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最終章 ~最強の更に先へ~

第123話  【水晶使い】ラインVS【六道】龍人②

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 龍人は吹っ飛んだが、翼を広げ、ゆっくりと着地した。
 血も流れていなかった。
 ……刺さらなかったか。『晶棘』の先が欠けていた。

 硬すぎだろが。ノーダメージなわけはないだろうけど……。
 ゲームで言う感じ、オレの与えるダメージは1とかか? ミス、0ではないと信じたい。
 攻撃は当たっている以上、ミスではない。
 0は……そこまでオレの攻撃力と相手の防御力に差があるようには見えない。

 なんて考えていると、龍人は攻撃を仕掛けることなく、話しかけてきた。

『これでも、貴方との戦いは楽しみにしていたのですよ。私を高みへ導く存在だと信じていましたから』

 ああ、幻滅したのね。そこまでの強さじゃないって。

 高みへ導く、ねぇ……。
 たしかに、戦いが終わったあとに命があれば経験値という強さを得るだろうな。
 
『正直がっかりです。聞いていたほどの実力ではありませんでした。……ですが、盟主の命令には逆らえません。精々、死なないように・・・・・・・してください』

 死なないように……?
 互いの存亡を賭けた……賭けられているのはこちらの存亡か。なのに、死なないように?
 まるで一貫性がない。やはり、魔物連合盟主の目的は別にあると見ていいな。
 だが、その目的が何かまではわからない。そこにオレが関わっているだろうと推測できる。

 龍人が薙刀を構え直す。

 龍特有の技術スキルは厄介だ。おまけに、龍そのものの個体数が少ないため、どれだけあるのかわからない。
 確認されている魔法のすべてが、純粋な身体能力強化系魔法。
 ゲーム風に言えば、特定のステータス上昇。

 オレにとって初めての敵。初遭遇というわけだ。初見殺しだろ。

 ゲームにおいて、初見殺しほど腹の立つモンスターはいない。
 好奇心で戦闘に入ると、攻撃が一切通じず、一撃で殺される。

 まさに、今、目の前にいる龍人がそれ・・だ。
 おまけに、普通の龍よりも知能高いし。進化系だって言ってるし。未確認の技術スキルもあるかも……なんなら、未確認の方が多いかもしれない。
 うはー、面倒くさ! 
 それに一々効果をメモしないと。将来、同じ技術《スキル》を持つ存在が現れるかもしれないわけだし。

 嫌になるな、ほんと。
 神器の力を2つ引き出したおかげで、かなりステータスアップしたはずなんだが。
 新しい加護【感覚強化】と、【思考加速】は現在絶賛発動中。

 こいつはさっき、『私を高みへ』と言っていた。
 オレは龍人こいつのおかげで高みへ登れそうだ。そのまま追い抜いたろか思います。

 強者との戦闘は、神器の解放に最適、効率的だ。
 まあ、生き残らないといけないんだが……。はっ。笑えない冗談。
 wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 まあ、こうして冗談を思い浮かべられるのも【思考加速】のおかげだな。
 龍人の動きもスローに見えている。
 まあ、体は動かないわけで……この差で酔うやついるかもな。
 ……オレは酔わないぞ? オレが酔ったら意味ないだろ。

『――『龍撃』』
「――『晶壁』」

 オレは龍人の突進を防ぐように、『晶壁』を3枚出した。

 ――バキン! …………バキン!…………

 そして最後の一枚が

 ――バキンッ!

 ……破られた。


 ま、その先にオレはいないんだけどな。
 とっくに避けたに決まってるだろ? なんで馬鹿正直に受けなきゃならんのよ?

 龍人はそのまま直進し、川の向こう岸に着地した。着弾と表現する方がいいかもしれない。
 細身だから、敢えて例えるなら……ミサイルかな。

 しかし、これではっきりした。

「『龍撃』はただひたすら、一直線上に進む攻撃。止まるのは……着地時か?」

 ほんと、ミサイルみたいな能力だよな。
 まあ、さっきみたいに、オレが抑えている間も進み続けているのを見た限り、ミサイルとか大砲なんかよりよっぽど優秀なんだけど。
 ミサイルなんかは、何かに当たればその場で爆発だからな。
 対個人においては龍人の方に分配が上がる。対集団においてはミサイルの方に分配が上がる。

『その通りだ』
「……毎度思うんだけど、お前ら、手の内を明かし過ぎ……というか、質問に正直に答えすぎじゃねぇの?」
『他の魔物どもの大半は、お前たち『人』に対して舐めきった態度を取っているからな。手の内を曝したがるものだ』

 舐められている……ねぇ。
 その割には、大半は意味なかったけどな。

 隊長級にでもなれば、ちょっと苦戦したがな。隊長級になれば知能があるからあまり自分で暴露しなかったけどな。

「お前も、そう・・なのか?」
『いや、私は違う。私は、自分の信じる道を進んでいるのみ』

 ……武士道精神みたいなものか。
 それはそれで構わないんだけどさ。その精神にオレが付き合う義理はないしな。

「別に、オレはお前の精神に付き合う気はないぞ?」
『ああ、別に構わない。自分の精神に他人まで巻き込みはしない。それもまた、我が道也……』
「そうかい」

 武人としては、尊敬に値するかもな。
 一つの道を突き進む。それは仏道においても阿修羅道においても、共通事項だ。
 オレは別に武人じゃないからいいんだケド。

『……ただ、盟主の命令は絶対だ』
「なぜ?」
『盟主に力をもらったからこそ、龍人へ至った経緯がある以上、恩がある。恩に忠義で返しているのです』
「お前の道は、『強さを追い求める道』か」
『ああ、そうだ、そうだな。……私は昔から……記憶のあるうちから強さのみを追い求め、武者修行に励んできました。その過程で、封印されてしまったわけですがね』

 なるほど。
 強さを追い求めるあまり、脅威と認識され、封印されてしまったわけか。
 強さを追い求めるせいで、逃げはせずに立ち向かったのだろう。

 結果、封印された、と。
 
 封印という手段を取られるって……どんだけやらかしたんだ、こいつ?
 どうせ、あれだろ? 『人』の精鋭連中を殺しまくったんだろうな。

「それじゃあ、再開するか?」
『ええ』
「――『晶塊しょうかい』」

 龍人の上に、水晶の塊を出現させる。
 その先端は、棘が幾本も生えている。中でも1本、一際長いものがあった。

『――『龍力りゅうりょく』』

 龍人の魔法の発動に呼応し、龍人の体が膨張した。
 これは確認済みの技術《スキル》だ。
 
 そんな龍人の上から、水晶の塊が龍人を串刺しにしようと落ちてくる。

『ふん!』

 龍人は、両手で水晶の塊から生えた長い棘を掴んだ。『晶塊』の落下が止まる。
 そして、そのまま水晶の塊を前へ叩き落とした。

 しかし、水晶が地面に当たる寸前で、オレは塊をすべて『晶弾』に変化させる。

『!』

 間髪入れず、無数の『晶弾』が龍人目掛けて迫る。

『――『龍鱗りゅうりん』』

 しかし、『晶弾』はすべて弾かれる。
 防御力上昇系魔法か。これもすでに確認されている。

 ……魔法を使って防いだ。つまり、それを使わなければ『晶弾』は有効?
 ただ、どうやってこれを突破するのか。
 龍人が魔法を使った瞬間、龍人の体が硬直していた。おそらく……

「――がっ!!」

 途端、電撃のような頭痛が、一瞬だけ走った。



 
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