上 下
76 / 284
閑話3 この世の春(ノエル)

1

しおりを挟む
兄弟がいると、比べられることが多い。
僕には4人の兄姉がいる。上の二人の姉とは年が離れていて、もう他所に嫁いでいるので、さほど比べられることは無かったが、双子の姉と、2つ上の兄とは、そりゃもう滅茶苦茶比較された。
とにかく彼らの出来が良すぎるのだ。

僕の家のバークレイ家は、昔から魔力が強い事で名を馳せている。田舎の小さな伯爵家だが、父は魔法省の管理職として勤めているぐらいだ。兄と姉達はその力を受けついだのだろう、4人とも魔力が強く、頭も良い。
特に双子の姉のミリアはバークレイ家の始祖と呼ばれる人の生まれ変わりでは無いかと言われてるくらいだ。彼女は強い魔力を持ち、幼い頃から魔術を操れる事に長けていた。しかも頭も良い。

2つ上の兄のケイシーも、ミリアには及ばないけど強い魔力を持つ上に、運動神経が抜群だ。それに明るくて爽やかで、人を惹きつける魅力の持ち主である。

この二人と比較される僕は、結構大変なのだ。僕は生まれつき魔力が少ないし、しかも土の魔力と植物の魔力しかない。使える魔術も少ない。これが分かった時、父と母が大きく溜息をついた事を覚えている。

運動神経も、兄のケイシーには遠く及ばない。というか、兄は2歳で馬を乗りこなしたと言う逸話を持つ恐ろしい人物だ。3歳で崖を素手でよじ登り、5歳でうちの警備隊長を剣で破った。天才と言うか、もうほぼ運動神経のお化けだ。
僕はいまだに馬に乗るのが苦手だけど、世間一般じゃ普通だと思う。

ミリアはと言うと、1歳の時には強い魔力がある事が分かって、5歳で魔術を操れるようになって、今じゃ魔法省の職員以上の魔力と魔術の才がある事が分かっている。学校の成績だって、上から5本の指に入るくらいの才媛だ。見た目も結構可愛いし、ここまで完璧だと笑っちゃうくらいなのだ。

僕はと言うと、ミリアの双子なんだから、顔は似てる筈なのに、どうも美形とは言い難い。たまに可愛いとは言われる事もあるけど、男だからあまりうれしくない。でもそんなに悪くない顔だと思ってる。
勉強はと言うと、真ん中よりも下に近い成績だ。中間テストの成績表を見せると、両親はまたまた大きく溜息をついた。でも、僕よりも何人も成績が悪い子もいるし、赤点は取っていないんだから、別に良いと思っているんだけど。

そんな事を親友のクリフに話したら、クリフは散々大笑いした後にこう言った。

「それがノエルの一番の長所だと思うよ。」

「どういう事さ?」

「比べられても、気にしてないだろ?」

「気にしてない事は無いぞ!。父や母をがっかりさせて、申し訳ないと思ってるさ。」

「でも、ケイシーやミリアを恨んだりしてないだろ?」

「なんで、兄さんとミリアを恨まなきゃいけないんだ?」

「だから、それで良いんだよ。ノエルは。」

こいつの言う事は、たまに良く分からない。でも、クリフも頭の良い奴だから、きっと正しい事を言ってるのだろう。

クリフは領が近くて、年も同じだから小さい頃からの友人だ。覚えてないけど、ウォーレン侯爵が、クリフの遊び相手になって欲しいと、うちに連れてきたのだが最初の出会いらしい。

こいつがまた、僕の兄姉以上に出来る奴なのだ。小さい頃は女の子?って思うくらい奇麗な顔をしていたし、今だってそこいらの女子よりずっと美人だ。さらに魔力や魔術も学校の成績だってミリアに負けず劣らずで、非の打ちどころが無い。

「父も母も、兄やミリアやクリフを基準にしちゃってるからなぁ。僕のレベルだと、満足できないんだよ。でも、僕は別に出来ないわけじゃ無くて、普通なだけだろ?」

「ああ。」

「別に僕は気にならないんだから、父も母もそう思ってくれたら良いんだけどなぁ・・・。」

「ノエルが気にしてないなら、大丈夫だよ。」

クリフはくっくと笑って、僕の背中を叩いた。

「そうだね。明日はアリアナ嬢の別荘に行くから早起きしなくちゃいけないし、そろそろ寝よう。」

僕は枕元のランプの灯を消した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~

イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?) グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。 「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」 そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。 (これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!) と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。 続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。 さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!? 「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」 ※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`) ※小説家になろう、ノベルバにも掲載

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!

つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが! 第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。    *** 黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...