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「リリアンヌ、俺は忠告したからな」

 俺……?
 目の色が深い赤になっている
 息継ぎがうまくできないリリアンヌの様子に、仕方なく唇を離してやったとでも言いたそうだ
「強い魔族には聖なる力は酒や媚薬と同じようなもんだ」

 リリアンヌの首を舐める
「さっきまでホロ酔いでエロい気分だったのが、直接治癒かけられてもう我慢できねえ」

「話し方が、さっきまでと全然違う!」

「好きな女のために、無理してた。リリアンヌはああいう王子様みたいなのが好きか」

「好き、というか」

「もともと魔族は行儀が悪い。今まで我慢してたのを誉めて欲しいくらいだ」

舌なめずりするのも絵になる。
   家の中は家具が揃っていてすぐにでも生活できそうだ。
中庭があり、石が敷かれていて花壇がある。

彼がリリアンヌを抱き上げて奥へ進むので、家をゆっくり見ることができない。
それでも、不思議とリリアンヌが憧れていたような家だった。
魔族は人の考えを読めるのかも知れない。
そう思って、そんなはずはないと思う。
彼はリリアンヌが嫌がっているかずっと気にかけてくれているから。キスの合間に見つめてくるときに、探っている様子がある。
もし気持ちを読めるなら、リリアンヌが彼に心を許してしまっているのがわかるだろう。

ベッドにリリアンヌをそっと下ろす手も優しい。
「もう、どうせ逃げられないんだ。俺を選べよ。」

リリアンヌは彼の首に腕を回した。

「聖女なんか辞めてしまえ。リリアンヌのことを貶す奴らのところへ戻らなくていい。俺の側にいろ。魔獣に近づくなんて、お前は勇気があるし優しい。あいつらにはもったいない。リリアンヌの素晴らしさがわからないなんて愚かな人間どもめ」

リリアンヌが言えなかった言葉を彼がずっと投げてくる。
言葉は乱暴なのに手が優しくて溶かされそうだ。
「私の願いを叶えてくれるの?」
「良い男に抱かれて純潔を捨てて、聖女を辞めたい」

「少し違うけれど、
本当は、誰かに頑張っているのを認められたかったのかもしれないわ。あなたが叶えてくれたから幸せよ」

「リリアンヌの望みは変わるから難しい」

「変わっても全部叶えてくれてるわ。聖女もやめたい。」

リリアンヌからキスをすると、不意をつかれて彼が赤くなった。

そのあと反撃を始めた彼が止まらなくなって、リリアンヌは翌朝までずっと深く愛された。

翌朝、体に治癒魔法をかけようとしたけれど

隣で眠っている彼にもかかると大変だと思い知ったので

そのまま、ゆっくり寝ることにした。

聖女が自堕落になるなんて、と一瞬思ったけれど

もう違うんだ、ただのリリアンヌになった。

そう思うと嬉しかった。

「ん、リリー?」

寝ぼけた声で呼ぶ。

かわいらしい。
男性にそんなことを思う日がくるなんて。

すりすりと頬擦りしてくる。
魔族だけど本当に優しい夫ができました。

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