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女はみんな俺に惚れると思っていた

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歩くだけで視線を集める。
燃えるような赤い短髪と日焼けした肌。

視線を合わせたら店員もすれ違う女も目を見開いて頬を染める。
公演の時ほど魅力を全開にしていないのに、漏れてしまうのか仕方ない。
役者が視線を集めてしまうのは才能だろう。

シュラクは子役時代から人気者だった。悪戯小僧として愛され、十代後半からは恋愛ものの男役をこなしてきた。
顔の良さもウケた理由だが、体を鍛えて色気を出せるようになってきた。
相手役を惚れさせれば、客も惚れる。
銀色のようにも見える灰色の目は冷たそうにも見えるが、相手をゾクッとさせる効果もあるらしい。
関わった女たちがそう言うのだから、そうかもしれない。

シュラクは女に惚れることはないし
自分から追いかけることなど無いだろう。そのうち芸の邪魔にならない体を労ってくれる家庭的な女と所帯を持つのも悪くないと思っていた。女より、息子に芸を仕込むことが楽しみだった。
だから、俺がきつく叱っても子供を宥める優しさのある女がいい。
まあまだ先のことだと思っていた。

あの人に出会うまでは。

東の大陸で、有名な水郷で。
河から引いた池と水路で舟遊びのできる場所があった。
金持ちが船の上で宴をしている。

そこで、一瞬のことだった。

他人に目を奪われるのは初めてだった。
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