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第5章 悪役令嬢は絡まれたくない

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「アリアナに対する嫌がらせは、全然、些細な事なんかじゃないぞ!」

クラークが目をむきながら真剣な口調で言ったが、とりあえずそれは無視した。

「だって、術をかけられた方達の、わたくしに対する攻撃って、噂が元の作り話ばかりでしたし、ほとんどが的外れでした。・・・ノエル様はちょっと、方向性が違いましたが。」

私がそう言うと、ソファに座っていたノエルがビクッと身体を震わせ、「ごめんなさい・・・。」と言った。

(いかん・・・また顔が熱くなってきた。)

熱烈告白の後遺症だ。私の様子を見た、パーシヴァルが、

「あのさぁ、もしかしてアリアナ嬢って、結構ちょろい?」

と、馬鹿にしたように笑った。

「ちょ、ちょろいってどういうことですか!?」

私はさらに顔に血が上って、パーシヴァルを睨んだが、彼は全く気にする素振りも無く、

「それに、あんな目にあって気にしないって、どういう神経の太さしてるの。繊細な僕には羨ましいな。」

そう言って、へらへら笑った。

(こいつ、皇子じゃなければ殴ってやりたい。)

私は机の下で、拳を握った。そして、気を取り直す様に咳払いをして、話を続けた

「でも、わたくしに嫌がらせをするだけなら、精神魔術などと言う、大袈裟な事をするまでも無いかと・・・。それに、こんなやり方、すぐバレます。実際、違和感だらけでしたもの。モーガン先生はいったい何を考えているのでしょうか・・・?。」

なんだかそれが、不気味だった。何か他の企みが隠されているような気がしてならなかったのだ。

「とりあえずは、自分達が精神魔術を食らわない様に、気を付けるしかないな・・・。モーガン先生が俺達より強い魔力を持っている可能性もあるから。それとアリアナ嬢がターゲットなら、誰かが常に一緒に居た方が良いと思うのだが。」

クリフがそう言うと、

「任せてよ!。私達、エメライン様のお世話係をやめるから、明日からはアリアナ様から離れない様にする。」

ジョーは胸を叩いた。するとクラークが思い出したように、「あっ」と声をあげた。そして複雑そうな顔で頭を掻いた。

「それにちょっと関わる事なんだが・・・。」

となんだか歯切れが悪い。

「どうしたのですか?お兄様。」

私が先を促すと、

「実は、トラヴィス殿下から、アリアナを秘書にしたいという申し出があった。」

「ええっ!!」

私を含め、皆が驚きの声をあげた。ディーンや、クリフの二人なんか、立ち上がっている。

「な、な、なんですか?それは!。今の生徒会って確か、皇太子殿下の護衛も兼ねているんですよね!?。魔力の無い、わたくしには到底無理ですよ!。」

だから、今の生徒会は、学力にプラスして、魔力の強い者が集められているのだ。
兄のクラークとディーン。トラヴィスの母違いの弟で第二皇子のパーシヴァル。神セブンの一人で攻略者のケイシー・バークレイ。それと断わったけどクリフだ。

「殿下が言うには、あくまで私的な秘書だから、生徒会役員と言う訳ではないらしい。皇国の公務もあって忙しい方だから、身の回りの雑用をこなしてくれる秘書が必要だって言うんだ。」

(ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!?)



『悪役令嬢役はどうしたの?』



私の頭の中に、再びあのトラヴィスの言葉がリフレインする。


(冗談じゃない!。あんな胡散臭い皇太子の傍になんかいられるかっての!。それにエメラインが、烈火の如く怒り出すんじゃないの!?)

「お兄様、お断りしてください。どうして、わたくしなんですか!?。無理です。というか、絶対嫌です!」

「僕も最初断わったんだが、トラヴィス殿下が引かなくてね・・・。是非にと言われて断り切れなかったんだ。殿下がこんな風に我を通すのは珍しい事だよ。それに、今の状況を考えると、その方がアリアナの安全を確保できるかもしれない。生徒会室には僕もディーンも居るからね。」

「そ、そんな・・・」

(噓でしょ!?」

「アリアナ様!。皇太子殿下の秘書だなんて、とても名誉な事ですわ!。それに、前から私、アリアナ様の能力を、この学園の生徒会に活かさないのは勿体ないと思ってました。もちろん、私も生徒会に入りますわっ!」

ミリアが目をきらきらさせてそう言った。

クリフがその様子を見て、溜息をつきながら、

「仕方ないな、俺も生徒会に戻るか」

と言った。

「・・・その方が、そばで守れるのは確実だな。」

固い表情だが、ディーンまで、そんな事を言う。

「グローシアやジョー、レティは生徒会室のティールームに居られるよう、殿下に頼んでみるよ。君達も魔力の強さや魔術の腕は抜群だからね。生徒会の警備も兼ねる事が出来る。」

「やったー!。生徒会のお菓子はきっと美味しいわよね!?。それにケイシー先輩と毎日会える!。」

ジョーがガッツポーズをする。

「凄いですわ!。皇太子殿下とケイシー様の肖像画も、お近くで描くことが出来ますのね!?。マリオット先生は授業中に描いてますし、これで、神セブンをコンプリートですわ!」

レティは両手を組んで、野望に満ちた顔で天を仰いだ。

「クラーク様と共に、アリアナ様をお守りできる・・・。」

グローシアはポッと頬を赤くして、ニマニマしていた。

私の意見を無視して、話がどんどん進んでいく。

(な、なんで・・・?)





そして次の日、私はトラヴィスと、生徒会室の彼専用の個室で、二人っきりで面会していた。
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