を止める魔物らしい。
 戦わずして行くには、キラキラしたものを彼女に渡せばいいのか。

「うおお~! ここはわたしの出番ですよ~。何が来たって拳で!」

 ルティだけは戦う気十分で、握りこぶしを何度もぶつけながら戦闘態勢に入っている。
 戦いに来たわけでも無く、あくまで依頼のためでもあるので、ここは大人しく引き下がるか。

「分かった。キラキラしたものを差し出す。そうしたら、この先に行っても何もしないんだな?」
「何もしないどころか、案内をして差し上げるわ! 見た感じあなた、頼りがいが無さそうですもの。欲しいものを頂けるのなら、最期まで面倒を見てあげる」
「……それでいい。それで、必要なものは何だ?」
「キラキラしたもの……そう言えば人間なら分かりそうなものだけど?」

 高価な品でキラキラしたものといえば、宝石が思い浮かぶ。
 しかしこの洞門には貝殻があって、探せば真珠くらいは出て来そうだ。

 そうすると、単なる宝石では満足しないはず。

 レア確定ガチャなら、それらしいものも出てくれそうではある。
 とにかく引いてみるか。

「――って、駄目だルティ! 戦うとは言ってないぞ。そのぶんぶんと振り回した拳を引っ込めて!」
「えええ~? 何でですか!? だってどう見てもやる気じゃないですか! これは拳で黙らせて……」
「ルティシア・テクス。おれの言葉を聞けないなら……」
「はうぅっ!? 嫌です嫌です~! アックさんに逆らいたくないです。ごめんなさぁぁい!!」

 言葉を聞けないなら、後でいくらでも愚痴を聞いてあげよう……それを言うつもりが、何か恐ろしいことを言われると思ったのか、ルティはしょんぼりしておとなしくなってしまった。

 気を取り直してガチャを引くと、

 【藍石の宝珠】【緋石の宝珠】【白石の宝珠】
 【氷晶石の宝珠】【精霊結晶の欠片】
 など、4種類の宝珠と精霊結晶の欠片かけらが出て来た。

 今回はアイテム系だからなのか、魔石から特に熱さを感じない。
 気にすることなく腰袋に魔石をしまおうとすると、突然その手を押さえつけられた。
 
『あーー! 何をしているんですか!!』
 ルティが声を張り上げている。

 おれの手を押さえつけ、腰袋にしまうのを止めたのは魔物の彼女だ。

「その魔石を頂けない? それがあれば全てに満足出来る気がする……」
「……これはあげられない。悪いが、そこに置かれている宝珠をもらってくれ」
「見ていたわ。その魔石から出て来たのよね? それさえあれば、宝珠であろうといつでも出せるはずだわ」

 何か様子がおかしい。
 まるで何かに憑りつかれているような、そんな感じがする。

 元々はワイバーンからドロップした魔石ではあるが、色んな属性と混ざり合って出来た魔石だと言えるし、特別な何かが魔石に封じられている可能性は否定できない。

 敵意を感じさせない彼女だったが、魔石が気になるのか力を入れたままだ。
 眠っているフィーサを鞘から出して、斬りつけてみることも出来るが……。

『このぉぉぉ……!! アックさんから離れなさいっっ!』
 迷っていると、ルティの拳がおれを押さえつける彼女にヒットしていた。

 ルティの力は相当なもので、水棲の彼女は壁に吹き飛び、叩きつけられている。
 攻撃をするなと言っていたが、これは怒りようが無い。

『う~んん……あれっ? 何で壁に張り付いていたのかしら?』
 どうやら正気を取り戻したようだ。

 レア確定を覚醒させた魔石からは、少なくともおれに悪さを引き起こすことにはなっていない。
 しかし魔石は本来、ガチャをする以外では見かけないレアなものでもある。

 何らかの原因で魔物の彼女に影響を与えたと考えるべきか。
 まぁ、何とかなるよな。

『わあっ!! キラキラ~! ねえねえ、これ全部頂いていいの?』

 完全に正気に戻っているみたいで、地面に転がる宝珠に夢中のようだ。

「構わないよ。全部キミのものだ」
「やったぁ~! それじゃあ約束通り、あなたの最期まで傍にいてあげますわ! あなたさまっ」
「……今、なんて?」
「聞こえなかった? あたし、スキュラ・ミルシェは、あなたさまのお傍でずっとお仕えしますわ!」
「い、いつからそんな約束を!?」
「キラキラしたものをくれるとおっしゃられた時からですわ。あなたさまのお名前が知りたいです」
「ア、アック・イスティ……」
「アックさま……! それではこの先の古代種神殿へご案内差し上げますわ!」
「神殿か。そこに物があるということか」
「それでは参りましょう、アックさま」

 そういうと、スキュラは先の方で手招きをしている。

 よりにもよってフィーサが眠っている間に魔物の子が味方になるなんて。
 ルティの拳には聖なる力でも含まれて……あぁ、回復魔道士だった。

「どうしてそうなるんですか~!! あれっ? アックさん、こっちの結晶の欠片はいらないんですか?」
「うん? そうか、光ってないからか。それならルティ。きみが持っていていいよ。精霊結晶の欠片だし、何かに使えるかもしれないよ」

 今回はガチャで得られた仲間では無かった。
 考えればレアガチャで味方を得るとは、必ずしも限らないわけだが。

 間接的に仲間になったという意味では間違ってないけど。
 
 ルティの拳の効果も分かったし、おれの力もまた上がった。
 さらには魔力の強そうな味方も増えたことだし、このままいけばよほどの相手じゃなければ戦える気がする。

 とにかく今は神殿に行って、依頼を終わらせることにしよう。
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