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12.無駄なことはやめましょう

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「ラルフ様、私ドレスについて希望がありまして。まだ今からなら一から考え直しても間に合いますよね」

今日はフローラと街へ出て流行りのカフェに来ていた。
フローラの希望で街を見たいということだったので、とくに予定を決めていない。

つまり、ただのデートということで。
記念すべき、予定を決めていない初デートということになる。
結婚を焦りすぎて彼女を不安にさせてしまったようなので、しばらく恋人らしいことをしようと思った。結婚式の準備など、彼女の好きなようにするのが一番なのだから。
フローラの気持ちを大切にしたい。
今日は結婚のことについて
話題にしないつもりだったので、フローラがドレスのことを前向きに考えていると知って、少し意外だった。

「まだ具体的ではなかったからデザイナーも候補というだけだし、大丈夫だよ。フローラの思う通りにしていいよ。」

「デザイナーを変えたいというわけではないんです。
侯爵領の特産品に綿がありましたよね。綿でドレスを作れないかと思って。」

「綿で?聞いたことがない気がするが……ドレスの生地は絹ではないのか?私も詳しくはないが」

「夜会では絹の光沢が映えますが、昼の結婚式なら自然の光に映えるのではないでしょうか。領地ではとても薄く織る技術を開発したところだとお聞きしました。
この間、お母様から柔らかいストールを頂いて。
とても薄くて日に透けて。
私、侯爵領の空気や光で育った布を纏った花嫁になりたいです」

腹のそこからじわりと温かいものがうまれた。

私のフローラは、本当に考えることが面白い。

「最高だ」

「そう思ってくださいますか?」

「フローラ、君が最高だよ。初めての試みだから、出来るかどうかわからない。でも、今までにないことを思い付く君が好きだし、私たち二人の門出にとても良いと思う」

フローラは紅茶のおかわりを頼んだ。
「私、無駄なことが嫌いなんです」

「知っている」

「一生に一度の結婚式に、お金も時間も労力も使うのであれば、領地に還元できるものにしたいです」

キラキラした顔でそう言われた。

綿の可能性は領地でもまだ未知だと父も言っていた。

「では、料理の方は伯爵領の特産品を取り入れられないだろうか。」
フローラが目を輝かせた。

「お互いの領地を知るのも楽しみだ」






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