8 / 78
失敗を恐れるな
しおりを挟む
食あたりからしばらくすると、少しずつ回復の兆しが見えた。どうやら俺は軽傷で済んだようだ。だが三人の容体は悪化し続けている。
声をかけたり、薬を飲ませる。口移しにも慣れてしまった。ロマンチックもくそも無い。
汗をかいたままだと体が冷えるので、服を脱がして体を拭く。皆美人で本来なら嬉しいはずだが、そんな気分に成れないし、体型を覚える暇さえない。
着ていた服は洗濯し、替えの服に着替えさせる。体を冷やさないように時折摩る。暖炉の火は絶やさない。
吐しゃ物で喉を詰まらせないように注意する。
気絶して床に倒れている時があった。体中の関節がガタガタで動くと針を突き刺したかのような痛みが走る。それでも三人が生きていると分かると、力が出た。
時間の感覚は気絶と覚醒、意識混濁でおぼろげだが、三日くらい経つとようやく全員の容体が回復に向かった。熱が引き、呼吸が大人しくなった。吐しゃ物も無くなった。
「れい?」
意識がもうろうとする中、リリーの声が聞こえる。
リリーが目を覚ました!
「大丈夫か!」
「まだ……ねむい」
「寝るな! その前に飯を食え!」
携帯食料を湯で溶かし込んで食べさせる。
「まずい……」
「我慢しろ」
リリーはなんとか、吐き出さずに食べることができた。そして食べ終わるとすぐに眠った。
「れいさん?」
リリーが寝て少しするとチュリップが目を覚ます!
「良かった! 飯を食え!」
「はい……」
同じく茹でた携帯食料を食べさせる。
「もうしわけありません……ちょうりのしかたがまずかったのかも……」
「気にするな。とにかく寝ろ」
「もうしわけ……ありません」
食べ終わるとやはり気絶するように眠った。
「れい?」
額の汗を拭いている最中、ついにローズも目を覚ました!
「飯を食え」
「たべ……させて」
「良いぞ! どんどん食べろ!」
少しずつ、ゆっくりと食べさせる。
「れい……だいすき……」
おぼろげな目で微笑む。
「俺も好きだ! さあ、全部食った! ゆっくり寝ろ!」
「うん……」
ローズは微笑みながら眠りについた。
山場は超えた。そう思うと力が抜けた。一気に意識が遠くなる。
「全く、冒険者を舐めていた」
薬はすでに底をついていた。食料はまだあるが、もはや風前の灯だ。
それでも諦めない。必ず手はある。
「十二階だ……あそこには生き物がいる」
皆には言っていなかったが、生き物の気配が確かにした。最も、それが食えるかどうかは別問題だ。
だが生き物であることに変わりはない。そして生き物が居るのなら、必ず食べられるものが存在する。
「食えるかどうか? 違う、食ってやる! 生き延びるために!」
一度の失敗で挫けている場合ではない。今回は失敗した。それに怯え、何も食べないという選択肢はない。
生きるためには、毒も食らう。その危険を冒す必要がある。
「絶対に、皆と一緒に脱出する!」
再び眠くなる。必ず起きてやると拳を握りしめた。
声をかけたり、薬を飲ませる。口移しにも慣れてしまった。ロマンチックもくそも無い。
汗をかいたままだと体が冷えるので、服を脱がして体を拭く。皆美人で本来なら嬉しいはずだが、そんな気分に成れないし、体型を覚える暇さえない。
着ていた服は洗濯し、替えの服に着替えさせる。体を冷やさないように時折摩る。暖炉の火は絶やさない。
吐しゃ物で喉を詰まらせないように注意する。
気絶して床に倒れている時があった。体中の関節がガタガタで動くと針を突き刺したかのような痛みが走る。それでも三人が生きていると分かると、力が出た。
時間の感覚は気絶と覚醒、意識混濁でおぼろげだが、三日くらい経つとようやく全員の容体が回復に向かった。熱が引き、呼吸が大人しくなった。吐しゃ物も無くなった。
「れい?」
意識がもうろうとする中、リリーの声が聞こえる。
リリーが目を覚ました!
「大丈夫か!」
「まだ……ねむい」
「寝るな! その前に飯を食え!」
携帯食料を湯で溶かし込んで食べさせる。
「まずい……」
「我慢しろ」
リリーはなんとか、吐き出さずに食べることができた。そして食べ終わるとすぐに眠った。
「れいさん?」
リリーが寝て少しするとチュリップが目を覚ます!
「良かった! 飯を食え!」
「はい……」
同じく茹でた携帯食料を食べさせる。
「もうしわけありません……ちょうりのしかたがまずかったのかも……」
「気にするな。とにかく寝ろ」
「もうしわけ……ありません」
食べ終わるとやはり気絶するように眠った。
「れい?」
額の汗を拭いている最中、ついにローズも目を覚ました!
「飯を食え」
「たべ……させて」
「良いぞ! どんどん食べろ!」
少しずつ、ゆっくりと食べさせる。
「れい……だいすき……」
おぼろげな目で微笑む。
「俺も好きだ! さあ、全部食った! ゆっくり寝ろ!」
「うん……」
ローズは微笑みながら眠りについた。
山場は超えた。そう思うと力が抜けた。一気に意識が遠くなる。
「全く、冒険者を舐めていた」
薬はすでに底をついていた。食料はまだあるが、もはや風前の灯だ。
それでも諦めない。必ず手はある。
「十二階だ……あそこには生き物がいる」
皆には言っていなかったが、生き物の気配が確かにした。最も、それが食えるかどうかは別問題だ。
だが生き物であることに変わりはない。そして生き物が居るのなら、必ず食べられるものが存在する。
「食えるかどうか? 違う、食ってやる! 生き延びるために!」
一度の失敗で挫けている場合ではない。今回は失敗した。それに怯え、何も食べないという選択肢はない。
生きるためには、毒も食らう。その危険を冒す必要がある。
「絶対に、皆と一緒に脱出する!」
再び眠くなる。必ず起きてやると拳を握りしめた。
0
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします
ねこねこ大好き
ファンタジー
新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。
彼は修学旅行の時、突然クラスメイト全員と異世界へ召喚される。
転移した先で王に開口一番、魔軍と戦い人類を救ってくれとお願いされる。
召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。
言葉通り、クラスメイトは、獲得経験値×10万や魔力無限、レベル100から、無限製造スキルなど
チートが山盛りだった。
対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」
それ以外はステータス補正も無い最弱状態。
クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。
酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。
「ことばわかる?」
言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。
「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」
そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。
それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。
これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。
------------------------------
第12回ファンタジー小説大賞に応募しております!
よろしければ投票ボタンを押していただけると嬉しいです!
→結果は8位! 最終選考まで進めました!
皆さま応援ありがとうございます!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
**救国編完結!**
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる