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やっつ焼きもち八卦よい

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眩しさに目を開けたら、視界の端に黒いものが動いた

「あ、」
声が枯れている。
だんだんに記憶が戻ってきて、叫びそうになって口をおさえた。むせた。

「大丈夫か」

黒竜が背中をさすってくれる。
その手の感触に、さらに色々と思い出して、突き飛ばしてしまった。

ぴゅーっと音がしそうなほどの勢いで屏風の陰に隠れる。

「あの、ミヤさん、昨日はごめん。ごめんなさい。薬湯もらってきたから飲んで。俺はしばらく出てくるから」

ひょこっと顔を覗かせてそれだけ言うと、出ていった。

(なにあれ。ミヤさん、だって)

昨日は、あんな、
あんなに

嘘つき!

身体のあちこちにアザがあるし、腰も重いしお腹がちくちくするような感じもあるし、何より人に言えない場所の違和感がある。
薬湯を飲んで、しばらくすると少し喉の調子がよくなった。
お風呂に入りたいけど、部屋から出ていくのは怖い。天狗みたいに誰に出会うかわからない。黒竜しか頼るものがいない。
だから、昨日も求められて嫌じゃなかった。
とっくに、あの瞳に見つめられたら心が溶けていた。

今朝、黒髪をおろしたボッサボサなのにキラキラして見えたなんて、絶対に昨日のあれのせいだ。
恥ずかしくて布団をポカポカ叩いた。

早く戻って来ないかな、というのと顔を合わせるのが恥ずかしいのと。
あと、動いたときに中から出てくるんだけどこれは布巾をあててもなんだか尋常ではない量のような気がするのですが。普通がどれくらいともわからないけど、なんだかこれはとても困る。

そうっと戸が開いて、黒竜が帰ってきた。
「あ、起きてた」

そう言って気まずそうな顔をしている。
「これ」
差し出した包みを見れば、飴と果物の入った籠
とてもきれいで、食べていいのか迷っていたら
「これ食えるか?」
と葡萄に似たものを剥いてくれた。
口に運ばれる。

子供みたいで恥ずかしい。

「ミヤ、さん?その、体は大丈夫デスカ」

「なんでそんなに緊張してるみたいに
あの、途中からよく覚えてないんだけど、まあなんとか、ダイジョウブです」

「そうか、昨日は、途中から竜に戻ってしまって。どうなったか知りたいか?」

新しい葡萄をむいて口に入れられたので,とりあえず頷く。

「竜に戻って、尻尾が生えて、ミヤの体に巻き付けてぎゅうぎゅうして、あっちこっち持ち上げたり、あとは媚薬みたいなものも出てしまって感度上がるしお前もアンアン喘いで好き好き言うし離してくれないし、調子に乗って何回も出して、本当にすみませ……」

「やめてーーーーー!

布団を投げつけて押さえつけた。
「むごむご、でもあれはお前も悪いと思う!俺はすぐぬくつもりだったし、一回でやめるつもりだったのに泣くし名前なんか呼ぶから、むごっ」

「やめてって言ってるでしょう!
嘘つき!ちょっとだけって言ったのに」

「神だって初心者なんだ。あんなタイミングで名前を呼ぶのが悪い」

「名前を呼んだらダメなの?ずっと呼べないの?」

「わかりやすく言うと、他人に知られると支配される。それくらい大切なものだ。
お前も全部は呼ぶなよ。」

「一部ならいいの?」

「まあ、多分」

「しい、椎、」

「あんまりやっぱマズイかも」

「椎さま、でどうでしょう」

「やめて、滾る」

ミヤが布団にくるまって睨んだので、黒竜は屏風の後ろに隠れる。

「あのな、そのうちお前もわかるようになると思うけど。俺の嫁が俺の匂いさせて、俺のことが好きって顔で触れるところにいるのに。襲わずに耐えてる俺って奇跡だぜ?神かよ。そうだな神だったわ!
だからせめて自制心を褒めろ」

「だって、そんな、急に。最初はぶっきらぼうで、全然。仕方ないからみたいな感じだったじゃない」

「いや?わりとすぐ抱くつもりだったぞ」

「そんな感じしなかったし、体が、目当てみたいなそんな。神様なのに」

「はい、ごちそうさまでした。率直に言って最高でした」

頭を畳につけて深い礼をする。

「やめてください!神様なのに」

「ミヤさーん。おこらないで。な?末長く仲良くしよう」
布団ごと抱き締めてゆらゆらされる。
悔しいけど、可愛く見える。

「その、ミヤさんって言うのやめてください。」

「嫌だった?」

しゅんとする。

「私があまりあなたの名を呼べないのなら、いっぱい、
ミヤって呼んでくれないと嫌」

そのあと、また調子にのって始めようとした黒竜は平手打ちされました。






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