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ボスとラスボス

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それに加えて
「アレですものね」
ナタリーは遠い目をした。
「ああ、アレね」
アンも思い出した。

クララと仲良くなった頃に家に招かれた。
クララの兄、セドリックの麗しい顔が近づいてきて低い良い越えで切なそうに言われたのだ。
「君に聞きたいことがある。クララのいないところで」

少し狭い客室で、アンはソファーに座った。
セドリックは対面ではなく椅子を持ってきて斜め横に座ったのだ。
近い。
あの長い脚では椅子の方が座りやすいのね。
と呑気に思った。

「君の兄弟、及び親族に君を利用してクララに近づこうとする奴は居ないだろうか」

身辺調査だった。

ときめき返して。

「兄は婚約者と結婚間近ですし、弟は五歳です!」

そう言うとセドリックは満開の笑顔を浮かべた。

うわあ。

私好きな人がいるのに、「金の騎士様」の微笑みは反則だわ。
これは不可抗力だから浮気心じゃないわ。

セドリックは長い黒髪を高い位置でくくっている。
剣技では並ぶ者のない天才騎士で、凛々しいと老若男女に人気だ。
荒々しい男性や筋肉のついた男性を好まない令嬢にも、
「騎士はちょっと……でもセドリック様は別」
と言われるほどだ。

鍛えているが速さを優先させるために騎士にしては細身だ。剣舞を神に奉納するのもセドリックが数年続けて務めている。その衣装が金色なのと、瞳が琥珀色でネコ科の大型獣のようだと言われている。そこから「金の騎士」と呼ばれている。


顔は父親とそっくりなので、印象を変えるために伸ばしているらしい。
普段は厳しい態度で任務についているが、たまに夜会でクララをエスコートしている。
その時は髪を低い位置でくくり、優しい微笑みを浮かべるので、ギャップにやられる令嬢が大量に発生する。

従兄弟のフィルと並ぶと似ている。
カイルとはあまり似ていないが、その三人が並ぶと華やかで絵姿が売られているほどだ。
その三人が守っているクララに、そこらへんの例えば同級生の男子なんかが近づけるわけもなく。

セグラー家の兄弟が文官なのはエドガーに憧れたからで、

アーベン家のセドリックが騎士になったのはアルフレッドに憧れたからである。

エドガーとアルフレッドは相変わらず口喧嘩をしているが、お互いが息子の上司ということもあって歩み寄ることも、なくもない。

クララのことは
従兄弟、兄、父、おじの五人しかエスコートしたことがない。

普通の出会いなんて、クララにとっては壁が高すぎて憧れを募らせていた。
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