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司教承諾離婚
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いったいどういう事なんだ!
一週間ぶりに屋敷へ帰ってみると妻が出て行ったという。いつもは遅くならない限り妻は玄関で私を出迎えてくれた。今日は邸が全体的にひっそりとしていた。
なんだか雰囲気がおかしかった。
私は執事に妻はどこだと訊ねた。
「奥様は邸を出て行かれました。旦那様には話してあると聞いています」
モーガンは表情を変えず私にそう告げた。
「話してあると?何を……」
出て行った?出かけていったの間違いだろう。
ここでは邸の使用人たちの目があるからとモーガンは私を執務室に入るよう促した。
妻はどうしたんだ。
混乱した私の様子にも動じない、邸のこの空気は何なんだ。
「いったい、妻は……いつ?」
「三日ほど前でしょうか」
「なぜ止めなかった!」
「先ほども申しましたが、旦那様とは話がついているとおっしゃっていらしたので。私は奥様をお止めしませんでした」
クソッ……いったい急にどういう事だ。
彼女はどこへ行ったのだ。
「居場所は分かっているのか?すぐに連れ戻すよう従者に……」
「もし、連れて戻られたとしても、また出て行かれると思います」
「そんな事はない。ちゃんと話し合えば彼女は出て行ったりはしないだろう」
モーガンは怪訝そうな顔をする。
「旦那様。失礼ながら、根本的な原因を取り除かなければ奥様は戻ってらっしゃらないと思います」
「原因?」
原因とはなんだ……
アーロン……マリリンの事か。
「原因とはなんだ。知っているなら答えろ」
「旦那様。奥様が出て行かれた原因を御存じでしょう。話し合われたのではないのですか?マリリンさん親子がここにいらっしゃる以上戻ってはこられないと思いますよ」
「彼女は理解していただろう。スコットの忘れ形見だ。面倒を私の邸で見るという事は承知していたではないか」
「いつまでの事でしょう。旦那様はしばらくの間とおっしゃいました。いつまで面倒を見るおつもりだったので?」
「……っ、それは、仕方がないだろう。彼女たちはスコットの両親に認めてもらえなかったのだから。どこにも行くあてがないのだ。放り出せとでもいうのか!」
「申し訳ありません。放り出そうが出すまいが、もうどうでもよい話でした。これは奥様が戻るか戻らないかの話でもない。離婚するとおっしゃって出て行かれましたので、そもそも今更彼女達を追い出したとしても遅い話ですね。失礼いたしました」
何を言っているんだ。
モーガンは私には忠実な執事だった。
邸の管理もすべてモーガンに任せ、それなりの立場も与えていたし、給金も十分渡していたはずだ。
以前はこんな嫌味を言う執事ではなかった。
ドアがノックされ執務室にコンタンが入ってきた。
「失礼します旦那様。これは、司教様の証明書と離婚の受理証明書でございます」
コンタンは離婚が受理されたことを示す証書を私に差し出した。
私はそれを手に取り、読み始め、そして青ざめた。
「何!何故だ。こんなものは無効だ。私は離婚届に署名などしていない!」
離婚届には署名していない。なぜ離婚が成立するんだ。
「いいえ。こちらは司教承諾離婚ですので、相手の同意がなくても離婚が認められます」
「司教承諾離婚?」
「はい。三年の間、子をなす事ができなかった夫婦は、どちらかの申し出により双方の合意がなくとも離婚できます。これは法的に認められた離婚証書です」
「三年……」
私は膝から崩れ落ちた。
最後に話し合った時、私たちはちょうど結婚して三年目を迎えていた。
一週間ぶりに屋敷へ帰ってみると妻が出て行ったという。いつもは遅くならない限り妻は玄関で私を出迎えてくれた。今日は邸が全体的にひっそりとしていた。
なんだか雰囲気がおかしかった。
私は執事に妻はどこだと訊ねた。
「奥様は邸を出て行かれました。旦那様には話してあると聞いています」
モーガンは表情を変えず私にそう告げた。
「話してあると?何を……」
出て行った?出かけていったの間違いだろう。
ここでは邸の使用人たちの目があるからとモーガンは私を執務室に入るよう促した。
妻はどうしたんだ。
混乱した私の様子にも動じない、邸のこの空気は何なんだ。
「いったい、妻は……いつ?」
「三日ほど前でしょうか」
「なぜ止めなかった!」
「先ほども申しましたが、旦那様とは話がついているとおっしゃっていらしたので。私は奥様をお止めしませんでした」
クソッ……いったい急にどういう事だ。
彼女はどこへ行ったのだ。
「居場所は分かっているのか?すぐに連れ戻すよう従者に……」
「もし、連れて戻られたとしても、また出て行かれると思います」
「そんな事はない。ちゃんと話し合えば彼女は出て行ったりはしないだろう」
モーガンは怪訝そうな顔をする。
「旦那様。失礼ながら、根本的な原因を取り除かなければ奥様は戻ってらっしゃらないと思います」
「原因?」
原因とはなんだ……
アーロン……マリリンの事か。
「原因とはなんだ。知っているなら答えろ」
「旦那様。奥様が出て行かれた原因を御存じでしょう。話し合われたのではないのですか?マリリンさん親子がここにいらっしゃる以上戻ってはこられないと思いますよ」
「彼女は理解していただろう。スコットの忘れ形見だ。面倒を私の邸で見るという事は承知していたではないか」
「いつまでの事でしょう。旦那様はしばらくの間とおっしゃいました。いつまで面倒を見るおつもりだったので?」
「……っ、それは、仕方がないだろう。彼女たちはスコットの両親に認めてもらえなかったのだから。どこにも行くあてがないのだ。放り出せとでもいうのか!」
「申し訳ありません。放り出そうが出すまいが、もうどうでもよい話でした。これは奥様が戻るか戻らないかの話でもない。離婚するとおっしゃって出て行かれましたので、そもそも今更彼女達を追い出したとしても遅い話ですね。失礼いたしました」
何を言っているんだ。
モーガンは私には忠実な執事だった。
邸の管理もすべてモーガンに任せ、それなりの立場も与えていたし、給金も十分渡していたはずだ。
以前はこんな嫌味を言う執事ではなかった。
ドアがノックされ執務室にコンタンが入ってきた。
「失礼します旦那様。これは、司教様の証明書と離婚の受理証明書でございます」
コンタンは離婚が受理されたことを示す証書を私に差し出した。
私はそれを手に取り、読み始め、そして青ざめた。
「何!何故だ。こんなものは無効だ。私は離婚届に署名などしていない!」
離婚届には署名していない。なぜ離婚が成立するんだ。
「いいえ。こちらは司教承諾離婚ですので、相手の同意がなくても離婚が認められます」
「司教承諾離婚?」
「はい。三年の間、子をなす事ができなかった夫婦は、どちらかの申し出により双方の合意がなくとも離婚できます。これは法的に認められた離婚証書です」
「三年……」
私は膝から崩れ落ちた。
最後に話し合った時、私たちはちょうど結婚して三年目を迎えていた。
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