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第2部 自由

不思議なレシピ

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「レシピノートですか?」
「はい! ああ、クレ……ナディアさん、申し訳ありません! 勝手に話を進めてしまって。今日のところはこれで……」
「いいえ、よいのです。それよりレシピノートがとても気にかかります」
「そうですか? では、是非うちのレシピを見ていただきたいです」

 アンナは言葉遣いに気をつけながら話しているようだが、クレアは内心で第二宮内ではおそらく見られないだろう彼女の表情を見ることができて嬉しいと思った。
 それから、マリが本棚から持っていたレシピノートをテーブルに広げて、クレアとアンナはしばらくそのノートを眺めていく。

「これが気にかかります」

 クレアはあるページを目にすると、ふと店の前で疲労を訴えていた人々が脳裏を過った。

「これですか? えっと……」

 それは魔法の香水で、数滴身体につけるだけで蓄積された疲労が消えるというのだ。

「確かに、この辺りは労働者も多いですし、これから冬になるので力仕事も多くなるからお客さんからの受けがよさそうですね!」

 二人がレシピノートを覗いていると、後ろからマリが声をかけた。

「これは駄目よ」
「どうして?」

 マリはふうとため息を一つ吐いてから、椅子に腰掛けた。

「私も同じことを考えてレシピを再現しようと思ったんだけど、まず材料が分からないのよ」
「材料?」

 レシピノートを読んでみると材料の欄には『花びら・綺麗な水』とだけ書いてあった。

「何これ……」
「ね? これでは作りようもないでしょう?」

 アンナとクレアは顔を見合わせた。
 工程自体は魔力混入装置さえあれば問題なく作れそうなのだが、肝心の材料がよくわからないという。

「私も、ありとあらゆる花びらと水で作ってみたのだけど、結局作ることができなかったの」

 マリがそう言い終えるのと同時に店頭に来客があり、彼女が対応をした。その客はどうやらアンナの幼馴染の女性らしい。

「アンナ。ミナちゃんが少し話したいんだって」
「でも私は」
「アンナさん、わたしは大丈夫ですから、是非行ってきてください」
「でも……」
「護衛の方も外にいますから」

 今日もアーサーの配慮で、私服の護衛が建物の周辺に何名も潜伏していた。
 クレアに何かがあれば、彼らがすぐさま動くだろう。

「分かりました。挨拶をしたらすぐに戻ります」
「ええ。けれどせっかくだからゆっくりしてきてくださいね」
「クレア様……、ありがとうございます!」

 そうして、クレアはアンナを見送ったのだった。
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