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10. 婚約してからのほうが
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「え、ラルフどうしたの」
王太子は部屋にいた文官に聞いた。
「わかりません、朝からあんな調子で」
ものすごい勢いで仕事をしたかと思うと、机に突っ伏して、頭をぶつけたりしている。
蕩けるような顔でぼうっとしているかと思えば、赤くなって青くなって、ため息をつく。
「ラルフ、何か問題でもあったのか?」
机の上が珍しく散らかっていて色々と紙に書いている。
「ああ、殿下すみません。少し予定の変更と見積もりをしなおしていました。こんな見積りではもちません」
「何?」
ラルフが受け持っていた案のうちどれか考える。特に問題なく議会へ回したり、別の部署に渡している。今はそんなに難しい案件はないはず。
部下のものを引き継いだり最終確認をしているのかもしれないが、
ラルフがこれだけ焦っているとは
「殿下、全ての夜会を中止しましょう」
「夜会?どういうことだ、何かテロの予告でも?あとは禁止薬物?」
「一年、いや半年あればフローラを家から出さないようにできる」
「フローラ嬢?令嬢の誘拐予告でもあるのか?」
「いえ。
可愛すぎるんで。」
聞き間違いだと思った
「あんなに可愛くなるなんて聞いてません。婚約したら安心できると思ったのに見積もりからやり直さなければ」
「えーっと、ラルフ?
とりあえず仕事できそう?」
「今日の仕事は殿下の机の上に置いてますので裁可お願いします。あとここに居ますので何かあれば申し付けてください」
そのあとも可愛いとか無理とか結婚したいとかブツブツ脳内の言葉が漏れているので
「むしろ帰ってくれないかなあ」
とつい言ってしまった。
「ダメです、今フローラに、会ったら絶対襲うので、俺」
俺って言った!
部下も恐ろしいものを見たように頬を染めているが震えている。
感情の幅が大きい。
真面目で冷静な人間が我を失うくらい溺愛して野性味が増しているなんて、
極端から極端すぎて、婚約者に同情する。
「ラルフが仕事のために早く婚約したいって言ってたときにはこんな風になるなんて思わなかったよ」
部下も口々に言っている。
「仕事は鬼のように速いんですが」
「尊敬していた先輩の口から、知能指数の低そうな語彙しか出ないのが精神的に受け入れられません」
「いやむしろ、俺はラルフ様も人間だったんだ、って安心しましたよ」
「ラルフ様をこんなに変えるお相手の令嬢ってどんな方なんですか?殿下はご存知なんでしょう?」
そう一人が言ったとたん、ラルフが本をダンッと置いた。
「人の婚約者に興味を持つヒマがあったら仕事しろ、いいな?」
冷たい声と視線。
(怖い怖い!)
「まあ、お前たちにも私が休む間世話をかけるから、それまでに慣れてもらうために仕事を引き継いでおくから。そのつもりでいてくれ」
笑顔。
落差にやられる後輩。
「休むのか?」
「結婚式の準備と、結婚式後はしっかりと休みを取りますので」
王太子は部屋にいた文官に聞いた。
「わかりません、朝からあんな調子で」
ものすごい勢いで仕事をしたかと思うと、机に突っ伏して、頭をぶつけたりしている。
蕩けるような顔でぼうっとしているかと思えば、赤くなって青くなって、ため息をつく。
「ラルフ、何か問題でもあったのか?」
机の上が珍しく散らかっていて色々と紙に書いている。
「ああ、殿下すみません。少し予定の変更と見積もりをしなおしていました。こんな見積りではもちません」
「何?」
ラルフが受け持っていた案のうちどれか考える。特に問題なく議会へ回したり、別の部署に渡している。今はそんなに難しい案件はないはず。
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ラルフがこれだけ焦っているとは
「殿下、全ての夜会を中止しましょう」
「夜会?どういうことだ、何かテロの予告でも?あとは禁止薬物?」
「一年、いや半年あればフローラを家から出さないようにできる」
「フローラ嬢?令嬢の誘拐予告でもあるのか?」
「いえ。
可愛すぎるんで。」
聞き間違いだと思った
「あんなに可愛くなるなんて聞いてません。婚約したら安心できると思ったのに見積もりからやり直さなければ」
「えーっと、ラルフ?
とりあえず仕事できそう?」
「今日の仕事は殿下の机の上に置いてますので裁可お願いします。あとここに居ますので何かあれば申し付けてください」
そのあとも可愛いとか無理とか結婚したいとかブツブツ脳内の言葉が漏れているので
「むしろ帰ってくれないかなあ」
とつい言ってしまった。
「ダメです、今フローラに、会ったら絶対襲うので、俺」
俺って言った!
部下も恐ろしいものを見たように頬を染めているが震えている。
感情の幅が大きい。
真面目で冷静な人間が我を失うくらい溺愛して野性味が増しているなんて、
極端から極端すぎて、婚約者に同情する。
「ラルフが仕事のために早く婚約したいって言ってたときにはこんな風になるなんて思わなかったよ」
部下も口々に言っている。
「仕事は鬼のように速いんですが」
「尊敬していた先輩の口から、知能指数の低そうな語彙しか出ないのが精神的に受け入れられません」
「いやむしろ、俺はラルフ様も人間だったんだ、って安心しましたよ」
「ラルフ様をこんなに変えるお相手の令嬢ってどんな方なんですか?殿下はご存知なんでしょう?」
そう一人が言ったとたん、ラルフが本をダンッと置いた。
「人の婚約者に興味を持つヒマがあったら仕事しろ、いいな?」
冷たい声と視線。
(怖い怖い!)
「まあ、お前たちにも私が休む間世話をかけるから、それまでに慣れてもらうために仕事を引き継いでおくから。そのつもりでいてくれ」
笑顔。
落差にやられる後輩。
「休むのか?」
「結婚式の準備と、結婚式後はしっかりと休みを取りますので」
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