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第二章 〜水晶使いの成長〜

第20話  始めまして

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「…………ん……くぁ……。朝か……」

 時間は……まだ6時か。6時半からご飯食べるって約束したから、もう起きるか。

 顔を洗い、昨日ドアの前に置かれていた制服に着替えた。

 ……少しシャワーして行こうかな。  
 さっき着た制服をまた脱いで、シャワーを浴びた。

 洗顔だけじゃ目は覚めなかったけど、シャワーを浴びたら覚めるな。これからは朝にシャワーを浴びるようにしよう。
 シャワーを浴びたら、時刻は6時20分。少し早いけど、もう行こうかな。

 食堂に着くと、ちらほらと人がいた。
 あら、もうロイズがいた。さっさと朝ごはんを取ろうか。

 サラダ、野菜スープ、パンを3つと、オルオの実1/8を2個、牛乳(もどき)。

「おはよう、ロイズ。早いな」
「おはよう、ライン。楽しみで目が覚めた」
「そうか。今は25分……そろそろ3人も来る頃かな」

 オレとしては、牛乳(もどき)がどんな味なのか気になるところだ。
 もう一個の、この学校に食料を提供している村が牛型の魔獣の育成に成功したらしく、こうやって牛乳が飲めるのはラッキーだ。
 牛型の魔獣の家畜化に成功した数少ない事例で、ここで人に慣れた牛型の魔獣──バモを他の村に送り、繁殖させる計画があるらしいが……そこまでたくさん増えないから遅々と進んでいるらしい。
 ……と、ロイズから聞いた。

「全然知らなかったな。オレの村じゃ、バモなんかいなかったし、オレも見たことないし」
「私はその村に行ったときに教えてもらった。肉にもなるし、雌は乳がとれる。ただ、とても力が 強くて気性が荒いからなかなか難しいところ」

 気性が荒いのは困りものだな。
 でも、牛ってそもそも気性が荒い生き物だった。確か、野生化した牛はとても凶暴って聞いた。
 それと同じか。

「おはようございます、ロイズ、ラインさん」
「おはよう、二人とも」
「……おはよう」

 ノヨ、ミルはいつも通りだが…………ゴース、お前……朝弱いのか。 
 朝ごはんはそこそこ盛ってるから、食べれば目が覚めるのかな。それか、これでも少なめなのか……。

 ノヨは昨日と比べると少なめだな。昨日も少なかったけど。
 ミルは……肉多いな。朝からなんで肉が食えるのか……。

 あれ、米ももどきなのか? 見た目も味も変わんないけどな。

「食べよう」
「そうだな」
「「いただきます!!」」

 ん~! やっぱり美味い!! 牛乳(もどき)も美味い! 牛乳と変わらない! もう、もどきは付けないでおこう。

「みなさん、明日はどうするのですか?」
「ああ、バイトはないだろうから、ダラダラとしようかと……」
「オレは森で体を動かそうかと……」
「私も、ダラダラする」
「なにしよう……」

 ゴース、少しは目が覚めてきたかな。オレ以外ダラダラ派かよ。

「なら、みんなで領都に行きませんか? 服などの生活用品を買いたいのですが……」

 あ~、そういや、そうだった。バイトの帰りに買おうかとか考えてたが、ここで買うのもありか。

「オレは行きたいな。服が欲しいから。あと小物も」
「ラインがそう言うなら、僕も」
「私も」

 ゴースは頷いた。
 朝飯食っても目は覚めないのか……? 時間経過によって覚めるのかな。
 意思疎通はできてるからいいけどさ。

「なら、早速明日行きましょう! 朝ごはんはここで食べて……、昼は向こうでいいですか?」

 全員、同意の印として頷いた。
 休日は、昼も食堂は空いているが、町で食べるのもいいだろう。

「なら、明日の朝は今日と同じ時間で。休日も平日と時間は変わりませんからね」
「了解」
「わかった」

 楽しみだ。明日が待ち遠しいぜ。何買おうか。

 確か、手持ちは銀貨3枚、半銀貨6枚、銅貨、半銅貨が数枚か。銀貨、半銀貨は、出発前に近衛騎士と冒険者たちがくれたものだ。
 服の予算は半銀貨数枚か。2、3着ほど買おうか。
 選んでもらおう。オレのファッションセンスは絶望的だからな。ドヤ。

「「ごちそうさまでした!!」」
「今日は私が集める」

 みんな、ありがとう、と礼を言ってから重ねる。

「9時から授業が始まるから、それまで部屋にいろってことか」
「教室にはいつ行ってもいいらしいよ?」

 いつ行ってもいいと言われても……することないしな。
 とりあえずは部屋に戻って、ゆっくりとしておこうか。

「それじゃ、オレは部屋に戻るよ。それじゃ」

 部屋に戻り、とりあえず、8時までゆっくりすることにした。
 今はちょうど7時。自己紹介で言うことでも考えておくかな。
 シンプルでいいよな、こういうのは。





 8時か。そろそろ行こうかな。
 部屋を出て、鍵をしてポケットに入れた。鍵はベルトと繋がっているため、そうそう失くさない……はずだ。

 10分ほど歩いて、ようやく教室に着いた。
 どうせ食堂と同じで、ほとんど人はいないだろ。そう思っていた。

 ──多分オレ、1番最後だわ。

 え~と、前に、どこに座ればいいのか、書いてある。
 最後列の、窓から2番目……番号順か。席替えとかするのかな。頻度は月一でお願いします!

 とりあえず、座っておくか。
 他の奴らは何人かグループを作って打ち解けている。
 オレと同じく、席に座っているだけのやつも何人かいるけど。

 隣の──40番の──方は座ってるわ。気まずいなぁ。
 座ってるだけならともかく、寝てるし……。女子だし。



 そして、この地獄のような1時間を、なんとか乗り切った。
 忍耐力がカンストするんじゃないかと思ったわ。そんなんないけど。
 まあでも、過去1番耐えた気がするな。

「はい、みなさんおはようございます。初日から遅刻ゼロ! 素晴らしいですねぇ。えー、今日の予定なんですけど、なんと、午前だけで終わりです。自己紹介をして、いろいろ質問に答えたり、連絡事項を伝えて解散となります。では早速自己紹介からしましょうか」

 ラッキー! 
 午前で帰れるんだ。あー、でも、帰ったところですることないしな。
 領都は明日行くし。

「えー、では、僕から。名前はクーラ・デインです。歳は24歳。得意な武器は剣で、攻撃魔法は使えません。独身、彼女なしです。1年間よろしくお願いします」

 へー、彼女なしか。どうでもいいけど。でも、あの顔で彼女なしは……どうなんだろ?

 結構モテそうだけどな。ほら、女子の何人かはハイエナの目をしてるし。
 ハイエナは言い過ぎか。狙えたら狙おうか、ぐらいの目だから、罠を仕掛ける密猟者かな? よくわからんけども。

「では、1番の方から順番にどうぞ! 何を言ってもいいですからね。時間制限もないので。では、どうぞ」

 1番の奴から順に名前を名乗り、戦闘タイプを言い、一言二言程言って終わり、の流れだった。
 戦闘タイプは五分と五分だな。近接型の女子も、遠距離型の男子もいた。
 オレと同じで、両方できるやつはいなさそうだな。

「20番、スゥ・フォナイ。遠距離型で、火の属性特化です。よろしく」

 紫の髪、紅い瞳。間違いない。
 遠距離試験にいた、凄いやつだ。

 目の色はわからなかったが、あの髪の色、髪型は間違いないな。
 火の属性特化というのも記憶と結びつく。スゥ・フォナイと言ったか。覚えておこう。

 それからまた何人か自己紹介をし、オレの番になった。
 ……にしても、美形が多いんだな、この世界は。気づいてはいたけど。まあ、いいや。
 あ……喉がカラカラだ。

「あ゛あ……ん゛ん! ライン・ルルクスです。水晶の属性特化で、近接も遠距離も戦えるけど、魔法も使った近接戦が1番得意です。よろしくお願いします」

 スゥ・フォナイが驚いた顔を一瞬だけしたのが見えた。属性特化のお仲間がいて驚いたのだろうか。
 この後、少し声をかけてみるかな。向こうもオレに興味を持ったようだし。

「はい、全員終わりましたね。では、少し休憩をして、いろいろ話そうと思います。休憩時間は、30分です」

 さてさて、話を……。……無理だ、囲まれてら。
 今のところは諦めよう。

 すると、オレのもとにも1人、やって来た。

「えと、ラインって言ったよな」
「ん? ああ。確か……ターバ・カイシ……だったか?」
「おお、よく覚えてたな」

 そりゃ、メモしてるからな。顔付きで。

 ターバ・カイシ。白色の髪、若干ツンツンヘアー。硬そうな髪だ。
 踊りが得意そうな見た目で、実は踊りが好きらしい。見た目が先か、趣味が先か。

「で、何か用?」
「いや、他の人らはもうグループができてるから。そこで、一人でおったから、俺も話す人いないし、話しかけてみようかな、と」

 ぼっち+ぼっちはぼっちではない。話しやすそうだし、いいか。



 話してみると、結構気が合った。ノリがいいやつで、楽しかった。

 クラス最初の友達ができた。

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