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第4章 悪役令嬢は目を付けられたくない
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マズったなと思っていると、辺りががやがやと騒がしくなった。そして、
「何を騒いでいるのです?」
と、人垣の間から先生達がこちらに向かってきた。
エライシャ先生と、もう二人は知らない先生だ。きっと違う学年の先生だろう。二人ともかなり若い。
一人は若い男性。整った顔立ちで、優しそうな眼をしていた。そしてもう一人は、
(すっごい美女だぁ・・・。)
長くウェーブした髪を腰まで伸ばし、体つきが浮き出る様なタイトなドレスをまとっている。背も高くて、かなりスタイルが良く、雰囲気のある美人だ。
泣いていた女生徒達は、その先生を見ると、一瞬で静まり返った。そしてエルドラが「先生・・・。」とすがりつく様な目を彼女に向けた。
(ん?。この子達、この美女先生の事、知っている?)
けれど、美女先生は何事も無かったかの様に、薄っすらと笑みを浮かべて立っているだけだ。
私達を見て、ベテランであるエライシャ先生が、目をキッと吊り上げた。
「何があったのです?。せっかくの学園のダンスパーティで揉め事など・・・。恥ずかしいと思いなさい。」
女生徒達は気まずそうに、目を伏せた。
エライシャ先生は私の方を見て、眉をひそめたが、目は怒ってはいなかった。そして、
「アリアナさん。何があったのですか?」
私に向かってそう聞いた。
「すみません、エライシャ先生。ちょっとした誤解と、意見の相違がありました。先生方のお手を煩わせるような事となり、申し訳ないと思っています。」
頭を下げると、周りの人垣の中から、
「その、座っている子が、アリアナ嬢を叩こうとしたんだよ。」
と男子生徒の声がした。そして、
「そうですわ。それをクリフ様がお止めしたのですわ。」
と言う声も聞こえてきた。
「本当ですか?エルドラさん。」
エライシャ先生は厳しい顔をエルドラに向けた。
「で、でもエライシャ先生!。私達はアリアナさんの悪行を正そうと思って・・・。私聞いたんです!彼女は権力とお金の力で、ディーン様やクリフ様を自分の周りにはべらせているんです。それに、パーシヴァル様の弱みを握って、家来の様に操ってるんです!。取り巻きを作って、まるで自分が女王にでもなった気分でいるんですわ!。」
エルドラは叫ぶように言った。
エライシャ先生はそれを聞いて、顔をしかめた。
「その様な事、誰に聞いたのです!?」
「そ、それは・・・。」
エルドラが言い淀んで、辺りをチラチラと見回した。
(ん?)
エルドラの視線が、あの美人先生の方をかすめた様な気がした。すると、
「アリアナは、その様な事はしてない。」
いつの間にか私の横に戻ってきていたディーンが、響く声でそう言った。そして、
「そうです。この方が仰った事は、全てでたらめです。アリアナ様は、そんな人ではありません!。」
(リリー!)
気付かない内に、リリーやミリア達も私の周りにいて、私を庇う様にして立っていた。
ディーンは一歩前に出ると、冷たく燃える瞳を、女生徒達に向けた。
「私がアリアナと共にいるのは、友人として、・・・そして婚約者としても、彼女に惹かれているからに他ならない。私の行動を、気持ちを、勝手に捻じ曲げて解釈されるのは不愉快だ。」
彼は厳しい声でそう言い放った。
そして、その横ではパーシヴァルが、
「僕が、アリアナ嬢に弱みを握られてるって?。あはっ、面白いねぇ、それ。僕が彼女に、家来の様に操られるって、さぞかし愉快な光景だろうね。・・・ねぇ、教えて欲しいんだけど。僕は、いったいどんな弱みを持ってるの?」
いつもの軽薄そうな笑みが、逆に恐ろしく感じる。
今度はミリアが、横から私を庇う様に腕を回して、女生徒達を睨みつけた。
「アリアナ様は私達を、友と思って親しくしてくれています。私達も、そんなアリアナ様が好きで、いつも一緒にいるのよ。取り巻きなどと言う下品な言葉で、私達の友情を侮辱するなんて許せない・・・。文句があるのでしたら、私がいつでも相手になりますわ!。」
そう言って、手の平を上に向け、バチっと火花を散らした。
女生徒達は、信じられない言葉を聞いたかの様に、目を見開き、震えながら身を寄せ合っている。いまだ床に座り込んでいるエルドラは、呆然とした顔で、また視線を美人先生の方へ向けた。
(やっぱり・・・。)
あの先生、エルドラ達と何か関係している。でも、先生は黙ったまま何も言わない。エルドラ達の方に目を向ける事も無く、静かに成り行きを見ているだけだ。
「何を騒いでいるのです?」
と、人垣の間から先生達がこちらに向かってきた。
エライシャ先生と、もう二人は知らない先生だ。きっと違う学年の先生だろう。二人ともかなり若い。
一人は若い男性。整った顔立ちで、優しそうな眼をしていた。そしてもう一人は、
(すっごい美女だぁ・・・。)
長くウェーブした髪を腰まで伸ばし、体つきが浮き出る様なタイトなドレスをまとっている。背も高くて、かなりスタイルが良く、雰囲気のある美人だ。
泣いていた女生徒達は、その先生を見ると、一瞬で静まり返った。そしてエルドラが「先生・・・。」とすがりつく様な目を彼女に向けた。
(ん?。この子達、この美女先生の事、知っている?)
けれど、美女先生は何事も無かったかの様に、薄っすらと笑みを浮かべて立っているだけだ。
私達を見て、ベテランであるエライシャ先生が、目をキッと吊り上げた。
「何があったのです?。せっかくの学園のダンスパーティで揉め事など・・・。恥ずかしいと思いなさい。」
女生徒達は気まずそうに、目を伏せた。
エライシャ先生は私の方を見て、眉をひそめたが、目は怒ってはいなかった。そして、
「アリアナさん。何があったのですか?」
私に向かってそう聞いた。
「すみません、エライシャ先生。ちょっとした誤解と、意見の相違がありました。先生方のお手を煩わせるような事となり、申し訳ないと思っています。」
頭を下げると、周りの人垣の中から、
「その、座っている子が、アリアナ嬢を叩こうとしたんだよ。」
と男子生徒の声がした。そして、
「そうですわ。それをクリフ様がお止めしたのですわ。」
と言う声も聞こえてきた。
「本当ですか?エルドラさん。」
エライシャ先生は厳しい顔をエルドラに向けた。
「で、でもエライシャ先生!。私達はアリアナさんの悪行を正そうと思って・・・。私聞いたんです!彼女は権力とお金の力で、ディーン様やクリフ様を自分の周りにはべらせているんです。それに、パーシヴァル様の弱みを握って、家来の様に操ってるんです!。取り巻きを作って、まるで自分が女王にでもなった気分でいるんですわ!。」
エルドラは叫ぶように言った。
エライシャ先生はそれを聞いて、顔をしかめた。
「その様な事、誰に聞いたのです!?」
「そ、それは・・・。」
エルドラが言い淀んで、辺りをチラチラと見回した。
(ん?)
エルドラの視線が、あの美人先生の方をかすめた様な気がした。すると、
「アリアナは、その様な事はしてない。」
いつの間にか私の横に戻ってきていたディーンが、響く声でそう言った。そして、
「そうです。この方が仰った事は、全てでたらめです。アリアナ様は、そんな人ではありません!。」
(リリー!)
気付かない内に、リリーやミリア達も私の周りにいて、私を庇う様にして立っていた。
ディーンは一歩前に出ると、冷たく燃える瞳を、女生徒達に向けた。
「私がアリアナと共にいるのは、友人として、・・・そして婚約者としても、彼女に惹かれているからに他ならない。私の行動を、気持ちを、勝手に捻じ曲げて解釈されるのは不愉快だ。」
彼は厳しい声でそう言い放った。
そして、その横ではパーシヴァルが、
「僕が、アリアナ嬢に弱みを握られてるって?。あはっ、面白いねぇ、それ。僕が彼女に、家来の様に操られるって、さぞかし愉快な光景だろうね。・・・ねぇ、教えて欲しいんだけど。僕は、いったいどんな弱みを持ってるの?」
いつもの軽薄そうな笑みが、逆に恐ろしく感じる。
今度はミリアが、横から私を庇う様に腕を回して、女生徒達を睨みつけた。
「アリアナ様は私達を、友と思って親しくしてくれています。私達も、そんなアリアナ様が好きで、いつも一緒にいるのよ。取り巻きなどと言う下品な言葉で、私達の友情を侮辱するなんて許せない・・・。文句があるのでしたら、私がいつでも相手になりますわ!。」
そう言って、手の平を上に向け、バチっと火花を散らした。
女生徒達は、信じられない言葉を聞いたかの様に、目を見開き、震えながら身を寄せ合っている。いまだ床に座り込んでいるエルドラは、呆然とした顔で、また視線を美人先生の方へ向けた。
(やっぱり・・・。)
あの先生、エルドラ達と何か関係している。でも、先生は黙ったまま何も言わない。エルドラ達の方に目を向ける事も無く、静かに成り行きを見ているだけだ。
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