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番外編⑤エドガーの求婚

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「きゅうこん、ですか、えーっと王宮の園芸部門の管理は」

「違う。婚姻のための書類を用意するので一時間ほど抜ける。私用だ。」


部下が凍りついた。

「おい、オムライス事件からエドガー様が別人になってるのだが俺の目がおかしいのか」
「安心しろ、俺にも同じように見えている。脳が受け入れてないだけだ。」

「誰か、騎士のアルフレッド様に伝えてきてくれ。あの人ならなんとかしてくれるだろう」

「親友だから錯乱を止めてくれますか?
エドガー様が情に厚いとは意外」

「馬鹿、仲は悪いが一応身内だ。義理の兄弟だから最悪家門の恥になるようなことは止めて下さるはずだ」


アルフレッドはエドガーの部下から聞いた。
戻ったエドガーは通常通りに仕事をしているそうだ。それが余計に不気味だとか。

その女の子の退勤時間に迎えに行くらしい。
「早く追い付いて止めないと」

エドガーの部下から聞いたのは、エドガーが食堂の監査にいって女の子とオムライスを食べてから微笑んで、婚姻の準備をするといって仕事を抜けたらしい。

やべえ奴じゃん。

事件だ。

兄が性犯罪の容疑者だなんて、エリーゼが悲しむ。

文官の執務棟から食堂への最短ルートを考える。

騎士の体力なめんなよ
エドガーの移動速度なら追い付ける

食堂の前の通路で追い付いた。
「おい、エドガー!」

「どうした?そんな走って」

「お前がっ、オムライス食べて女の子を、結婚」

「……情報が早いな珍しく。まあまだ時間があるので座って話せ」

食堂の前は中庭になっていて、天気のいい日はテラスや、中庭のベンチで軽食を食べることもできる。

ベンチにならんで腰をかける。
「婚姻の書類を取ったのか」

「一応な」

「騙してサインさせようなんて思ってないよな」

「そんなの犯罪だろ。何言ってんだ」

良かった。エドガーはまともだった。

「まあ、違和感や直感を見逃さず隙があれば法で縛って逃げられないように書類を交わすつもりだが」

まともじゃなかった!

「それ、仕事!監査のやり方だろ!」

「人生の伴侶を精査するのに仕事より生ぬるいわけないだろう?」
再び、何言ってんだコイツ、みたいな顔をされた。

「いやいや待て。精査って。だいたいお付き合いしてるのか?まさか一目惚れとか?」

「一目惚れなんかで結婚できるか、お前じゃあるまいし」

「おれは!ちゃんと、お付き合い期間も婚約期間もありました!」

「お互いに合意の上なら早い方が良いに決まってるだろ」

「はあ?あれだけ散々エリーゼとの仲を邪魔しておいてよく言うな?」

「エリーゼは未成年の学生だったんだぞ。変態の手から守るのは当然だ。
彼女は働いているし分別もあるだろうから問題ない」

「まて、彼女の家名は?年齢は?ご両親の了承は?」

「一切知らん。」

「はああああああ?」

「大丈夫か?」

「お前こそ大丈夫か?」

なんだかよくわからないけどアルフレッドは、エドガーを刺激しないほうがいいような気がした。思い詰めた天才こわい。騎士の勘がそう告げる。

「エドガー、なぜその人が良かったんだ?」

しばらく考えてから

「なんだろうな。
ほら、俺は子供の頃から天才とか神童とか言われてきただろう。だから、賞賛や羨望の目でしか見られたことがなかった。」

「あ、うん、確かにそうだけど」

「初めて、彼女から心配されたり哀れみの目で見られて、なんか、良いなと思ったんだ。ゾクッとするというか」


「ド変態じゃねーか!」

「まあそれは冗談だが。見ず知らずの人間に優しい人なんだよ」

アルフレッドは、不本意ながら見とれた。優しい顔で笑ってるのを初めて見たから。
顔は似てるんだよな、エリーゼと。

「そんな優しい隙だらけの人だから交渉に弱そうだなって。」

書類をチラ見せするな。

「俺が逃すわけないからな」

アルフレッドは、名も知らぬ彼女とやらに同情した。

まさかエドガーも名前を知らずに求婚しようとしてるとは思わなかった。

自己紹介から始まった二人の横で、

あり得ない

なんでこんな奴に結婚反対されてたんだ、

こんなやつが義兄だなんて

と脳内をグルグルと愚痴が巡った。



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