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第3章 悪役令嬢は関わりたくない

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パーシヴァルは「何をばかな・・・。」とか「そんな訳ないだろう。」とか色々良い訳をし始めたが、明らかに声が動揺している。

「ぼ、僕はあくまでディーンの親友として・・・。」

と、弁明をしようとしたが、私の態度を見て取り繕えないと思ったのだろう、自分を落ち着かせるためか、大きく息を吐いた。


「君が・・・こんな策士だとは知らなかったよ・・・。」

(いえ、企んだわけではありませんが・・・。)

「前とはまるで別人だ。」

(・・・仰る通り別人です。)


そのまま二人とも、しばらくは何も喋らなかった。


(どういう事?乙女ゲーの攻略者がそっちだなんて、あり得ないよ・・・。)

さすがに予想外過ぎて、私も上手く頭が働かない。

(あれ・・・?、でも・・・。)

「あの、あの、・・・ではどうして、ディーン様とリリーを結び付けようとするんです・・・?」

恐る恐るそう聞いた。

(だって、だって、ディーンの事を〇しちゃってるんだよね?)

だったら何故、こんなにもディーンの恋の応援をする?


私の後ろで、パーシヴァルの気配が揺れた。

「・・・幸せになって欲しいだろ・・・。・・・な人には・・・。」

いつもの陽気なパーシヴァルとは思えないような、かすれた声を聞いて、胸が詰まった。

(ああ、本気なんだ・・・。)と思って、なんだか切ない気持ちになった。


「・・・言わないで・・・ディーンには。」

「・・・言いませんよ。」


それから先は、二人とも黙ったままだった。




「さぁ、着いた!どうだい?良い所だろう?」

兄がそう言って馬を止めた場所は、岩場の陰に広がった草原だった。遮るものが無く、眼下に景色が広がっていた。

「凄い!昨日買物した街まで見えますわ。」

「あれが、私達のいる別荘ですね。」

私達は、指さしながら、その景色に見入って感動していた。


草原の一角には、綺麗な花が沢山咲いていて、まるで花畑だ。向こうの方には小川が流れている。

「なんて美しい所なんでしょう・・・!。」

「花冠を作りたいわ!。」

女子は皆、歓声を上げた。

「あっちの方は崖になっているから、近寄らない方が良い。さぁ、ここにピクニックシートを広げよう。」

クラークは使用人にてきぱきと指図している。



私は皆と一緒に、花畑の中に座った。大きさや色も様々な花達が、風に揺れる度にその甘い香りを運んでくる・・・。

(自分の幸せよりも、好きな人の幸せか・・・。)


私は先ほどのパーシヴァルを思い出していた。

(ディーンとリリーを純粋だって言ってたけど、あんたの方こそ、純粋だよ。)

私は今更ながら、グスタフ避けにディーンを使った事を後悔していた。

(結局、ディーンを利用してるって事なんだもんね・・・。これは久しぶりに自分が嫌いになりそうだわ・・・。)
自己嫌悪感に沈みながら、私は花畑にうつ伏せになった。


(・・・大丈夫・・・底まで落ち込んだら・・・、後は浮上するだけだから・・・。)

うつ伏せのまま、目をつぶる。


これは私のいつもの儀式だ。どんなに嫌な事があっても、辛い事があっても、自分を嫌いになっても、底まで行った後は切り替えて、とにかく動くだけで良い・・・。


しばらくして、私は握りしてめいた手から力を抜いた。目を開けて横を向くと花の蜜を吸いにミツバチが飛んできている。目に見えるだけの世界は、あまりにものどかだ。


(うん。やっぱりディーンとは、婚約解消しよう・・・!。)

後の問題は、全部自分で引き受ける。グスタフの事だって、なんとか解決して見せる。

少しスッキリした気分で、私はそのまま仰向けに寝転がって空を見上げた。怖いくらい真っ青な空を、作り物のような雲がゆっくりと滑っていく。


(パーシヴァルは、ディーンがアリアナと婚約した時、どう思っただろう・・・?。アリアナがあんな風じゃ無かったら、やっぱり親友として祝福するつもりだったのだろうか?。)

だとしたら、どんな気持ちだっただろう。私だったら、きっとしんどい。

私は空に向かって、右手をかざした。太陽が少し眩しい・・・。


「それに・・・いったい、何が起きてるのだろう・・・?」

もう一つ、私には疑問があった。

アリアナ(私)以外の人物の設定が、ゲームとは、がらりと違っている事に、私は不安を感じていた。


(私と接触のある人は、私が悪役令嬢しない事で影響を受けるかもしれない。でもパーシヴァルは・・・。)

正直、この別荘で会うまで、ほとんど話もした事無いのだ。


う~ん、と顔をしかめていると、誰かが上から私を覗きこんだ。


「・・・リリー?」

気付かないうちに、リリーは私の傍に座っていたようだ。そして、手には花で編んだ冠を持っていた。私は起き上がって、その花冠をよく見た。

「ええ~!凄い。リリーが作ったのですか?」

「はい。」

「うわぁ、器用ねぇ!。」

幾重にも編まれた花が、見事に輪っかを作っている。

「どうぞ、アリアナ様。」

そう言って、リリーはその花冠を私の頭に乗せた。私はそれを両手で抑えながら、見上げてみる。

「とてもお似合いです。」

リリーが少し首を傾けながら、ふわりと微笑んだ。彼女のピンク色の髪が太陽の光を受けながら。柔らかく流れる。


(もっ、もっ、もっ、最高~!・・・マジで花の精霊だって!)


私はヘラ~と笑い返しながら心の中で、(リリー可愛い!可愛い!可愛い!・・・!)を連呼していた。自分でも単純だと思うが、一気に元気が回復した。
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