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16. 王宮の庭師

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王宮の庭園の解放について、まずは職員の意見を聞こうと言うことで下見が行われた。
ラルフも参加した。

広さと植物の豊かさに驚いた。
ここでフローラがドレスを着て皆に祝福されるのかと想像してみた。
明るい開放的な中で清楚な花嫁は光の中に溶けてしまいそうに見えるんじゃないだろうか。よく似合う。

実際に歩いてみると岩の配置や計算された植木の配置に目がいく。
「この池は少し子供には危険かもしれませんね。」

それでは柵を、という声があるのでメモをしていく。

(せっかくの景観なのに金属の柵は味気ないだろうか。)

「入り組んでいて迷路のようになっているので、解放するのはこちらだけであちらの通路は塞いだほうが良いのでは」

そんなことを言いながら歩いていると、一人の老人が座り込んでいた。

「あの人は……?」

「ああ、長い間勤めてくださった庭師で、腕は良いのですが偏屈で。庭園の解放に反対しているんです。仕事は息子や弟子に引き継がれているのでご心配なく。」

「しかし、長くここを手入れされた方が反対というのは」

「陛下からのお言葉で解放が決まっているので、従っているようなものですが、内心は違っているんでしょうね。ああして庭を、眺めたり座り込んだりしています」

どうしても心に引っ掛かった。
フローラに相談すると、その庭師に会ってみたいという。

偏屈だと聞いたし、初めは共に挨拶に行った。

ベンというお爺さんは、フローラを見て不思議そうな顔をした。

「どうかしましたか」

「想像していた感じとは違っていたので少々驚いた。
王宮の庭で結婚式をしたいから庭を開けろなど、我儘そうで傲慢で強情な娘だろうと思っていた」

ラルフはそれで反対なのかと思った。もともと庭園解放の話が先で、結婚式はあとから便乗しただけだ。

説明しようとしたが、フローラがベンの隣に座り込んだ。

「ふふ、私は強情だと言われます。我儘はそれほど言ったことはないと思いますが、結婚式は我儘を言おうと思いまして」

「服が汚れるぞ?」

「構いません。わ、座って眺めるとまた違いますね」

ラルフもしゃがんでみる。
確かに少し起伏があり、目線の高さによって違って感じられた。

「変わり者だな、あんたたち」

「よく言われます」

「陛下の考えもわかるし、時代の変化かもしれん。わかってはいるんだが……変えたくないんだ、わしは。」

ぽつりぽつりとベンは話してくれた。

「王女殿下が、好きだと言ってくれたこのままの庭を。王族の方だけが見ると思うと誇りだった」

「だが、結婚式の前には剪定してやる。花も咲かせてやる」

「ありがとうございます」

二人でお礼を言った。

「よかったね、フローラ」

フローラは握りこぶしを口元に当てている。
考え事をしている。
また何か思い付いたんだろうか。
腰の辺りに手をおいて、ゆっくりと歩きながら馬車に戻った。
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