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【婚約解消された侯爵令嬢は王族教師に見初められる】
48卒業記念夜会
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一年が経ち卒業生を送るパーティーが開催された。
フランクは卒業後、王宮に出仕する事が決まっている。
貴族たちは婚約者がいれば、パートナーとして一緒に夜会に参加する。
エレノアはフランクの婚約者だ。
けれどこの一年、彼と会話をした事はなかった。
勿論、この夜会にエスコートしてくれるはずもない。
「あなたさ、婚約者がいるんじゃなかったの?」
ルームメイトのマリアが私に訊ねてきた。
彼女は私にフランクがいる事を知っている。
「婚約者はいます。けれど、夜会に一緒に行こうと誘われていません。先に言っておきますけど、ドレスや宝石を夜会の為にプレゼントしてくれたわけでもないので、自分で揃えました。以上」
私も一年経って少しは学習した。
はっきり言えば、それ以上嫌味を言われない。
何も言わずにいるから、言われっぱなしになるのだ。
自分をしっかり持って、恥ずかしいわけではないと堂々とした振る舞いをしていれば、相手はとやかく言ってこない。
「なんだか、最初の頃より態度が大きくなったわね。婚約者に相手にされない事は、自慢でも何でもないのに」
「嫌味ですか?弱い者虐めですか?」
「別に虐めてなんていないわよ。それに貴方弱くもなんともないじゃない」
「なら、ご自分の事を考えたらいかが?人にかまっている時間なんてないでしょう。勉強ができなくて留年しても知りませんから」
マリアはかなり勉強で後れを取っていた。
試験の成績が悪くて留年するかもしれないと泣きつかれたから、仕方なくテストに出そうなところを教えてあげた。
感謝されてもおかしくない。彼女に嫌味を言われる筋合いはない。
「分かったわよ。ごめんなさい。貴方がいなければ留年していたかもしれないわ。ありがとう」
「やっと個室に移れますわね。念願かなって、お別れですわ」
昨日の敵は今日の友とはよく言った物で、裏表がない分、彼女とは気が合うような気がしていた。
長く過ごすと情も湧く。
「本当に、やっと夜ぐっすり寝られるわ。今までありがとう。なんだか寂しいわね」
「本当ですね。私こそ、ありがとう」
結構よい関係が築けていたのかもしれない。
彼女とは二年に上がってクラスが変わる。もうあまり顔を合わせないと思うと寂しく感じた。
私は薬学科へ進む。彼女は淑女コース(花嫁修業)だ。
フランクはイザベラではなくミランダをエスコートして会場内に入ってきた。
勿論私には見向きもしない。
「イザベラはやはり男爵令嬢だから駄目だったのね」
「そうね、ミランダにしたのね」
先日、今日のフランクのお相手が誰なのか、生徒たちの間で話題になっていた。皆が気になっていたのだろう。
さすがイケメン高位貴族の令息だ。
私は密かに、イザベラが有力だと思っていた。だからフランクがミランダを選んだのには驚いた。
庇護欲をそそるような愛らしいイザベラは、やはり爵位が問題だったのかもしれない。
「顔より爵位の方が大事って事なのかしら?イザベラ様はかなり悔しそうな表情だったわ」
マリアが私に報告してくる。
普通は婚約者を同伴するのが当たり前だ。よほど日陰な存在なのね私。
婚約者が予想メンバーにも入っていなかった事に我ながら呆れてしまう。
「そろそろ私も美容とかに興味を持たなくては駄目ね」
自分のあまりにも地味な姿を考え、つい言葉に出してしまった。
「なんで急にそういう話になるのよ。貴方は勉強だけしてればいいのよ」
「なんで興味持っては駄目なのよ」
「だって、貴方化けそうだもの」
「どういう意味?」
マリアが言うには、私はお洒落したら別人になってしまうという。このまま地味でいる方が性に合っているらしい。
よく分からないが、着飾ったところで、子供にしか見えない私は恥をかくだけなのかもしれない。
このまま目立つことなく、勉強だけしていようと思った。
私はね、選んでいるのよとマリアは言う。
彼女いわく、自分はモテているが、それをあまり周りには言わないのだそうだ。
「ダンスはあまり得意ではないから、誘われても踊らないわ」
かなり上から物を言っているマリアだったが、上級生にダンスを申し込まれると喜んで踊りに行った。
別に羨ましいとも思わない。あまりにも色恋に興味がなさ過ぎて、ダンスはどうでも良かった。
私は壁の花だ。
フランクは卒業後、王宮に出仕する事が決まっている。
貴族たちは婚約者がいれば、パートナーとして一緒に夜会に参加する。
エレノアはフランクの婚約者だ。
けれどこの一年、彼と会話をした事はなかった。
勿論、この夜会にエスコートしてくれるはずもない。
「あなたさ、婚約者がいるんじゃなかったの?」
ルームメイトのマリアが私に訊ねてきた。
彼女は私にフランクがいる事を知っている。
「婚約者はいます。けれど、夜会に一緒に行こうと誘われていません。先に言っておきますけど、ドレスや宝石を夜会の為にプレゼントしてくれたわけでもないので、自分で揃えました。以上」
私も一年経って少しは学習した。
はっきり言えば、それ以上嫌味を言われない。
何も言わずにいるから、言われっぱなしになるのだ。
自分をしっかり持って、恥ずかしいわけではないと堂々とした振る舞いをしていれば、相手はとやかく言ってこない。
「なんだか、最初の頃より態度が大きくなったわね。婚約者に相手にされない事は、自慢でも何でもないのに」
「嫌味ですか?弱い者虐めですか?」
「別に虐めてなんていないわよ。それに貴方弱くもなんともないじゃない」
「なら、ご自分の事を考えたらいかが?人にかまっている時間なんてないでしょう。勉強ができなくて留年しても知りませんから」
マリアはかなり勉強で後れを取っていた。
試験の成績が悪くて留年するかもしれないと泣きつかれたから、仕方なくテストに出そうなところを教えてあげた。
感謝されてもおかしくない。彼女に嫌味を言われる筋合いはない。
「分かったわよ。ごめんなさい。貴方がいなければ留年していたかもしれないわ。ありがとう」
「やっと個室に移れますわね。念願かなって、お別れですわ」
昨日の敵は今日の友とはよく言った物で、裏表がない分、彼女とは気が合うような気がしていた。
長く過ごすと情も湧く。
「本当に、やっと夜ぐっすり寝られるわ。今までありがとう。なんだか寂しいわね」
「本当ですね。私こそ、ありがとう」
結構よい関係が築けていたのかもしれない。
彼女とは二年に上がってクラスが変わる。もうあまり顔を合わせないと思うと寂しく感じた。
私は薬学科へ進む。彼女は淑女コース(花嫁修業)だ。
フランクはイザベラではなくミランダをエスコートして会場内に入ってきた。
勿論私には見向きもしない。
「イザベラはやはり男爵令嬢だから駄目だったのね」
「そうね、ミランダにしたのね」
先日、今日のフランクのお相手が誰なのか、生徒たちの間で話題になっていた。皆が気になっていたのだろう。
さすがイケメン高位貴族の令息だ。
私は密かに、イザベラが有力だと思っていた。だからフランクがミランダを選んだのには驚いた。
庇護欲をそそるような愛らしいイザベラは、やはり爵位が問題だったのかもしれない。
「顔より爵位の方が大事って事なのかしら?イザベラ様はかなり悔しそうな表情だったわ」
マリアが私に報告してくる。
普通は婚約者を同伴するのが当たり前だ。よほど日陰な存在なのね私。
婚約者が予想メンバーにも入っていなかった事に我ながら呆れてしまう。
「そろそろ私も美容とかに興味を持たなくては駄目ね」
自分のあまりにも地味な姿を考え、つい言葉に出してしまった。
「なんで急にそういう話になるのよ。貴方は勉強だけしてればいいのよ」
「なんで興味持っては駄目なのよ」
「だって、貴方化けそうだもの」
「どういう意味?」
マリアが言うには、私はお洒落したら別人になってしまうという。このまま地味でいる方が性に合っているらしい。
よく分からないが、着飾ったところで、子供にしか見えない私は恥をかくだけなのかもしれない。
このまま目立つことなく、勉強だけしていようと思った。
私はね、選んでいるのよとマリアは言う。
彼女いわく、自分はモテているが、それをあまり周りには言わないのだそうだ。
「ダンスはあまり得意ではないから、誘われても踊らないわ」
かなり上から物を言っているマリアだったが、上級生にダンスを申し込まれると喜んで踊りに行った。
別に羨ましいとも思わない。あまりにも色恋に興味がなさ過ぎて、ダンスはどうでも良かった。
私は壁の花だ。
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