25 / 32
25.お茶会
しおりを挟む
侯爵邸ではお茶の用意が進められていた。
使用人も緊迫感に手順を間違えそうになる。
ごく私的なもので構わないのですが、お客様からゆっくりとお話を聞きたいのです、
とフローラ様からの伝言が伝えられた。
伝えたケイティの、ゆっくり、の声が低かったので他の者は察した。
尋問のためのお茶会ですね、と。
ピンクのドレスの令嬢は庭の散策をしていた。憧れていたであろう侯爵邸なのに地面を見たりキョロキョロと視線が定まらない。
案内しているのが侯爵夫人、ラルフの母だからだ。
「帰らせてください、お願いします」
「ごめんなさいね、お招きしたのがフローラさんなので私が勝手にお客様を帰すなんてことはできないわ。どうぞ楽しんでくださいね」
ピンクのドレスの令嬢は更に震える。
お茶の用意が整ったと知らせが来たので屋敷に入った。
和やかに始まったように見えるお茶会で、バーバラと名乗った令嬢はカップを持つ手も震えていた。
「バーバラさん、私が貴女をお招きしたのは理由があります。責めることが目的ではありませんので、それ以上怯えないでください」
フローラが言うと、弾かれたように顔を上げた。
「でも、私はラルフ様のことで嘘をたくさん言ってしまって、今では反省しています。なんであんなことを言ってしまったのかわからない……」
「私が怒っているのもご理解頂いてますか」
「はい、もちろん、婚約者様の立場に失礼なことをしたと」
「そういうことではなく、私が怒っているのは。
あなた方の虚栄心のためにラルフ様をアクセサリーのように思っているのではないかと感じたからです」
バーバラは息をのんだ。
「あなたの嘘が育つように誰かが、ラルフ様のことを話題にしたり。
先程の令嬢たちのように数人で話しているうちに興奮して新たな嘘を重ねたり、そういうことが日常的にあったということでしょう。
悪意はなくても、噂は大きくなるものです。
ラルフ様は努力して今の地位を掴まれています。噂が人を潰すこともあるのですよ」
「あなたにラルフ様のことを聞きたがって寄ってくるような面白半分の方はいませんか」
「います。」
「距離をおくべき方をよく見てください」
「はい、申し訳ありませんでした」
そのあとは少し雑談をして、迎えに来たバーバラの家の馬車に乗せた。商会を営んでいる裕福な庶民だった。
「フローラさん本当にあれだけで良かったの?許してしまって」
「彼女の周りにいる面白がっている人たちを止めさせないと、彼女の嘘も噂も止まりません。
それに、許したというか……。周りの人の悪意を見定めるというのは辛い作業だと思いますわ」
使用人も緊迫感に手順を間違えそうになる。
ごく私的なもので構わないのですが、お客様からゆっくりとお話を聞きたいのです、
とフローラ様からの伝言が伝えられた。
伝えたケイティの、ゆっくり、の声が低かったので他の者は察した。
尋問のためのお茶会ですね、と。
ピンクのドレスの令嬢は庭の散策をしていた。憧れていたであろう侯爵邸なのに地面を見たりキョロキョロと視線が定まらない。
案内しているのが侯爵夫人、ラルフの母だからだ。
「帰らせてください、お願いします」
「ごめんなさいね、お招きしたのがフローラさんなので私が勝手にお客様を帰すなんてことはできないわ。どうぞ楽しんでくださいね」
ピンクのドレスの令嬢は更に震える。
お茶の用意が整ったと知らせが来たので屋敷に入った。
和やかに始まったように見えるお茶会で、バーバラと名乗った令嬢はカップを持つ手も震えていた。
「バーバラさん、私が貴女をお招きしたのは理由があります。責めることが目的ではありませんので、それ以上怯えないでください」
フローラが言うと、弾かれたように顔を上げた。
「でも、私はラルフ様のことで嘘をたくさん言ってしまって、今では反省しています。なんであんなことを言ってしまったのかわからない……」
「私が怒っているのもご理解頂いてますか」
「はい、もちろん、婚約者様の立場に失礼なことをしたと」
「そういうことではなく、私が怒っているのは。
あなた方の虚栄心のためにラルフ様をアクセサリーのように思っているのではないかと感じたからです」
バーバラは息をのんだ。
「あなたの嘘が育つように誰かが、ラルフ様のことを話題にしたり。
先程の令嬢たちのように数人で話しているうちに興奮して新たな嘘を重ねたり、そういうことが日常的にあったということでしょう。
悪意はなくても、噂は大きくなるものです。
ラルフ様は努力して今の地位を掴まれています。噂が人を潰すこともあるのですよ」
「あなたにラルフ様のことを聞きたがって寄ってくるような面白半分の方はいませんか」
「います。」
「距離をおくべき方をよく見てください」
「はい、申し訳ありませんでした」
そのあとは少し雑談をして、迎えに来たバーバラの家の馬車に乗せた。商会を営んでいる裕福な庶民だった。
「フローラさん本当にあれだけで良かったの?許してしまって」
「彼女の周りにいる面白がっている人たちを止めさせないと、彼女の嘘も噂も止まりません。
それに、許したというか……。周りの人の悪意を見定めるというのは辛い作業だと思いますわ」
0
お気に入りに追加
360
あなたにおすすめの小説
自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで
嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。
誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。
でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。
このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。
そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語
執筆済みで完結確約です。
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです
石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。
聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。
やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。
女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。
素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。
死んだはずがイケメン王子に転生!?だけど僕が選ぶのはヒロインでも悪役令嬢でもありません。
宵闇 月
恋愛
死んだはずのイケメンはやはりというべきか乙女ゲームのイケメン王子に転生。
だけどこのイケメンとある事情により可愛いヒロインも綺麗な悪役令嬢も振り切ってモブ令嬢に夢中になります。
*想像の世界のお話です。
*誤字脱字や拙い文章は大きな心で受け止めてください。
*一応最後まで書き終えています。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる