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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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繰り返すが嘘は言って無い。ねーさんはゴリゴリのイーサン推しなのだから。
エメラインだけでなく、トラヴィスの顔からも表情が無くなった。
そして、周りがドン引きしているのも分かった。
例外といえば、クリフは身体を丸める様にして声も出せないくらい笑い死んでおり、レティシアは教会の神の御前に居るかのように、両手を天に差し出して歓喜の涙を流していた。
(うん、そろそろいいかな・・・。)
「誤解が解けたところで、リリー!」
「は、はい!」
「こっちに来てください。」
私は皆が呆然としている中、リリーに手招きした。戸惑いながらもリリーがこちらに走って来る。
「ア、アリアナ様。何でしょうか?」
「お願いがあります。聖魔術でエメライン様を浄化してみてください。」
「ええ!?」
リリーは目を見開いて、硬直したまま横たわるエメラインに目線を送った。
「エメライン王女は精神魔術にかけられている可能性があります。」
「でも、でも・・・私では・・・。」
リリーは不安げに眉根を寄せた。そすると、
「アリアナ嬢、エメラインが精神魔術にかけられているなど有り得ない。」
目元をぴくぴくと引きつらせながら、トラヴィスが私の横にやってきた。
(あ~、これはかなり怒ってるかな・・・はは)
さっきのはちょっと調子に乗り過ぎたかもしれない。
トラヴィスは私の耳元で「覚えてなさいよっ!」と素早く囁き、もう一度表情を作り直すと、
「エメラインの持つ魔力は恐らく私についで強い。普通の術師では彼女に精神魔術をかけるのは不可能だ。」
確かにそうだ。魔力の少ない者から、魔力量の多い者へ精神魔術をかける事は出来ない。また解除するのも同様なのだ。ただし通常ならばだ。
「トラヴィス様。最近、帝城内で精神魔術を用いた犯罪が起きたとお兄様から聞きました。もしかして何か盗まれたのでは無いですか?。」
「・・・確かにあったが国家機密だ。それに、この件とは関係・・・」
「関係無い」と言いたかったのだろう。でもトラヴィスは途中でハッと気づいたような顔をした。
「まさか・・・あれを使ったのか!?」
「今、私の周りで起きてる騒動と帝城での犯罪では深刻度は全く違いますけど、『精神魔術』というキーワードで繋がっています。しかもエメライン王女まで巻き込んでとなると、もう国家レベルの問題なのでは?。一体、何が盗まれたのか教えて貰えませんか?。」
トラヴィスは苦々し気に目を逸らせた。
「どうして気付かなかったんだろう・・・、すまないアリアナ。私がもっと早く対処すべきだった。盗まれたのは宝物庫にあった普段使わない宝石類や宝剣等だが、その中には確か魔力増幅の宝玉があった。あれは戦争時などに戦闘用でしか扱われなかったから、まさかこんな使い方をされるとは思っていなかった。」
魔力増幅の宝玉!?
(おおお!めっちゃファンタジーっぽい!)
ときめくワードにテンションが上がったが、今はそんな場合ではない。
「もしかして、その宝玉を使えば自分より魔力量の多い相手に精神魔術をかける事が可能なのでは無いですか?」
「恐らく・・・。」
トラヴィスは苦々し気に眉を寄せ唇を噛みしめた。この皇国の皇太子として責任を感じているみたいだ。イケメンだと落ち込んでる姿も絵になる。中身があのすっ飛んだねーさんとは思えない。
「エメライン王女が精神魔術をかけられているとしたら、魔力量の劣るリリーに浄化は不可能です。でも本当に精神魔術下にあるのかどうか確認はできるのでは?。浄化の方法は後で考えましょう。」
何が起ころうと、まずは切り替えて行動するのが私のモットーだ。
「・・・分かった。ではリリー嬢、エメラインの浄化を頼む。」
「はい、わかりました。」
私は振り替えってイーサンを見上げた・・・と、あれ?イーサンが居ない。
「捕縛を解くのか?」
「うわっ」
耳元で聞かれて私は飛び上がった。全然気づかない内に、イーサンが私の真横に移動していたのだ。
「きさまっ!」
クラークが私の手を引っ張って自分の後ろへ隠し、ディーンが身構えた。
「騒ぐなよ、小物。聖魔術とやらをかけるんだろう?。俺の捕縛魔術を解かなくて良いのか?。」
エメラインだけでなく、トラヴィスの顔からも表情が無くなった。
そして、周りがドン引きしているのも分かった。
例外といえば、クリフは身体を丸める様にして声も出せないくらい笑い死んでおり、レティシアは教会の神の御前に居るかのように、両手を天に差し出して歓喜の涙を流していた。
(うん、そろそろいいかな・・・。)
「誤解が解けたところで、リリー!」
「は、はい!」
「こっちに来てください。」
私は皆が呆然としている中、リリーに手招きした。戸惑いながらもリリーがこちらに走って来る。
「ア、アリアナ様。何でしょうか?」
「お願いがあります。聖魔術でエメライン様を浄化してみてください。」
「ええ!?」
リリーは目を見開いて、硬直したまま横たわるエメラインに目線を送った。
「エメライン王女は精神魔術にかけられている可能性があります。」
「でも、でも・・・私では・・・。」
リリーは不安げに眉根を寄せた。そすると、
「アリアナ嬢、エメラインが精神魔術にかけられているなど有り得ない。」
目元をぴくぴくと引きつらせながら、トラヴィスが私の横にやってきた。
(あ~、これはかなり怒ってるかな・・・はは)
さっきのはちょっと調子に乗り過ぎたかもしれない。
トラヴィスは私の耳元で「覚えてなさいよっ!」と素早く囁き、もう一度表情を作り直すと、
「エメラインの持つ魔力は恐らく私についで強い。普通の術師では彼女に精神魔術をかけるのは不可能だ。」
確かにそうだ。魔力の少ない者から、魔力量の多い者へ精神魔術をかける事は出来ない。また解除するのも同様なのだ。ただし通常ならばだ。
「トラヴィス様。最近、帝城内で精神魔術を用いた犯罪が起きたとお兄様から聞きました。もしかして何か盗まれたのでは無いですか?。」
「・・・確かにあったが国家機密だ。それに、この件とは関係・・・」
「関係無い」と言いたかったのだろう。でもトラヴィスは途中でハッと気づいたような顔をした。
「まさか・・・あれを使ったのか!?」
「今、私の周りで起きてる騒動と帝城での犯罪では深刻度は全く違いますけど、『精神魔術』というキーワードで繋がっています。しかもエメライン王女まで巻き込んでとなると、もう国家レベルの問題なのでは?。一体、何が盗まれたのか教えて貰えませんか?。」
トラヴィスは苦々し気に目を逸らせた。
「どうして気付かなかったんだろう・・・、すまないアリアナ。私がもっと早く対処すべきだった。盗まれたのは宝物庫にあった普段使わない宝石類や宝剣等だが、その中には確か魔力増幅の宝玉があった。あれは戦争時などに戦闘用でしか扱われなかったから、まさかこんな使い方をされるとは思っていなかった。」
魔力増幅の宝玉!?
(おおお!めっちゃファンタジーっぽい!)
ときめくワードにテンションが上がったが、今はそんな場合ではない。
「もしかして、その宝玉を使えば自分より魔力量の多い相手に精神魔術をかける事が可能なのでは無いですか?」
「恐らく・・・。」
トラヴィスは苦々し気に眉を寄せ唇を噛みしめた。この皇国の皇太子として責任を感じているみたいだ。イケメンだと落ち込んでる姿も絵になる。中身があのすっ飛んだねーさんとは思えない。
「エメライン王女が精神魔術をかけられているとしたら、魔力量の劣るリリーに浄化は不可能です。でも本当に精神魔術下にあるのかどうか確認はできるのでは?。浄化の方法は後で考えましょう。」
何が起ころうと、まずは切り替えて行動するのが私のモットーだ。
「・・・分かった。ではリリー嬢、エメラインの浄化を頼む。」
「はい、わかりました。」
私は振り替えってイーサンを見上げた・・・と、あれ?イーサンが居ない。
「捕縛を解くのか?」
「うわっ」
耳元で聞かれて私は飛び上がった。全然気づかない内に、イーサンが私の真横に移動していたのだ。
「きさまっ!」
クラークが私の手を引っ張って自分の後ろへ隠し、ディーンが身構えた。
「騒ぐなよ、小物。聖魔術とやらをかけるんだろう?。俺の捕縛魔術を解かなくて良いのか?。」
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