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第5章 悪役令嬢は絡まれたくない

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「僕にも、クリフにも、ディーンにもパーシヴァル殿下にも、思わせぶりな態度をとってさ!。君みたいな人を悪女って言うんだよっ!」

「おい、ノエル。やめろ!。」

流石にクリフがノエルの口を押えた。

(悪女・・・私が悪女!?。悪役令嬢じゃなくて!?)

駄目だ、まだ脳みそが上手く動かない。私は固まったまま、口をぱくぱくさせた。

「ノエル、悪女って言うのは、もうちょっと色気が無いと、無理だと思うぞ。」

と隣でパーシヴァルがヘラヘラ笑っているのを見て、やっと我にり、一瞬パーシヴァルをひっぱたきそうになったが、ぐっとこらえた。とは言え、パーシヴァルを睨む事は忘れなかったが・・・。

「と、とりあえず玄関で騒いでいると、外に聞こえます。リビングに入ってください。」

クリフが後ろからノエルの口を押え、パーシヴァルが引っ張る様にして、場所を移動した。

リビングに入ると、今までのやり取りが聞こえていたのだろう、皆が椅子から立ち上がっていた。そして、只ならぬ様子を見て、私は慌ててノエルを庇う様に、前に出た。

「ちょ、ちょっと!。グローシア、フォークを構えるのはやめて!。ミリアも、手から火花を散らすのはやめて頂戴!。」

「処刑します・・・。」

「だから、転職は駄目だって!グローシア。」

私はグローシアの手から、フォークを奪い取った。そして、

「ミリアもやめて!。」

ミリアの方に向き直ると、彼女の腕を抑えた

「止めないで下さい、アリアナ様・・・。愚弟の始末は、私が責任をもって致します。」

ミリアの目が物騒な光を放っている。ヤバい、本気だ。

「お、落ち着いて、ミリア!。これには訳があるの。今日、一番に相談したかった事なんです。多分、ノエル様は、精神魔術にかけられているのです。」

「精神魔術!?」

皆に、驚愕の表情が浮かんだ。

「そうです。恐らくマーリンさんや、エルドラさんも。今までは只の予想でしたが、ノエル様の様子を見て、確信に変わりました。」

そうして、私は皆に、クリフと話し合っていた事を説明した。その間、暴れるノエルを男子達が押さえつけていた。


「・・・では、ノエルは精神魔術のせいで、アリアナ様に暴言を吐いたと言う事ですか・・・。」

そう言いながら、ミリアは軽蔑したように、自分の弟を横目で睨んだ。

「一発殴れば、治るんじゃない?。」

ジョーが拳をバキバキ鳴らす。

「いいえ、精神魔術ってそんな単純なものでは無いみたいですよ。」

リリーがジョーの腕を、急いで抑えた。

「でも、一体ノエル様は、どこで精神魔術をかけられたのでしょう?」

レティシアが暴れるノエルを覗きこみながら首を傾げた。

「それについては、グローシアに聞きたい事があるの・・・って、グローシア!、ティーカップをノエルに投げようとするのはやめて!。」

額を押さえて天を仰ぎつつ、私は皆に、グローシアとノエルの受けている、不可解な補習について話した。


「ノエル様にかけられた精神魔法は、この補習に関係があると思います。」

「でも、グローシアは何とも無いのですよね。」

ミリアが首を傾げた。私は頷きつつ、グローシアに尋ねた。

「ねぇ、グローシア。補習の時に何か変わった事はありませんでしたか?。」

「補習に関しては、先生が狂ってる以外、特に気になる事はありませんでした。ただただ、二時間苦痛で、疲弊しましたが。」

グローシアは心底うんざりした顔で、そう言った。

「ただ、ノエルとわたくしの違いでしたら分かります。ノエル様は補習の後、モーガン先生の部屋へお茶を飲みに行きました。」

「えっ!?」

「わたくしも誘われましたが、早く寮に戻りたかったので、断わりました。ノエル様は毎日行っていたと思います。」

「そのモーガン先生の事だけど、面白い事が分かったよ。」

クリフはノエルの口を塞いだまま、ニヤッと笑った

「父から、尋ねた事に対する返事が、早馬で来たんだ。父もモーガン先生に関しては、気になっていたようだよ。その内容だが・・・、うわっ!」

クリフが説明しようとした時、突然ノエルが「うぉーっ」と叫ぶと、体を掴んでいる皆の腕を振りほどいた。

「えっ!」

「ちょっと!」

そして、凄いスピードで私に近づくと、私の肩を両手でがっしり掴んだのだ。

(ひっ!)

ノエルは、ぎらぎら光る眼を私に向けた。

「アリアナ嬢!。君が本当は誰が好きなのか、僕は知っている!」
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