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第一章:生まれつきのスキル
3.ギルド登録と武器の調達
しおりを挟む倉庫の町ラクルは港町だ。
眼前に海があり、反対側には山もそびえ立つ。
周辺にはそうした環境で出来たダンジョンが、いくつも点在している。
しかし冒険者よりも、倉庫の仕事をしている者がほとんどだ。
生まれつきユニークスキルを持つ者がひっそりと暮らす町として、密かに冒険者の間で知られてしまったからでもあった。
おれもラクルで暮らし、住み込みの倉庫番として仕事をしていたのだが――。
ガチャスキルのことを聞きつけた勇者たちによって、クビにさせられたのは記憶に新しい。
――それはひとまず忘れるとして、おれは仲間となったルティと一緒に、ラクルに戻って来た。
町に入るとかつての倉庫仲間たちがおれに気付き、歩み寄る。
「お前はアックで違いないか?」
「……あぁ。ラクルに戻ったんだ」
「そうか、無事だったんだな。それで、連れの子は?」
「おれの――」
別に隠すことでは無かったが、仲間と言うにはまだ控えるべきか。
サクリフ石窟の崩落から生き残ったことに不都合があるとすれば、ここですでに勇者たちが何か吹き込んで行った可能性がある。
「いや、言わんでいい。格好を見れば分かるが、食堂で働く娘だろ」
「あ、あぁ。そんなところだ」
「まぁいい。アックが無事だったのなら、何も言うことは無い」
「……悪いな」
「無事ついでにギルド登録を済ませたらどうだ? クエストは倉庫関係しか無いが、ギルドに所属しておけば何かに出会えるかもしれんからな」
そういうとおれから離れ、男たちはそれぞれの持ち場に戻って行った。
ラクルの人間は冒険者よりも結束が固く、町以外の人間を信用しない。
実際に会話をすることで真実を見極める者ばかりなので、この辺は助かる所だ。
「アックさん、何もされませんでした?」
「問題無かったよ」
「仮に何かされたとしても、わたしが回復水を飲ませて差し上げます!」
「……ルティは回復魔道士だよね? 回復の魔法は使わないの?」
「実はですね、魔法ではアックさんの力の上げ幅が低いんですよ~! やっぱりお強くなられるためには、特製でお手製の回復水が一番だと思ったのです!」
魔石から見えたルティのステータスは、凄腕でレベルが”2”だった。
しかし魔道士というわりには、怪力だし力を上げられる回復水まで作れる。
成長したらレベルが上がって、さらにユニークなことが出来るようになるのだろうか。
そして気になるのは、おれ自身のレベルだ。
Sランクパーティーの勇者たちを何とかするには、自分のことを知って強くならなければならない。しかも相手は三人もいる。
厄介な相手は、おれに状態異常を使った聖女エドラだ。
とにかく今はおれ自身の力を高めながら、仲間を増やしていく必要がある。
「ルティ、とりあえずギルドに行くよ」
「ギルド? 噂で聞いたことがあって興味があります! わたしもついて行っていいんですか?」
「もちろん!」
「それにしてもここは倉庫ばっかりなんですね~! これは面白い光景です! 温泉が無いのは寂しいですけど」
「ははは、初めてここを訪れる人はみんな言うんだ。温泉はまぁ、無いな」
「穴を掘ったら湧きますかね~?」
「それはさすがに……」
ユニークレアな彼女は、言うことも面白いように思える。
おれからすれば、火山渓谷に住んでいたことの方がよほど興味を惹く。
ラクルのギルドは冒険者の拠り所でもあるが、倉庫の町のギルドだけあって、受けられる仕事のほとんどは倉庫に関係するものばかりだ。
当然だが、ギルドは倉庫の中の一角に存在する。
――そこから勇者たちがおれを誘いに来たわけなのだが。
「アックさん! 倉庫の中にそれらしい場所がありますね!」
「それじゃあ入ろう」
「はいです!」
町の人間はたとえ倉庫関係の依頼があっても、ギルドで受けることは無い。
登録は簡単でも、結局は魔物退治が組み込まれているからだ。
さすがに命を懸けてまでギルド依頼を受ける人間は、ラクルではいないに等しい。
「アックさん、わたしも登録していいですか~?」
「何かいいのがあった?」
「海食洞門調査と、沈む物資の調達というのが面白そうです!」
「波浪で侵食した崖の洞窟か。間違いなく水棲の魔物がいるだろうから、先に武器を手に入れないと」
「古代人は、いるんですかね~?」
「魔物はいるけど人は分からないな。ルティは、水に濡れるのは平気?」
「忘れちゃいましたか? わたし、温泉好きの人間ですよ!」
「そうか、そうだった。まずは剣でも斧でもいいみたいだから、武器を手に入れてからかな」
おれとルティは登録だけを済ませ、倉庫の外に出た。
海のダンジョンに行くには勝手が違うし、厄介そうな魔物に遭遇する恐れがあるので、依頼を受けるには冒険者向けの武器を装備する必要がある。
そう思って武器売りの倉庫に向かおうとしたが、
「アックさん、ガチャを引いて出せばいいんじゃないでしょうか?」
「あっ! そういえばそうだ」
「きっといいものが出ますよ~!」
最初のガチャでルティが出たせいか、アイテムや武器を出す認識を外してしまっていた。
そうと決まれば、人目のつかない場所に移動してガチャを引くことにする。
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