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心得1「客を見る目を養え」

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「どの人に頼もう。」

リナは夜になるにつれて賑やかになる通りで立ちすくんでいた。
ここは不夜城とも呼ばれる娼館の多い通り。
客引きの声と笑い声。腕を露出した女性が歩いている。

リナは幼い頃から娼館に住んでいた。
掃除や食事の支度を手伝っていた。

夕方に店の提灯がぽつぽつと灯り、川に映るのを見るのが好きだった。
白粉や香水の匂いも、お姐さんたちが綺麗な衣をまとうのも、夜の空気に酔っぱらいそうで好きだった。
夢の国のようになる街、
翌朝のゴミだらけの街も、また現実が濃くて好きだった。
それを見るから夢は美しいのだと思う。美しくなければ。

男の人が一夜の夢を買いにきて、帰っていく。

リナは早く眠くなる。
朝、誰よりも早く起きて水を買うためだ。

お姐さんたちの笑い声を夢の中で聞く。そんな風に育った。

そんなリナも15になり、娼婦の見習いをすることになった。色々とまずは知識を教えられた。
そのあと、お姐さんたちの体を見せてもらって実際にあれこれ触らせてもらった。

「ひゃああ、こんなに胸が大きくなるんですか?私も?」

「いや、私がリナの頃にはもうこれくらいあったから」

「個人差あるんですね……」

あるときは、嫌な客、避けたい客について聞いた。

「まず暴力。あとは変態的な趣味。中には奥さんや恋人にドン引きされるから、ここでお願いします!ってこっそり頼まれることもあるんだけどね。
あとは長いとかしつこいのも嫌われるかしら。
大きいのもあとが困るわ。

まあ、あとは本気で惚れられるのもちょっと困るかな。

何よりこっちが惚れるなんて論外よ。最悪。

あと、いいかどうかいちいち聞いてくるのもうっとうしいわねえ。」

リナは几帳面にメモをとる。

「暴力はお店でも始めにお断りって書いてありますもんねえ。」

「ここは遊びに来るところだってちゃんとわかってるお客さんは無茶なこと言ってこないから大丈夫だと思うけどね。」


そんな話を思い出していた。

早くピッタリの人をみつけてお願いしなければ。
リナは立派な娼婦になりたかった。

生い立ちが不幸な者も売られた者もいる。それでも堂々と輝いている姐さんが言った。

「初めての経験を好きな人と済ませたから後悔はないの。」
と。
プライベートで恋愛経験があるから、お客様との疑似恋愛を上手くやれる。

そういうものかと、思った。

リナは、恋をしてないと気づいた。
誰でもいいからさくっとプライベートで抱いてくれないかな。
「暴力なしで、変態じゃなくて、小柄で細くて早くて、あとは惚れない惚れられない」

リナはメモを持ち歩いている。
「いいかどうか聞かないってのはどういうことだろ。
強引ってこと?そういう人の方がいいのかしら。
嫌がることをする人はダメだけど、強引なのはいいの?

あ、聞かずに察してくれる人がいいってことか。その方が早く終わるもんね!なるほど」

姐さん達から聞いたことを繰り返し読んで覚えてみても、

どういう人がそういう条件に当てはまるのか見抜けない。

ダメっぽい人はわかる。
とても大柄で、荒っぽい手付きで店に入る前から女の人の体を撫で回したり、大声で呼んだりする人。

お金を出したら何をしてもいいって、思ってる人。
そういう人はお酒や料理の注文も態度に出るので、リナも直接関わったことがある。

あと、とても普段はいい人そうだけど、夜にこの通りで見かけるとギラギラしている人。騎士団の人で、飢えた獣みたいになってる。
あれは怖いなと思うけど、翌朝は姐さんに甘えて猫みたいになってる人もいるので、一時的なものだと思う。それでも体の大きい人は怖いな。
相手をした姐さんがマッサージを頼んだり薬を頼まれたりするもの。

ちゃんと、ここの事が遊びだとわかってる人。
これは数人の姐さんが言ってたので赤線を引いてある。

「難しいなあ」

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