上 下
40 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜

第39話  月曜日

しおりを挟む


 月曜日になってしまった。

 月曜日……。それは、社会人たちが最も忌み嫌う日。

 だが……オレはそうじゃない。

 何も感じない。
 楽しみでもない。
 萎えてもいない。

 ブルーになってないだけ、いいのかもな。

 でも、昨日は本当に暇だったな……。
 スマホはない。
 本もない。
 ラノベがないのが大きい。だってここ、ラノベの世界だし。

 あーー。日曜日が終わったのを嬉しいと感じる……。
 なんたることか……。



「みなさん、おはようございます。休みはどうでしたか? バイト先はどうでしたか? 今週も頑張っていきましょう! 1、2時間目は魔術防御ですね。グラウンドに体操服で集合するように、お願いします」 

 実践魔術系はやはりグラウンドか。
 ま、室内じゃ何が起こるかわからないからな。体育館で火の魔法でも使って、壁に当たったらどうなるのか。
 答えは、当たったところが焦げる。
 自分で生み出した火は制御できるが、触れている時点でその場所は焦げる。
 広がらないようにはできるらしいがな。



 体操服に着替えてグラウンドに着くと、見慣れない物体があった。
 大砲のような、テニスのボール射出機みたいなやつ。
 しかも、大量に。少なくとも10台はあるな。20はない。 

「──では、授業を始めます。金曜日に、攻撃魔法の適性がない人はやったと思います。アレです」

 あーー、そういや、あんなの使ってた気がする。威力の弱い『風弾ウィンドバレット』を出すやつね。

「1発も受けなければ、何をしてもいいです。避けるもよし。武器で弾くもよし。魔法で迎撃するもよし。武器が必要な人は、このあとすぐに武器庫に取りに行きますので、付いて来てください」

 今回は棍でいいかな! 一番使いやすいし。



 武器庫にて、武器を拝借。
 オレは棍。ターバは剣を2本……双剣だな。ヤマルは槍。
 他の奴らも思い思いに武器を選び、グラウンドに戻った。



「ライン、あそこ空いてるし、あそこでやろうぜ」
「おお、ホントだ。そうするか」

 空いていたのは、端っこのものだ。

「えーと、ここに手を当てて、魔力を注げばいいのか?」
「そう! ちょっと入れるだけですぐに満タンになる。満タンに入れないと動かないけど」
「なるほどな。じゃ、ターバ。白線のところに立ってろよ。立ったら魔力を注ぐから。狙いは定めなくていいんだっけ?」
「それが勝手に狙ってくるから大丈夫」
「そうか」

 それはそれは。なかなか有能ですな。

 ターバも位置についたし、魔力を注ぐとしよ……もう満タンだ。
 ほんのちょびっとしか入れてないんだけど。

「よし、入れたぞ!」
「おう!」

 ターバは双剣を構えた。
 身体強化は発動していない。

 すると、装置から『風弾ウィンドバレット』がターバめがけて発射された。

 1発目。てんで的外れだ。頭上をかすることなく飛んでいった。

 2発目。これはターバを真正面から捉えた。だが、左手の剣を一閃させると、『風弾ウィンドバレット』は消え去った。



 10発目から、魔法と魔法の間隔が狭くなった。だが、なんの障害にもならない。

 
 そして、20発すべての魔法をすべて防ぎ切った。

「どんなもんよ? 1学期はこんなもんだってよ。2学期からはもう少し難しくなるらしい」
「ふーーん。まあいい。次はオレの番だな」

 魔力を注ぎ、白線の上に立つ。そして、棍を構える。ダーバを真似、身体強化は発動させない。
 先ほどのターバの時と同じように『風弾ウィンドバレット』が射出される。

 1発目。顔の真正面だ。棍を振るい、掻き消す。

 2発目。これは足元だ。これも、棍を振るって搔き消す。



 そして、10発目から魔法の間隔が狭くなった。なんの問題にもなりゃしねぇがな!


 
 19…………20っと!
 よぉし、終わり! 全然問題はないな。余裕のよっちゃんとやらだ。てっちゃんだっけ?

「ターバ、これ、簡単すぎねぇか?」
「……周りを見てみなヨ」

 ターバが小声でそう言うから、周りを見てみた。
 ……何人か、完全に避けきれていないようだ。でも何人かは全て捌ききれている。
 スゥやヤマルがいい例だ。

「なるほどな。理解理解」
「ま、これでもトレーニングにはなるからいいだろ」
「そうだな。でも、余裕過ぎる……」
「我慢だ我慢!」

 そう……だな。
 今学期を我慢すれば……いや、次学期でも余裕だろう。今の状態であくびが出そうなんだから。

「あ! いいこと思いついた」
「なに?」
「ターバ……縛り入れようぜ」
「縄でどこを縛るんだよ」
「違う違う。縛りってのは制限って意味。動きに制限入れようぜってこと」
「なるほどな。……たしかに面白そうだ。で、どんな制限を?」

 こういうときに入れる縛りはいくつか思い浮かぶ。
 1つ目は、行動範囲の制限。
 2つ目は、使用部位の制限。

 とりあえず思い浮かんだのはこれらだ。

 …………1つ目の「行動範囲の制限」がいいだろう。

「行動範囲に制限を入れようか。そうだな……一歩も動くの禁止とかどうだ?」
「異議なし。面白そうだ。言い出しっぺのライン、お先にどうぞ」
「では、お言葉に甘えて」

 ターバに魔力を注いでもらい、白線の上に立つ。装置から白線まで、およそ20メートル。

 よし、来る!
 もちろん、身体強化は発動していない。



 すべて棍で掻き消すことができた。

「――順調ですね。魔法に対抗するには、武器に魔力を込めたほうがいいですよ。これは弱い魔法なので問題はないですが、『火球ファイアーボール』とか『石弾ロックバレット』なんかを迎撃するとき、魔法を込めていない武器だと、武器が傷つくのでね」
「「わかりました!」」

 武器に魔力を注ぐ、か。
 やってみるか。
 身体強化で感じた、血管のようなもの。あれが武器にも流れていくように…………よし。できた。

「ライン、できた?」
「おう! ……ターバもできたようだな」
「意識したら簡単にな」
「自習のとき、ヤマルに教えようか。破壊力が増すしな」
「そうした方がいいな」

 見た感じ、先生はさっきのことを話していないようだ。できているようすもないしな。





 次は回避か。体操服のまま4階の回避教室に移動する。

「皆さん、安心してください。この回避の授業でやることは3年間変わりませんが、一番楽しいと評判です! ……そこで、これを1人1個持ってください」

 そう言って配られたのは、

「ボール……?」

 それは、ゴムボールだった(この際、イメージするゴムなのかは置いといて)。

「これを、投げるんです。一人が的になって、その人に向けて投げます。その人は、それを避けるだけ。出席番号1~20はあちらに。21~40はこちらの壁に集まって、やってください。順番とかは任せます」

 広さが2クラス分あるからな。長方形の短い辺に集まるのか。ちゃんと線が引かれている。

 投げる方も投げられる方も楽しそうだ。投げれるのは一人1回まで。つまり、19発。

 あえて的外れな場所を狙うのもいいな。クククッ。嗚呼……最っ高に楽しみだ……っ!



 ……ようやくオレの番だ。
 2人やったところで、一人1回投げるのはつまらないとなったので、時間を決めることになった。
 その時間内ではいくら投げてもよし。ゴムっぽいから跳ね返ってくるしな。

「ライン、用意は?」
「問題ない。もういける」
「じゃぁ……3……2……1……0!」

 アラームと同じ働きの魔法具を起動し、スタートだ。
 もちろん、身体強化はなし。
 授業で使うこと自体、あまりないんだけどな。

 同時に3発……。だが、オレには当たらない。的外れだ。
 それに続くかたちで4発目以降が投げられる。複数人が投げてくるせいで、同時に攻撃されるから厄介だ。
 これを全部避けることは、ほぼ不可能とみていいだろう。……身体強化なしでもありでも、な。

 

 終わった…………。一回だけでもさすがに疲れる。
 スコア――当たった回数は8回。少ないほうだ。的外れな場所に投げられたりもしたが、避けた方向に投げられたりしたから、当たっちまった。


 
 その後、手加減など微塵もなく――男女関係なく――全力で投げた。
 みんなそうだから問題にはならなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...