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クララ

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クララが何度も髪型を気にしたりドレスを着替えたりするのを見て
エドガーは渋い顔をしている。
ライラは夫の眉間を指でつついた。
「ん、すまない。また険しかったか。君に何度も注意されているのに直らないな」

「ふふ、それがなくなったらエドガー様じゃないみたい」

「昔よりは柔らかくなったと言われることもあるんだが」

「夜会でクララを見張っているときもきっとそんな感じなんですね」

「ろくでもない男に捕まると困るからな」

「私なんて、あんな風に恋をしてお洒落をする暇もなかったのに?」
今のクララみたいに。
エドガーが咳き込んだ。
「その件については、当時は私に余裕がなく配慮が足りなかった。君を自分のものにしないと不安だったから」

「怒ってませんよ。私には考える暇もないくらい勢いがあるほうが良かったみたいです。でも、」

エドガーの目が少し揺れる。

「偉くなっても年を重ねても、過ぎたことでも素直に謝れるエドガー様は素敵だと思いますよ」

「ライラ……!敵わないな、君には」

クララは二人の様子を見て思う。
本当に、お父様をあんな風にできるのはお母様だけ。
そんな風に私も特別な人を見つけたい。私にとってルーは特別だけど、彼にとっては違うような気がする。

今日は夜会に行く。
エスコートはお父様。ルーとは多分出会えない。それでも、もしかしたら出会うかもしれないし、ルーの知り合いに出会うかもしれない。
『ああ、あの子がルーベンスの恋人か』
と後でわかったときのために好印象を残したい。

誰かに恋をしたいと思うのとは少し違うけれど、多くの人に失礼のないようによく思われたいと念入りに支度をした。

『あんな素敵な子を恋人にするなんて、なかなかやるな、ルーベンス』

なんて思われたらどうしよう!

鏡の前で頬を押さえるクララを、ライラは微笑んで見つめていた。

アメリーがしばらく前に心配していた。

ルーベンスが論文を発表してからも、新種の花の研究に取りかかってなかなか家に帰ってこないこと。
熱中しすぎるから心配だと言っていた。

姉さんにそっくりじゃない

心で呟いた。

その日、クララは夜会で新しい噂を聞いた。

王女殿下の指名で特別講義をすることになった植物学者。
ルーベンスについて様々な噂が出ていた。

   
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