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しおりを挟む闘技場でのいざこざから、わたしは「護身術位は身に着けておこう」と考えた。
《悪役令嬢》が怯むなんて!あってはならないもの!
何者も恐れず、いつも超然と皆を見下ろしている…
それこそが、《悪役令嬢》のあるべき姿だ!
それで、ブランドンに頼んでみたのだが、わたしには剣の才も、武術の才も無かった。
前世で体力作りはしていたけど、スポーツは基本、苦手なのよね…
「無理、止めとけ!怪我するだけだぜ」
ブランドンは早々に匙を投げた。
ブランドンは基本、面倒くさい事が嫌いで、人に頼むよりも、自分で動くタイプだ。
それに、彼は《騎士道精神》を持っているので、女性を鍛えるよりも、自分が守りたいのだ。
「何かあれば、俺を呼べって!クラスメイトなんだし、いつでも助けてやるぜ!」
ブランドンが得意気に言う。
良い人なんだけど…
そう、都合良く、ブランドンが居てくれるとは限らない。
寧ろ、わたしが追っていなければ、近くには居ないのだ。
ブランドンは主人公気質なのよね…
わたしは笑みを作り、「ありがとう…」と返した。
「ドレイパー、護身術なら、魔法を使ったら?
魔力は強いんだし、君に足りないのはやる気だけだろう?」
パトリックの助言に、ブランドンは「ちぇっ」と舌打ちしたが、わたしは目を輝かせた。
「そうね!魔法があったわ!それに、見事な分析よ、パトリック!
わたしに足りないのは、努力だけよね!努力次第では大魔女にもなれるわ!
言ってくれてありがとう、流石我がクラスの賢者様!」
「ドレイパー!僕に変な仇名を付けないでよ!!」
賢者様が顔を真っ赤にして吠えた。
◇
わたしは防御魔法を覚える事にして、一年生の教科書から見直す事にした。
一年生の授業では、護身術用の魔法を教えている。
ただ、アラベラは身に着けていなかった。
『防御魔法など!公爵令嬢に必要ではなくてよ!』
『わたくしは王子妃になるんですもの、護衛を付ければよろしいの』
『何故、自ら動かなくてはいけませんの?』
…と、こんな調子だ。
尤も、アラベラが傲慢というよりも、この世界の貴族の一般的な考え方だ。
金で護衛を雇い、護らせる。
高位貴族程、高い魔力を持つと言われているが、その力は一体何に使っているのか??
「きっと、金儲けにでも使っているのね」
放課後、わたしは学園の裏庭に出て、練習場に出来そうな場所を探そうとした。
だが、冬の最中である。
校舎は暖かいが、庭は恐ろしく寒く、うっすらと雪まで積もっていた。
「うう…寒いわ…毎年、こんなに寒かったかしら?」
特別寒い気がする。
もしかして、白竜が意地悪をしているのかしら?
「それなら、春を待たず、さっさと眠らせてしまえば…って、駄目よ!
そんな事したら、わたしが死ぬじゃないの!せめて、春まで生きさせてよね!」
寒い所為で思考がおかしくなってきた。
震えながら歩くも、空気の冷たさと吹き抜ける冷風に、とうとう音を上げた。
「もう、無理!!こんなに寒くちゃ、練習なんて出来ないわ!
校舎を暖かくするなら、ついでに庭も暖かくして欲しいわよね!」
喚いた直後、わたしはそれに気付いた。
「そうだわ!暖かくなる魔法を使えばいいのよ!
魔法の世界って便利ね!!」
わたしはその場にしゃがみ込み、寒さの所為で震えが止まらない手で、
何とか魔法書を捲った。
「防寒魔法、防寒魔法…ああ、あったわ!」
防寒魔法は自分で掛ける方法と、魔道具を使う方法があると書かれていた。
「魔道具…」
そういえば…
わたしも持っていた。
金色のブレスレット型で、今は寮の宝石箱で眠っている…
「すっかり、忘れてたわ…」
前世を思い出してから、宝飾品を身に着ける事が無くなり、
宝石箱を開ける事もなくなっていた。
悪趣味な物ばかりだし、そもそも、学園生の分際で、贅沢よ!
それに、わたしは美人だから、飾り立てる必要なんて無いわ!…と。
「ああ!迂闊だったわ!そんな便利な物を持ちながら、使わないなんて!
わたしの馬鹿馬鹿馬鹿!」
だが、これから寮に帰り探すとなると、面倒なので、
取り敢えずは、魔法を使ってみる事にした。
目を閉じ、全身の力を抜き、集中…
イメージするのは、暖かい布団…
「さぁ、お布団さん、わたしを包み込むのよ…」
瞬間、周囲の空気が揺れ、むわっと暖かくなった。
「寒くない!!寧ろ、暑い位だわ!ああ、雪国がサウナになったみたい!」
その感動に、わたしは両手を天高く上げたのだった。
「魔法、最高!!」
でも、サウナは困るわね…
温度調節はどうするのかしら?
寒さ対策も出来た所で、わたしは改めて、裏庭を見回した。
「人が来ない様な所がいいのよね…」
わたしが魔法の練習をしていれば、色々言われそうだし…
それに、努力は見せない方が恰好良いもの!
「必殺技は、いざって時のものだものね!ふふふ」
程なくして、周囲を木立が囲んでいる場所に出た。
木立や茂みで周囲から見えないし、適度に動ける空間がある。
「いいじゃない、ここに決めたわ!
今日から、ここは、《アラベラの庭》よ!」
勝手に命名し、わたしは魔法書を開いた。
護身術の魔法は、《シールド》が基本だ。
場合によりけりで、小さな物を避ける時には、手の平程度のシールド。
災害を避ける時等には、体を包み込むシールドを張る___
使う者の魔力が強ければ、強大で強いシールドを出す事が出来る。
「魔力に関しては問題無いから、後は、身に着ける事ね…」
自然と魔法が使えれば、咄嗟の事態も避けられるだろう。
「それにしても、体を包み込むシールドもあるのね…」
もし、白竜に食べられるとなった時、このシールドを張れば、
無事に事なきを得られるのではないか?
悪い考えが浮かぶも、わたしは頭を振った。
「駄目ね、必要なのは、アラベラの魔力だもの…」
わたしの内の魔力は、竜を眠らせる事が出来るのだ。
「命と引き換えにね…」
打つ手無しだ。
わたしは諦め、《シールド》の練習をした。
手に魔力を集め、イメージし、それを放出する___
手の平が、紫色の光に包まれ、それは光の盾を形成した。
わたしのイメージが具現化したのだ。
「あら、カッコイイんじゃない?」
災を避けられれば良いので、特に形は必要ではないが、
それっぽい方が、こちらもテンションが上がるというものだ。
「色々な形に出来そうね…」
いつしか、悪役令嬢に相応しい、《シールド》の形を考えるのに、時間を費やしていた。
そうして、編み出したのが…
「薔薇シールド!」
薔薇の花のシールドだ。
「悪役令嬢なら、薔薇よね!」
しかも、わたしの魔法は紫色なので、高貴な薔薇に見える。
「出でよ!薔薇の盾!!」
「秘儀、薔薇の舞!!」
「薔薇の滝のぼり!!」
遊んで…試していた所、何かが飛んで来て、出していた巨大な薔薇シールドにぶつかった。
「きゃ!?何!?」
黒い毛玉が芝生に落ち、コロンと転がった。
黒い毛玉…黒猫だ。
「やだ!何してるのよ!痛くなかった?」
わたしは慌ててシールドの薔薇を散らし、芝生に膝を着いた。
黒猫を膝の上に抱き上げ、撫でてやる。
「ごめんなさい、怪我しなかった?シールドに飛び込んで来るなんて…
まぁ、猫だもの、《シールド》なんて、知らないわよね。
次からは気を付けてね、これは危険な薔薇よ!」
わたしは指先に、小さな薔薇シールドを出して見せた。
黒猫は顔を上げ、「ニャー」と鳴く。
「元気そう、猫の身体能力のお陰かしら」
黒猫は催促する様に、「ニャー」と鳴く。
「ああ、分かったわ、お腹が空いてるのね?待っていて、お菓子があるわ!」
わたしはポケットから、ハンカチの包みを取り出し、開いた。
ビスケットが三枚。
こんな事もあろうかと、忍ばせておいたのよ!おーほほほ!
わたしはそれを小さく割り、黒猫にあげた。
黒猫は貪り食べている。
「気に入ったのね、全部食べていいわよ、
わたしの小さなお友達は、あなただけだもの!」
わたしの猫になってくれたら、尚良いけど。
やはり、捨て猫には見えない。
いつも綺麗にしているし、野性的でもない。
「ここは、わたしの秘密基地なの。
ここに来て、わたしと遊んでくれたら、お菓子をあげるわよ?」
お菓子で釣ってみた。
猫に言葉は通じないとは思うが…
黒猫は前足を舐めると、ヒョイと膝から降り、顔だけでこちらを振り向くと、
尻尾を立てて歩いて行った。
『気が向いたら来てやるよ』
そんな風に見えた。
「ああ、可愛い~~~!!
そういえば、ゲームの中に、猫キャラはいなかったかしら?」
マスコット的に出て来そうなものだが、もやもやとし、記憶を辿る事は出来なかった。
「前世の記憶が、薄れ始めてる…?」
前世の記憶が薄れ始めている…
それは、当然の事だろう。
そもそも、今を生きる者に、前世の記憶など必要ではない。
前世の記憶を持って生まれた子も、数年で失うと聞く。
それが普通なのだ___
「それは、そうなんだけど…
わたしには、《悪役令嬢》としての使命があるのよ!」
わたしが道を誤れば、わたしも世界も、最悪なエンドを迎えるかもしれない___
全身から血の気が引く思いがした。
「いいえ!まだ、大丈夫よ!」
わたしは頭を振り、寮へと走った。
引き出しの中を漁り、それを見つけた。
「あった!」
前世を思い出した時、必要な情報を書き出しておいたのだ。
わたしは素早く用紙に目を通した。
大丈夫、必要な事は書き出しているし、まだ覚えている…
細かい事は、この際、無視してもいいだろう。
「絶対に、トゥルーエンドに導いてみせるわ!」
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