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25.お茶会

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侯爵邸ではお茶の用意が進められていた。
使用人も緊迫感に手順を間違えそうになる。

ごく私的なもので構わないのですが、お客様からゆっくりとお話を聞きたいのです、

とフローラ様からの伝言が伝えられた。

伝えたケイティの、ゆっくり、の声が低かったので他の者は察した。
尋問のためのお茶会ですね、と。

ピンクのドレスの令嬢は庭の散策をしていた。憧れていたであろう侯爵邸なのに地面を見たりキョロキョロと視線が定まらない。
案内しているのが侯爵夫人、ラルフの母だからだ。
「帰らせてください、お願いします」

「ごめんなさいね、お招きしたのがフローラさんなので私が勝手にお客様を帰すなんてことはできないわ。どうぞ楽しんでくださいね」

ピンクのドレスの令嬢は更に震える。

お茶の用意が整ったと知らせが来たので屋敷に入った。

和やかに始まったように見えるお茶会で、バーバラと名乗った令嬢はカップを持つ手も震えていた。

「バーバラさん、私が貴女をお招きしたのは理由があります。責めることが目的ではありませんので、それ以上怯えないでください」

フローラが言うと、弾かれたように顔を上げた。

「でも、私はラルフ様のことで嘘をたくさん言ってしまって、今では反省しています。なんであんなことを言ってしまったのかわからない……」

「私が怒っているのもご理解頂いてますか」

「はい、もちろん、婚約者様の立場に失礼なことをしたと」

「そういうことではなく、私が怒っているのは。
あなた方の虚栄心のためにラルフ様をアクセサリーのように思っているのではないかと感じたからです」

バーバラは息をのんだ。

「あなたの嘘が育つように誰かが、ラルフ様のことを話題にしたり。
先程の令嬢たちのように数人で話しているうちに興奮して新たな嘘を重ねたり、そういうことが日常的にあったということでしょう。
悪意はなくても、噂は大きくなるものです。
ラルフ様は努力して今の地位を掴まれています。噂が人を潰すこともあるのですよ」

「あなたにラルフ様のことを聞きたがって寄ってくるような面白半分の方はいませんか」

「います。」


「距離をおくべき方をよく見てください」

「はい、申し訳ありませんでした」


そのあとは少し雑談をして、迎えに来たバーバラの家の馬車に乗せた。商会を営んでいる裕福な庶民だった。

「フローラさん本当にあれだけで良かったの?許してしまって」

「彼女の周りにいる面白がっている人たちを止めさせないと、彼女の嘘も噂も止まりません。
それに、許したというか……。周りの人の悪意を見定めるというのは辛い作業だと思いますわ」

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