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34. 約束
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サティは逃げ惑う人々を見ていた。
「父上、私は剣を向けたくはないのです」
「まさかお前がここまで思い詰めているとはな」
護衛はいるものの、近い距離で対面している。
「あいつはどうするつもりだ」
「あなたの心配することではない」
「なんでもスペアが必要だ」
その言葉でサティは剣を抜いた
「王子!」
護衛が止める。王の護衛ではない。サティのほうの。
「ずっと、私は兄上のスペアだった!
あなたにとってもそうだった」
「王になりたいのならやればいい」
「は、」
「やってみろと言っている。ただ、王にもスペアが必要だ。民心が離れるような失策があれば先の王に押し付ければ良かろう。」
それは、命乞いのようには見えなかった。
「誰でも良いと思っていた。隠居させてくれるのなら誰でも良い」
「そんなものなのですか、父上にとって王位とは、そんな、誰に任せてもいいような」
そんなもののために
「ああ。お前たちなら誰にでも任せられる。欲を言えば儂と違う政策を出せる王が良かった。民が困らぬならそれは善政だ。」
「そんな、父上は兄上でなくとも良かったのですか」
静かに頷いた。
「そんなもののために、私は、兄上を……」
王宮の端から火の手が上がった。
塔の下にも。
努力をしても叶わない人がいた。
周囲の期待をひらりとかわして、手を伸ばせば届くところに全てがあるのに逃げている。
私の欲しいものに何の関心もなく。
歩み寄ろうとしている人を拒絶する。
せめて、大切にしているのなら諦められたかもしれない。
私が欲しかったのは王位ではなく大義名分だ。
「簒奪者になる覚悟でしたが、禅譲していただけますか、父上」
「血など流れぬほうが良いに決まっておるではないか。
そなた、頭がいいのに時々遠回りをする。」
どんな顔をしているのかわからなかった。泣きたいような、笑うしかないような。
ただ一つ確実なのは、
もう戻れないということだ。
約束をしてしまった。
彼女が私の手をとるしかないように。
「殿下、塔は落ちました。
フレディは居ませんでした。魔力の痕跡も消したようです」
部下の報告を、ぼんやりとしたまま聞いた
「父上、私は剣を向けたくはないのです」
「まさかお前がここまで思い詰めているとはな」
護衛はいるものの、近い距離で対面している。
「あいつはどうするつもりだ」
「あなたの心配することではない」
「なんでもスペアが必要だ」
その言葉でサティは剣を抜いた
「王子!」
護衛が止める。王の護衛ではない。サティのほうの。
「ずっと、私は兄上のスペアだった!
あなたにとってもそうだった」
「王になりたいのならやればいい」
「は、」
「やってみろと言っている。ただ、王にもスペアが必要だ。民心が離れるような失策があれば先の王に押し付ければ良かろう。」
それは、命乞いのようには見えなかった。
「誰でも良いと思っていた。隠居させてくれるのなら誰でも良い」
「そんなものなのですか、父上にとって王位とは、そんな、誰に任せてもいいような」
そんなもののために
「ああ。お前たちなら誰にでも任せられる。欲を言えば儂と違う政策を出せる王が良かった。民が困らぬならそれは善政だ。」
「そんな、父上は兄上でなくとも良かったのですか」
静かに頷いた。
「そんなもののために、私は、兄上を……」
王宮の端から火の手が上がった。
塔の下にも。
努力をしても叶わない人がいた。
周囲の期待をひらりとかわして、手を伸ばせば届くところに全てがあるのに逃げている。
私の欲しいものに何の関心もなく。
歩み寄ろうとしている人を拒絶する。
せめて、大切にしているのなら諦められたかもしれない。
私が欲しかったのは王位ではなく大義名分だ。
「簒奪者になる覚悟でしたが、禅譲していただけますか、父上」
「血など流れぬほうが良いに決まっておるではないか。
そなた、頭がいいのに時々遠回りをする。」
どんな顔をしているのかわからなかった。泣きたいような、笑うしかないような。
ただ一つ確実なのは、
もう戻れないということだ。
約束をしてしまった。
彼女が私の手をとるしかないように。
「殿下、塔は落ちました。
フレディは居ませんでした。魔力の痕跡も消したようです」
部下の報告を、ぼんやりとしたまま聞いた
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