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27項(うなじ)*

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番(つがい)になるためには、アルファはオメガの首の後ろの項(うなじ)を強く噛まなければならない。
それがオメガが自分だけの相手になるという印だ。
オメガは番になると、他のアルファとの性行為ができなくなる。
けれど、フェロモンを抑えることができ、ヒートであっても他のアルファとの交わりができなくなる。

お互いの愛の契約で、バース性おいての婚姻だ。


「今すぐ項を噛んで番になるのは、待って欲しいんです」

私はそうレイに言った。

「なぜ?」

レイは少し驚いたようで私に訊いてきた。

「私はまだ、オメガ専門法務士の試験に受かったわけではありませんし、今のままだと、私はまだ無職で、先が何も見えません。しっかり自分の足で立てるようになってから、レイ様と番になりたいです。このままおんぶに抱っこの状態では自分が嫌です」

私が『そこだけは譲れません』とはっきりと言ったので、レイは、反論したかったが言葉を飲み込んだようだった。

番になるということは結婚するということ。

レイは愛人になれと言っているわけではない。
それは勿論わかっている。けれど、もし、レイになにかあった場合、例えば他の人に愛情が移ったり、事故に遭ったりした場合どうするのだろう。
レイに捨てられたら、一人で生きていくことがすぐに困難になるだろう。


子どもがいたなら尚のことだ。
父親に捨てられて生きていけなかった、自分の母親のようにはなりたくない。
せめて資格を取得して職を得てから、番のことは考えたい。
私はそう思っていた。

私がそう言った夜から、レイの執拗な攻めは、交わりという名を借りて私に襲いかかってきた。
毎晩のことで、私はこのままでは体力が持たないなと思った。
閨事に関しても、取り決めをしておくべきだったと私は後悔した。



その日はレイの仕事が休みの土曜日だった。

昨夜も体が壊れるかと思うほど抱かた。一週間休みなく抱かれ続けた翌日、私は恐る恐る切り出した。

「レイとの……その交わりというか、愛し合いというか……とても気持ちがいいです。何度も……本当にもう、すごいです」

私はレイの機嫌を損ねない程度に、様子を伺い言った。

「ありがとう。まだまだいけるよ?今からする?」

レイは私の腰を掴んでひょいっと抱え上げ膝の上に座らせた。

「や、ちょ、待ってください違うんです!」

私は焦ってレイの膝の上から下りた。

ははは、と笑ってレイは先を促す。

「レイが絶倫なのはわかったし、体力も有り余ってて、仕事で遅くなってもスタミナが切れないっていうのも、もうなんていうか獣のようです」

「え、と……それって褒めてるの?」

「はい、もちろん。ですから、なんていうか……」

レイは堪えていたのか突然吹き出した。
ぎゅうっと私を抱きしめる。

「悪かった。解ってたけどね、ま、ちょっと頑張ってみた」

頑張ってたのか?そこをそんなに頑張る必要はなかったと思う。
レイの考えはちょっとズレてる。

レイは私を椅子に座らせると、訊ねてきた。


「アイラがオメガ専門法務士の資格を取れれば嬉しい。君が今まで頑張っていたのを見てきたから、そうなればなによりだ。けれど、試験に万が一落ちたとしても、俺の気持ちは変わらない。アイラのことがずっと好きだよ」

私は顔を赤らめて俯いた。

「なのになぜ、項を噛ませてくれないのか。それが疑問だ。俺を信用していないということだと思う」

レイはそう言うと私の項にキスをした。

「信用と私の将来の夢とを秤にかけ、二者択一を迫るのは間違っています」

私は勢いに任せて続けた。

「それはそれ、これはこれ、です」

レイはうんうんと頷く。

「なるほど、アイラが言いたいことはわかるし、そうかもしれない。では、なぜ、夢の実現と番になるという事の順序にこだわるの?番になったから夢をあきらめろと言っているわけではない」

ゆっくりと、言い聞かせるように話しができるのは弁護士だからなのだろうか。
何事にも動じず、自信があり堂々としている様はかっこいい。

けれど、これでは私の方が無茶言ってるみたいではないか。

「こだわっているのはレイ様です。少しだけ待って欲しいと言っているだけです」

自分で言いながら、どんどん話し合いはエスカレートして私は腹が立ち興奮してきた。

「それこそ、レイ様が毎日することによって、私が番にならないから、交わりで体を自由にするみたいなのは違うと思います」

「閨事がいやなの?」

「い、嫌じゃないですけど、モノには限度っていうのがあって…体がもちません。壊れてしまいます」

「若いのに体力ないなぁ」

「は?今は交わりの話してるんじゃなくて、番の話?え?」

自分でも何を言っているのか途中でわからなくなってしまった。


レイはくすくす笑った。

「番の話は多分平行線だから、もう俺が待つしかないんだろうなと思う」

まるで仕方ないから折れてやるって感じで、あきらめ顔でベッドへ向かうと、服を脱ぎだした。

何をしてるんだと驚きの表情を浮かべる私を見ながら下着まで脱いだ。

「アイラといると、一日中抱き合っていたいんだよな」

と言い手招きした。

信じられないと私は目を見開き、こんな話の最中に変態なのか。
レイはいったいなにを考えてるんだと腹立たしく思った。

一方、レイの自分を求めてくれることに嬉しくも感じ、私はきゅんとするのだった。



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