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アランと従兄弟たち

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「明らかに違うよな」

 視線の先にはアランとミランダがいる。
 リッキー家での茶会にそれぞれの妹を送ったあと、そのまま残るように言われた。

 ミランダと親族の令嬢たちの親睦を深めるためとのことだったが
 アランがミランダから離れようとしないので、母親たちから頼まれたのだ。

「アランの気持ちもわかるけど、あの子がいたら私たちがミランダとお話しできないし慣れてもらえないじゃない。あの可愛いお嬢さんを見ればうちの娘も少しは令嬢らしくなるかもしれないし」

 本音はそっちか。

「これはミランダには量が多すぎる」
「失礼な質問をしないでください」
「生き物を殺す話や暴力の話は控えてください」
「普通の令嬢は失神してしまうかもしれません」

 ミランダが到着する前に親族に細かく注意するのも、小姑のようだった。
「普通の令嬢は、って今まで女っけもなかった奴が良く言う……」

アランの変わりように二人で顔を見合わせた。
ミランダ嬢のことを夜会で見ていたのを知っている。

『なに?あの娘狙ってんのか?声かけてきてやろうか』

そう言ったら首をちぎれそうなほど振ってたっけ。

『そんなんじゃなくて、気になるだけだから。近づきたいなんて思ってない。俺なんかが』

そんな風に言っていた。
アランも令嬢に言い寄られたりしているのに、なんで自信がないのかわからない。

『あの娘、シューゼル家か』

『それは、話が合わないかもな……』

学者一門の家系だ。
学生時代に誰もが覚えのある教師の名前。

『いつも、静かに壁のそばにいるんだ。それを見ると安心する』

その顔はもう、どうみても惚れているだろうと思ったけど言わなかった。

その後に、ミランダ嬢の釣書が二人のもとへ送られた。

「これ、絶対アランに!」

「相手のお嬢さんの姿くらい見なさいな、とってもいい話でしょう」
「これはアランに!
あいつ、『近衛になったら妃殿下の護衛になるかもしれない、そうしたら姉である彼女にも出会う機会が増えるかもしれない』って訓練してるから!」

「そんな回りくどいことを?」

「そんな奴なんだよ。俺が見合いに行くだけで発狂するに決まってる」

そうした譲り合いの結果、自然な出会いを演出するお茶会が開かれたのだった。

ミランダ嬢がアランに
「政略結婚ですのでお構い無く!」
と言い放ったときにはダメかと思ったけど

「良い雰囲気になってきたね」






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