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宰相の執務室にて

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「脳の容量は限られてます、か。
つくづく面白いお嬢さんだな」

仕事の手を止めて宰相がフッと笑った。
補佐である長男や部下の文官が冷徹宰相の笑顔に手を止める。

お茶にしようということになった。

「ボルクは最近その令嬢の話ばかりですが、尊敬だけでしょうか。まさか恋愛感情では」

「さあ。自覚はないかもしれないな。しかし、最近はロクに家族と話もしなかったんだから良い傾向じゃないか」

「父上、まさか。平民ですよ?」

宰相は紅茶を飲んだ。

「お互いを高め合えるなら貴重だと思うが。まあ、一応反対はするべきだと思っている。親すら説得できないようなものなら成らぬだろうからな」

長男もまだ婚約者を持たない。

「少なくともお前は反対する立場ではないと思うが?」

その時、王太子の侍従から先触れがあった。

何か相談があるらしいとのこと。

程なく、王太子が訪れる。

宰相以外は別室に行かせた。

「急にすまない、王太子妃の教育のことで、前例のないことがあったもので」

「何か問題でも?」

「いや、エレノアは優秀で努力家で申し分ない。規定の内容は全て終わった。どの教師も誉めている。」

「それは以前より聞いております」

さすが公爵家の令嬢である。王太子との関係も順調に育まれているはず。

「エレノアが、貧民層の教育について改善したい。現状を知りたいと言っている」

「ほう、立派な心がけですな」

「しかし、視察を許すわけにはいかない。」

「治安の面で賛成しかねますな。将来の王妃が教育に関心があるのは非常に素晴らしいと思います。国母ともいうように民の母のように気を配ってくださったら自然と敬愛するものです」

王太子はパッと顔を輝かせた。

「宰相がそう言ってくれると心強い。エレノアにも伝えておく。」

「エレノア嬢は学園で平民の才女と親交があるそうですね」

「平民といっても礼儀正しいしエレノアは好意を持っているそうだ。身元もしっかりしていて経歴も……苦労はしているだろうが、卑屈ではない清廉な人物だと聞いている」

「殿下、私も排除しようとは考えていません。もしかしたらアイリス嬢がエレノア様に良い影響を与えているのではないでしょうか。」

「いい影響」

「うちの愚息もアイリス嬢の信奉者かもしれません。可愛げのない賢ぶった堅物でしたが、最近は家族と話すようになりました」

「そうか、宰相のところも。私も機会があれば会ってみたい」

王太子にまで好印象とは、すごいお嬢さんだ。
政治的に価値が出る前に息子となんとかなればいいのだが。



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